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魔法学園と鬼氣使い(ヤンキー)  作者: みっしゅう
第2章『物語の再開! 名家の才女ラビットの受難 力を失いし弥上ヒロトの不幸』
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第01話『クラスメイト』

 ──ガラッ…

 ヒロトは教室のドアをけ、挨拶あいさつをする。

「よーう、おそくなった」

 教室の中にいた6人の生徒が、ヒロトを出迎でむかえる。

「ヒロト!」「おはやよ〜!」「「「おはよー!」」」

 元気そうに挨拶して来るのは、ヒロトのしたしい仲間たちだ。

 ここはヒロトのクラス、10組。

 もとは20人弱はいたのだが…──…まあそれにはれないでおこう。


「何だお前ら、この最近、10組に来るのがバカに早えじゃねえか」

 その言葉に、ある2人の男女が笑顔で顔を見合わせた。

「ま、最近は一気に魔法が上達してるからなぁ」

「せや!授業が楽しみで仕方あらへん!」

 ホクホクしている男女はじゅんに、ヒロトのはつの男友達コウ、関西弁の活発なキサクである。

 2人は、10組に所属しょぞくするヒロトの初めての友達と言っていい。

 だが、ヒロトと友好関係を築くクラスメイトは他にもいる。

「みんなして早く授業を受けたくてウキウキしてたんだよ!」「そういうサルマだってそうでしょ」「まあ私らもっとうまくなりたいからなぁ」

 中学生のような体躯たいくのサルマ、冷静沈着れいせいちんちゃくなアシュ、天真爛漫てんしんらんまんなマーニも2人と同じ様子だ。

 この5人はつい最近まで、魔法の実力が10組に相応ふさわしく最低クラスであった。

 そしてその未練みれんさによって、彼らは持ち前のこころざしなかあきらめていた。

 そんな彼らにとって、魔法の急成長は興奮こうふんモノだ。

 10組は今や、6,5組の連中とも引けをとらぬ実力を持っているのに間違いはないだろう。


「みんな張り切ってるな…お前はどうだ?バーギラ」

「わたしも…」

 ヒロトが質問した、バーギラという少女はそう答える。

 彼女の説明は、語ればむずかしいものだ…──この学園には、彼女ほどに特異とくいな事情を持つ生徒はいないだろう。

 姿すがたは人間だし、話す言葉も人間のものだが、本当に特異なのは、彼女の母である。

 かつてヒロトとラビットがおとずれた森──レーブルジャングルでは、未解明猿獣みかいめいえんじゅうバーギラという生物が生息していた。体長13m以上の巨体をほこるそいつは、ひどく衰弱すいじゃくしていた。

 その理由は、そいつの単為生殖である。

 そして、それによって産まれたのが、彼女であるというわけだ。

 なぞは多いが、それが現実げんじつだと言わざるを得まい。


「マホウはべんり…もっとがんばりたい…」

「…そっかぁ…」

 ヒロトは何やら訳有げに落胆しているが、バーギラはの魔法の熟練スピードは半端はんぱじゃない。

 魔法に触れてたった3日で、コウ達と同じか、はたまたそれ以上にまで腕を上げた。

 さらに、彼女の基礎体力は、ヒロトにも遜色そんしょくないほどに力強い。

 今のおしとやかな性格からは考えられないが、彼女は獲物えものを見つけると、猛獣を思わせるように野心をほとばしらせる。

 おそらく、この10組で一番個性が強いのは彼女といってもいいだろう。


 ──そして、ここにいる全員の魔法の上達には、ある一人の教師の存在が起因していた。

 その教師は、こう言われている──1から2にする教師ではなく、0を1にする教師だと。

「そういや先生はどうした?」

「あー…ちょっと早く来すぎたかもね──でも、もうすぐ来るはずや」

 キサクがアシュの答えにそう答えると、廊下ろうかくつで歩く音がしてきた。

 その音がしばらく近づいてきてから、ドアがガラッと開く。


「…よぉーう」

 …一見いっけん愛想あいその悪そうな、赤いかみと赤いジャージの、高身長な男があらわれた。

 彼の名はテンカ──つい最近ここの担任に赴任ふにんしたベテラン教師きょうしである。

「「「おはようございます!──…あれ?」」」

 一同が元気に挨拶する…するものの…。

「はぁーっ…」

 急にため息をつくテンカ。わりふかいきだ。

「え…先生どうかしたんすか」

「…──ああ…」

「何だよ…らしくねぇ」


 ヒロトが今日の彼を、らしくないと思う理由──つかれているのか、いつも彼を通っているしんゆるんでいるように思える。

「何かあったんすか」

「…ああ…今、ちと用事がかさなり過ぎてんだ」

 一同は、彼の言う用事とやらを不思議に思う。

「ま…用事は教えねえがなぁ」

 聞いてもいないのにそう言われた。テンカは生徒を見る目が半端じゃない。

「…ヒロト、お前には特にだ」

「は…はぁ?何だよそれ」

 急にそんなことを言われ、ヒロトは呆気あっけにとられる。

「え…俺馬鹿にされてるの?」

「「「さ…さぁ…?」」」

 10組の雰囲気が変になっていると、テンカは最後に続ける。

「それも、今はの話だ──…いずれは、お前も知ることになる」

「…?」

 ふくみのあるような言い方をするテンカに、ヒロトのみならず他も首をかしげている。


「──…んなことより、今日はまず魔法の授業だ」

 一同の表情から疑念ぎねんがれて、期待きたいあらわになる。

 たった一人をのぞいて…。

「…?どうしたんだヒロt…──ぁっ…」「あぁ…」「ぅうーん…」

「何だその反応は」

 10組は何となく事情をさとり、何も言うまいという感じである。

「まあそうだよ、だけど俺は昨日、あの生徒会長さんのもと修業しゅぎょうしたんだよ」

「おぉ…じゃあ、期待できるんやな!」

「いやっ、ダメだ!」

「「「…」」」

 断言だんげんするヒロトに、10組は言葉も言わなくなるのだった。

「だがこれからはお前にも、一気に魔法を上達させてもらう」

「えっ、何でそんな急に」

「そうなってもらわねぇと困る」

「…誰が」

「お前、ラビット、10組全員、クレア、その他学園の生徒全員」

「…?」


「──つうことで、お前にはさらにいい指導員しどういんを連れてきた」

「なにぃ?お前よりも生徒会長よりも、こんな物分りのワリぃ男へのご指導ができる人間がいんのか?」

 それを聞いてから、テンカはこう即答する。

「ああ」

「…?」

「おい、入ってきな」

「はーい」

 返事が帰ってきてそこから現れたのは…──

「私が先生ですよ、ヒロトくん」

「なっ!?」

 …ある一人の少女だ。彼女に強い面識めんしきがあるからか、ヒロトはおどろきあまって思わず立ち上がる。一応他にも面識はあるので、そこからは純粋じゅんすいおどろきがあらわれるのみ。

「そんなに驚きます?」

「えっ、だってお前!──」

 ヒロトが指を指した方にいたのは…──

「尼野!」

 ヒロトが彼女の名前をよぶ。

 ここに来るとは予想外だ。

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