ゴッグ・シンドローム 第3話「リゼット・ハウゼン」
(ここはどこかの国のどこかの街道。)
(マティアス大佐とリゼット准将が、霧雨の中、街道を進む一頭立ての馬車に乗っている。)
マティアス(外の声:静かに)
「……本当に行くのか?」
リゼット(心の声・モノローグ:落ち着いた調子)
「心配してくれているのは分かる。
だが、迷ってると思われたくない……。」
リゼット(外の声)
「ええ。避けて通れませんから。
でも引く理由はない。」
リゼット(心の声)
「怖くないと言えば嘘になる……。
それでも、今は前に進むしかない。」
マティアス(外の声)
「無理はするなよ。」
リゼット(心の声)
「マティアスは優しい……
でも、弱い自分には負けたくない。」
マティアス(外の声)
「……行くぞ、リゼット。」
リゼット(外の声)
「大丈夫です。覚悟はできています。」
リゼット(心の声)
「迷いはない。
必要なのは、ただ一歩を踏み出すこと。」
「進むべき時は必ず来る。」
(SE:霧雨の音がわずかに強調される)
(二人は馬車を降りて歩き出す。)
---
《パート2:静かなる歩調》
(場面が大きく転換する。場所は晴天のどこかのコロニーの市街地。)
(コロニーの人工空の下、整備された遊歩道を歩く二人の軍人。リゼット准将とマティアス大佐。
足音が静かに響く。周囲には市民の姿もちらほら見えるが、二人は自然な会話のように話し始める)
マティアス(低い声で)
「……聞いたか?このコロニーに、例の軍艦が停泊してるって話。」
リゼット(目線を前に向けたまま)
「あら、また誰かの見間違いじゃなくて?この時期にそんなものが、こんな辺境に?」
マティアス(わずかに口元を歪めて)
「見間違いにしては、目撃証言が多すぎる。
それに、連邦の新型艦の話も、妙にタイミングが合ってる。」
リゼット(小さく息を吐いて)
「……なるほど。じゃあ、私たちは偶然このコロニーに滞在中で、
第8大隊の面々も偶然全員ここに集結してるのね。」
マティアス(肩をすくめて)
「偶然って、便利な言葉だな。ハルもミナも、他の連中も揃ってる。
まるで、何かが始まるのを待ってるみたいだ。」
リゼット(少しだけ笑みを浮かべて)
「でも、始まらないのよね? 少なくとも、今は。」
マティアス(目を細めて)
「だが、あの艦が本物なら……見過ごすには惜しい。」
(ふたりの足音が少しだけ速くなる)
リゼット
「上層部は何も言ってこないの?」
マティアス(少し間を置いて)
「確認中につき静観せよだとさ。」
リゼット(眉をひそめて)
「つまり、何かが起こったとしても、責任を取るつもりはないってことね。」
マティアス
「そういうことだ。
でも、もし本当にあれがここにあるなら――」
(ふたりの足が止まる。視線の先には…)
リゼット(静かに)
「……危ない橋ね。」
マティアス(同じく)
「だが、渡る価値はある。」
(ふたりはその先にあるコロニー公社の宇宙港を目指して再び歩き出す。何もなかったかのように、静かに。)
---
《パート3:森の静寂に潜む“老将の影”》
(画面:深い森の奥。湿った空気の中、木漏れ日が揺れる。
苔むした石畳の先に、小さな木造のロッジが建っている。
その広いウッドデッキには丸い木製のテーブルが置かれ、
その上には湯気の立つコーヒーと、厚い表紙の本が一冊。)
(ヴァルター・グライムズ中将は椅子に深く腰掛け、目を閉じている。
まるで眠っているようだが、その気配は鋭い。)
(テーブルの上には、湯気の立つコーヒーと、厚い表紙の本が一冊置かれている。
ヴァルター・グライムズ中将は椅子に深く腰掛け、目を閉じている。
まるで眠っているようだが、その気配は鋭い。)
(リゼット・ハウゼン准将が静かに歩み寄る。
外の声は冷静、心の声は…)
リゼット(心の声)
「コテージまであと30メートル……
気配は消さない。こちらも……出方を見せてもらう。」
(リゼットがテラスに足を踏み入れる。
ヴァルターは微動だにしない。
風が木々を揺らし、光が斑に差し込む。)
リゼット(外の声:丁寧で冷静)
「……第8大隊の件について、報告に参りました。」
リゼット(心の声:焦りと毒舌)
「返事なし……!?
またこの沈黙戦法ですか、この人は……!」
(沈黙。ヴァルターはまるで石像のように動かない。)
リゼット(外の声:少し強め)
「……中将閣下?」
リゼット(心の声)
「これで反応なかったらどうしろっていうのよ……!
いや、でもこの人、絶対全部わかっててやってる……!」
(ヴァルターがゆっくりと目を開ける。
その動きは静かだが、空気が変わる。)
ヴァルター(外の声:低く渋い)
「……おや。これはこれは、リゼット准将。
こんな朝早くに、どうなさいましたかな。」
リゼット(心の声:即ツッコミ)
「ほら出た、“朝”とか言い出すやつ……!
絶対わざとでしょこれ……!」
リゼット(外の声)
「“朝”ではありません。もうお昼です。」
リゼット(心の声)
「ここは訂正しないとダメ。
でもなんで毎回こうなるの……。」
(ヴァルターはコーヒーを一口すする。
その仕草は優雅だが、どこか冷たい。)
ヴァルター(外の声:淡々と)
「そうでしたかな。
歳を取ると、時間の流れが早くていかん。」
リゼット(心の声)
「来た……“とぼけ”モード。
絶対計算してるよね……?」
「でも怒ったら負け。冷静に……冷静に……。」
(リゼットが一歩前に出る。)
リゼット(外の声)
「第8大隊が壊滅しました。
敵の砲撃は、我々の位置を正確に把握していたとしか思えません。」
リゼット(心の声)
「ここは核心……!
ちゃんと伝えないと……!」
(ヴァルターは静かにコーヒーカップを置く。
その音が妙に重く響く。)
ヴァルター(外の声)
「……お気の毒に。
だが、戦場では“偶然”がつきものでしてな。」
リゼット(心の声)
「また煙に巻こうとしてる……!
ほんとこの人、底が見えない……!」
(リゼットの目が鋭くなる。)
リゼット(外の声)
「偶然にしては出来すぎています。
……例えば、我々の作戦ルートが敵の迎撃網と“ぴたりと重なっていた”ことなど。」
リゼット(心の声)
「ここは踏み込むところ……!
怖いけど、言わなきゃ……!」
(ヴァルターは目を細める。)
ヴァルター(外の声)
「ふむ……それは、誰かが“情報を漏らした”と?」
リゼット(心の声)
「やっぱりそこ突いてくるよね……!
でも引けない……!」
リゼット(外の声)
「私は、事実を確認したいだけです。」
リゼット(心の声)
「本当はもっと言いたいけど……
今はこれが限界……!」
(ヴァルターがゆっくり立ち上がる。
木漏れ日が影を長く伸ばす。)
ヴァルター(外の声)
「それは結構。
では准将。あなたの“真実”とやら、どうか見つけてきてください。
わたしはここでコーヒーを淹れて待っておりますよ。」
リゼット(心の声)
「……絶対何か知ってる……!
でも今はまだ聞けない……!」
リゼット(心の声:決意の表情で…)
「絶対に……真実を見つけてやる……!」




