表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新撰組パラノイア☆  作者: 杏里
序章
10/10

切腹してなんぼ

「……」


「以上です。覚えやすいでしょう?」


そう言って笑う沖田さん。


「ち、ちょっと待って下さい!!え?切腹?これ破ったら一発で切腹になるんですか!?」


「…ええ…でも千優さんの場合、一カ条だけですから…随分と楽ですよ?」


沖田さんは、何に驚いてるのか分からない、という感じに目を丸くするが、やっぱり納得できない。


「いやいやいや!!そういう問題じゃないです!何でいきなり切腹までいくんですか!?というか、士道なんてそんな曖昧な枠じゃ分かんないじゃないですか!」


「元々浪士だった者の集まりですから…『士道に背けば切腹』というのは妥当だと思いますけど…まぁ確かに、曖昧な枠ですよね」


そう言って沖田さんは苦笑する。


「…沖田さんはそれで平気なんですか!?」


「この条例は土方さんが、新撰組の敵を都合よく消すために作ったようなものですからね。大それた事をしなければ、まずこれには引っ掛からないと思いますよ」


一瞬、思考が止まる。


(敵を…都合よく消す…?


あの土方さんが…?

あんなに優しいフレンドリーな人だったのにっ!!!


人って、ディープだ…。


でも余程の事がない限り大丈夫、か…。良かった)


「土方さんは、少し軽い男に見えるほど明るくて、それでいて真っ直ぐな人です。それは本性ですよ。でもいざとなれば近藤さんの為に自らの手を汚せる。それもまた本性です」


私の気持ちに気づいたのだろうか、沖田さんが前を見据えたまま独り言のように言う。


「そう…ですか…」


少し先が不安になった私に沖田さんが続ける。


「大丈夫ですよ。新撰組を裏切らない限り、敵に回らない限り、彼に冷たくされることはないですから」


「はい…」


私は何とか納得して返事をした。


組織を動かすためには、善人でばかりはいられない。


それに新撰組は刀を用いる組織。それを束ねる為には、やはり武力公使が必要なのであろう。


ふと沖田さんが足を止める振り返る。


「あ、ここが炊事場です」


「……」


「では次に行きますか」

歩き出そうとする沖田さんの袖を掴む。


「あの、これが炊事場?」


「はい。ご飯作りは当番制なので場所を必ず覚えておいて下さいね」


「……」


(炊事場?え?炊事場って…嘘だよね)


そこには炊事場とはかけ離れた空間が広がっている。


まず感じるのは異臭だ。いままで嗅いだことのないほど、臭すぎる。床や壁は茶色く染まっているが…正体は腐った食べ物だ。


使ったと思われる食器は、水で軽く濯いだだけなのだろう、所々に食べ残しが残ったままだ。

しかも無造作に床や石段に転がっている。


釜やまな板、包丁等の炊事道具らしきものが見えるが、もはや本来の役目を果たせぬほど汚れていた。


「な、何なんですかココはっっ!!!」


「?だから炊事場ですけど?」


沖田さんの平静さに思わずのけ反る。


「…体調不良の隊士が、続出していませんか…?」


今度は沖田さんが目を見開く。


「よく分かりましたねぇ!そうなんですよ、最近お腹が痛いと寝込む者が多くて…」


「当たり前じゃあないですかっ!!何ですか?このごみ溜めは!何で炊事場に、汚い足袋とか鉢金が転がってるんですか!しかもハエ飛んでる!」


「なるほど…この不衛生さが原因でしたか…。土方さんに言っておきますね」


神妙に沖田さんは頷く。


(ダメだ…この人天然だ…!)


「とにかく、今すぐ掃除です!!」


「え!?でもまだ案内が途中…」


「そんな悠長なことを言ってる場合ですかっ!夕食に間に合いませんよ。早く皆さんを呼んできてくださいっ!!」


困惑する沖田さんの背中を無理矢理押し出した。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ