第09話『状況変化の片鱗』
※食堂へと舞台は戻り…
「おぉー、二人がこうして並んでいるのを見れるとはなぁ」
「ふふっ、だろう?」
食堂にやって来た一人のおじさん清掃員──ファーマはそういう。
彼はどうやらテンカとも親睦の深い間柄らしく、はじめはみんながテンカの生徒だからという成り行きで話しかけられたというだけであった。
だが、10組とファーマは、今や強い絆に結ばれている。
「クレアさんはファーマさんとも面識があるんやなぁ」
クレアがファーマとよく打ち解けているのを見て、キサクはどうやら感じ取ったらしい。
「そうなんですよ!テンカさんとは以前からお世話になってて、彼を通じてファーマさんだけでなくて、グンメティ先生達ともいろいろお話してるんですよ」
以上を言うと、10組に何かの言葉が引っかかった。
「「「グンメティ先生ッ!?」」」
10組全員に引っかかったのはそこだった。
「え?何かおかしいことでも…」
「いや、グンメティ先生と言ったら…──」
10組の反応を見てわかって貰えるとは思うが、彼女への印象は決していいとは言えなかった。
「初対面のときから凄かったよねー」
「ああ…あれはすごかったよ…」
サルマとコウが会話を交わす。
当時魔法の実力も乏しく上達に向かう気概もなかった10組に、彼女のある言葉が重くのしかかった。
『──じゃあ魔法の腕も最低クラスのあなたたちに、授業してなんになるんです?』
そう、この言葉だ。
ただひたすらに、インパクトが強すぎる。
「しかも先生…退屈そうにその…」
「ね…読んでたよね…」
キサクとマーニがそう言う。
「──ん?そう言えば2組の担任って…」
ヒロトが何か感じ取ってそう言う。
「グンメティ先生ですけど…」
「えぇ…大丈夫か?変なヤリ珍オジサン紹介されてねえよな…」
「え…ええ?」
そのやり取りに大笑いするのは、ファーマだ。
「大丈夫だよ!あいつはただエロ本が好きなだけだ」
「ああよかった!」
「まあ私、先生の読んでる本は…苦手ですね」
「何言ってんだ、お前俺とコンビニ行ったときエロ本コーナー物色してたじゃねえか」
「私そんな子でしたっけ!?」
※
ガチャ…──
「「「?」」」
ドアが開いて、全員がそこを見る。
「──よーうお前ら、特にヒロト」
「…んー?おっ」
ヒロト以外は特に、その人間がここに来ていることに驚いていた。
そこにいたのは、銀髪の…。
「やっぱりここにおったかぁ」
「メイプルじゃねえか!どうしてここに」
ヒロトの師匠的位置でもある人間が、ここにやって来た。
「伝言があって来たんや──この最近はジムを閉めてんから、修業はできへんってな」
「えっ、お…おう…わかった」
「生徒会も先生も、やるべきことがあるでのぉ」
「…?」
訝しむヒロトに、メイプルは次にこういう。
「ま、ええわ、いずれはお前にも座は回ってくる…──その間くらいは、かけがえの無い仲間と仲良くやっときや」
「…?」
疑念は、ますます深まるばかりである。
「ほんじゃあな」
「お…おう」
まあひとまず、今日は仲間たちと、いつものコウの部屋で夜を明かすとしよう。
「…ん?そういやバーギラは?」
「ああ…あの金髪の不思議ちゃんか…──あいつなら、中庭で3人のお仲間と仲良さそうに話しとったで」