第01話『突然の魔法学園』
状況に混乱したヒロトは、校舎裏へと避難する。
「クソ…どうなってやがる…俺は確か、トラックに轢かれ…」
ヒロトはつい先程までの出来事を振り返ってみる。
「…でも、不思議と痛みはない…?」
いくら考えても謎が謎を呼び、手がかりは掴めない。
そして何よりの謎は…──
「…ここはどこだ…」
目の前に堂々と鎮座する巨大な学園。ごく自然に魔法を使う人間たち。
「ここはまさか…別世界なのか…?」
そうとしか考えられない。
ここに来るまでの過程を、どうしても掴めない。
「くそっ…何がどうなって──」
ヒロトは、苦悶し続けていたが…──。
「あの…」
「…!」
後ろからの声に、ヒロトは驚いて振り返る。
「誰だ…!」
ヒロトの視線の先には、同い年くらいの少女がいた。制服姿なのでここの生徒だろう。
「誰だお前…」
ただでさえ人相の悪いヒロトに睨まれた彼女は、さすがに少したじろいだ。
「あっ…えぇ!そんなに怖がらなくても!」
…見たところ敵意は感じ取れない。
ヒロトは深い息をついた。
「…すまねえ。怖がらせて悪かった」
「は…はぁ」
少し胸を撫で下ろしたらしい彼女は、気をとりなおしてヒロトに声をかけた。
「ほっ…──あなた、もしかして新入生ですか?」
「いや…俺は…──まあそういう所か」
ヒロトは自分が日本の人間だと言うことは言わなかった。きっと信じてくれないからだ。
「じゃあ私と一緒ですね!10分後に入学式典がありますから急ぎましょう」
ヒロトは彼女の言う、入学式典へとついていった。
親切そうな彼女の柔らかい笑みに心が和らいだことに違いはないのだが、この状況の奇想天外さには理解が追いつく筈もなかった。