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53 汚冥界:賓客の間5

 

 ■システィーナの視点


 赤黒い光に満たされた不吉なホールの中!


 ズシンッズシンッズシンッズシンッ!

 ドスッドスッドスッドスッ!


 重そうな複数の足音と地響きが!

 迫ってくる!


「ふおぉっ!?」 クラウディーアさんが私たちの前に立ち! 盾と戦棍を構えて!「何だっ!?」


 こっ怖い! 暗くて見えないっ!

 ウィスプが頭上で照らしているから!

 明るい場所から暗い周囲が見えない!

 怖いっ!


「ウィスプッ!」


 私は急いで音の方向にウィスプを飛ばす!

 音の方向から出入り口のあった方向!

 白い軌跡を描きながら、ウィスプが飛ぶ!

 左右に揺れながら! 範囲を広げながら飛ぶ!

 次の瞬間!


 ドスッドスッドスッドスッ!


「「あっ!」」


 ウィスプの光が捉えたそれ!


「ああっ!」

「はああっ!」

「ふおあっ!」


 私たちは叫び声に似た安堵のため息をついた!

 そう、安堵の!

 ウィスプの光に入ったそれは、ノームだったんだもの!


「あああもうっ! 驚かせないで!」

「ふおぉっ! 焦った!」


 ノームがドスッドスッと走ってきて!

 ああ、肩にはサラマンダーもいる!

 横倒しになった柱を登ってこっち側に来たんだ!


「じゃあもう一つの足音もノー……ム」 と言いかけて私は違和感を覚えた。「っれ!?」

「ふぅっ!」


 クラウディーアさんがため息を吐きながら盾を下した。

 その時っ! 私は違和感の正体に気がついた!


「待っ……クラッ!」

「え?」


 クラウディーアさんが私の方に振り返る。

 私は気がついた!

 違和感に!

 それはコックリと旅をするようになって少し磨かれた直感!


「違っ!!」


 違うっ!!

 違うっ!!

 足音が! 足音が足音がっ!


 もう一つは!

 ズシンッズシンッて!

 ノームの足音より重い!


 次の瞬間、ウィスプの光の中に巨大な人型が!

 ノームの後ろに! 飛び込んできて!

 ノームの二倍はある! 超巨大な! 人型!

 瞬間しか見えなかった!

 だって、その巨大な人型はノームを!

 蹴り飛ばして!

 前方に!


「「なっ!?」」


 ノームが! 私たちに向かって!

 グンッと眼前に迫って!

 私たちの方にっ!


「「きゃあっ!!」」


 クラウディーアさんが!

 一瞬避けようとして硬直する!

 彼女は気づいたの!

 自分が避けたら!

 私たちに当たるって!


 その躊躇が!

 最悪の展開になってしまった!


「波動……っ!!」


 クラウディーアさんが右から左に!

 ノームの体を逸らそうと!

 でも!


 ドゴッ!


「ぐあっ!!」

「クラッ!」


 ノームの石の体が!

 クラウディーアさんに激突して!


「がはっ!」


 クラウディーアさんはノームの体ごと後ろに!

 吹き飛ばされて!

 真後ろには!

 アルシャーネさんが!

 クラウディーアさんはアルシャーネさん寄りに立っていて!


「きっ!!」


 きゃあっと叫ぶまもなく!

 アルシャーネさんが巻き込まれて!


「アルシャ……ッ!」


 二人とノームは!

 後ろに吹き飛ばされて!


「きゃああぁっ!」

「アルシャーネさんっっ!!」


 きゃあああっ!!

 アルシャーネさんが!

 亀裂の底に!

 落ちた!

 クラウディーアさんは亀裂の崖っぷちでノームと倒れていて!


「アルシャーネさん!!」


 私は慌てて崖っぷちまで走り亀裂の底を見る!

 赤黒い亀裂の底は階段状に段々になっていて!

 一番上の段でも、ここ五メートルくらい下!

 アルシャーネさんは!?

 いたっ! 中段あたりに倒れて!

 ああっアルシャーネさんの下には灰色のグールが! クッションになった!? でもアルシャーネさんはピクリとも動かない!


「アルシャーネさん!」私が叫ぶと!

「うぅ……」と小さく呻いた! よし! 生きてる!


 と、アルシャーネさんの近くに! グールが!!


      シャアアアアアアッ!


 グールが! 二体! アルシャーネさんに駆け寄って! 襲いかかる!


「させないっ!」


 私は即座に弓矢を射る! 立て続けに! 四本!!


 タンッタンッタンッタンッ!!


      ギャアアアアアアッ!


 二体とも顔面と胸に! 貫通!

 そのまま倒れる! よし!


 ああっ! でも階層の下、暗がりの中に!

 おびただしいほどの揺れ動く影が!


「多すぎるっ!」


 ああああっ! マズイマズイマズイッ!!

 アルシャーネさんを助け出す術は!? あああっ! 周りを見回すと!

 ノームの上にサラマンダーが!


「サッ! サラマンダーッ! アルシャーネさんを! 護って!」


 私の指示にサラマンダーは亀裂の中へ飛び込む!

 そしてアルシャーネさんの上に立つと、蠢く影に向かって炎を吐いた!


 ボボボゥッ!!


      ギャアアアッ!!


 断末魔とともに、周囲が赤い光に包まれる!

 ああっ! 明るくなって分かる!

 何て凄い数のグール……!

 もう、百体は軽くいるっ!

 前列のグールが燃え上がっているから、その後ろにいるグールたちは近づけないようだけれど!

 時間の問題だ!


 とその時!

 サラマンダーがもう一回周囲に炎を吐きつける!


      ギエエエエッ!!


 また複数のグールが燃え上がる!

 と、サラマンダーが! ああ!

 何てこと! サラマンダーが消滅した!!


「ああっ力を! 使い果たしたのね!?」


 サラマンダーは最後の力を振り絞って炎を吐き出してくれたんだ! あああっどうしよう!? どうしよう!?

 あああっ! 私は何かないか再び周囲を見る!

 その瞬間!


      ヴモモモモモオオオッッ!!


 ひゃあっ!?

 後方から、獣の咆哮が!

 それは興奮し、怒り狂う咆哮!

 腹の底にビリビリと響く、太く重い咆哮!

 それは、暴れ狂う……闘牛の咆哮!!


 私は振り返った!

 そこには、飛び回るウィスプを振り払うように、太く長い腕を縦横無尽に振り回す巨大な人型が!

 ウィスプの光に照らされた赤銅色の肌の人型が!

 三メートルは超える筋肉の塊のような人型が!

 でも人間じゃない!

 頭部が人間じゃない!


 湾曲した二本の鋭利な角!

 顔の両側から飛び出す巨大な目玉!

 荒々しく臭い息を吐き出す巨大な鼻!

 汚ならしいよだれをまき散らす口!


 闘牛の頭!!


「ミ……!」 私は息を飲んだ。「ミノタウロス……!」



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