57 汚冥界:賓客の間9 闘牛の最期
⬛システィーナの視点
闇とわずかな赤い光の中で……!
ズキンズキン痛む右上腕を抑えながら……!
私はミノタウロスと対峙する!
ヴモオオオオオッ!!
十メートルほど先で、正に闘牛のごとく鼻息を荒くする魔物!
私だって! 負けるものか!
「ぬあああああっ!!」
気合いとともに左手で右腰に括りつけていたムチを持つ!
来るなら来なさいっ! とその時!
ダンッ!!
後ろから炸裂音!! 直後!
ズシャッ!!
私の横にクラウディーアさんが!
「システィーナ殿! 無事ですか!?」
「腕以外は! そちらは!?」
「聖女、少女とも無事!!」
目だけで隊長が抱きかかえるそれを見る!
「血が!」
「癒えてます!!」
アルシャーネさんは額から血! でも癒えてる! 気絶だけ!
胸に繭! 頭から落ちても離さなかった!
ヴモアアアッ!!
「フオッ!!」 隊長は身構えるも!「おおっ!!」
隊長はその瞬間に闘牛の状態を理解!
「見事! 正に足止め!!」
そう! 足止め! 文字通りの足止め!
ミノタウロスは片膝を付き矢を抜いている!
足の矢を!
両足で十数本射抜いた! 歩けなくするため! 文字通りの足止め!
特に膝を射抜いて! もう歩けない!
ハズ!
「貴女のケガを治します! 痛みは引きませんが!」
「お願いします!」
隊長は手早く私に聖魔法を……とその時!
キシャアアアアッ!!
後ろから不快な音が! ああっ! ワシャワシャワシャッ!
「ム、ムカデが!」
何てこと!? ムカデたちが何匹も! 簡単に上がってきた!
ワシャワシャッと気持ち悪い!
ああっ巨大な口がっ! キモッ、口の中全面に歯が!
ウエェッ、吐き出す息がっ生臭い!
「くそっ! 行きましょう! 私にしがみついて!」
「えっ!?」
「跳びながら行きます!」
「はっ、はい!」
私は左手でクラウディーアさんにしがみついた! いっ、痛いっ! 右腕が!
「もっとしっかりっ! 体全体で!」
「はっ、はい!」
おぶさる形で足も無理やり巻き付ける!
そうこうする間に、ムカデがワシャワシャ私たちに迫って!
ひゃあっ! 結構早いっ! 人の早足くらい!? あと数メートル! 早く早く、ひゃああっ!
ダンッ!
痛あっ! 衝撃と共に! 私たちは真上に跳び上がった! 痛い! 右腕に衝撃が!
「フオォッ! 重い!」
「ひゃああっ!」
真上に三メートルくらい!
クラウディーアさんは続けざまに!
ダンッ!
前方に跳ぶ! 痛いっ!
ああっ! でも五メートルくらいしかっ! ミノタウロスの前に迫る!
ヴモオオオッ!?
ミノタウロスが突然のことに身構える!
「フオォッ! 飛び越せないっ!?」
「ひゃあっ!」
そうか! ミノタウロスの上を! でも重すぎて!
「クオオッ!」
ダンッ!
再び衝撃! 痛い! 右腕が!
あっミノタウロスが左側にいる! クラウディーアさんは右に跳んで!
着地前にさらに! ダンッ! 痛あっ! 超低空! 前方に跳ぶ!
ミノタウロスを迂回した!
「ハァッ! ハァッ! どうだっ!」
「ああっ! ミッ、ミノタウロスが!」
上ってきたムカデが! ミノタウロスに気づいて!
ワシャワシャと群がる!
ヴモオオオオオッ!!
筋肉の塊のようなミノタウロスはムカデを殴りまくって!
膝をつきながらも巨大な腕と爪でムカデを攻撃して!
ドカンッドカンッとムカデの節が吹き飛ぶ!
ああっ、でも多勢に無勢! 四方八方からムカデに囲まれて!
ダンッ! 痛い! でも私は跳びながら最後まで見る!
ヴモオオオオオオオオッ!!
ああっ! ついに腕や足を食いつかれた!
太い腕が! 強靭な腹が!
おぞましいムカデに喰らいつかれ!
ヴモオオオオオオオオオオオッ!!
ああっ! 断末魔……! 断末魔の叫び!
喰われる者の! 殺される者の! 恐怖の悲鳴!
苦しめばいい! 怖がればいい!
罪のない家族を惨殺して! サマラ苦しめて! 汚冥界に堕ちた修道僧たちも襲って!
その罰を受けるがいい!
ダンッ! 痛っ! クラウディーアさんは跳ぶ!
「ゼェッ! ゼェッ! 早くっ! 逃げねば!」
「ク、クラウディーアさん! あ、汗がっ!」
「ゼェッ! ゼェッ! マッ、マズイッ! 霊力が!」
ひゃあっ! クラウディーアさんが!
霊力!? 尽きかけてるっ!? 魔法が使えなくなる!? と!
ワシャワシャワシャッ!
ミノタウロスにありつけなかったムカデの大群が!
私たちを追ってやって来た!
ひゃああっ!
ワシャワシャワシャッ!
ひゃあああっ!




