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ー浄土の章15- 走る信長。そしてゲロゲロと

「いやあ。本当に朝まで愚痴を聞かされるとは想いませんでしたねえ。家康くん、相当、ストレスが溜まっていたのですね」


「す、すまないのでござる。高天神城の話で止まろうと想っていたのでござるが、酒が入っていたために、舌の滑りがよくなってしまったのでござる。ついつい、三方ヶ原の戦いにまでさかのぼってしまったのでござる」


「まあ、話せば楽になることもあるのじゃ。しかし、頭が痛いのじゃ。迎え酒までやるものではなかったのじゃ」


「でも、勝家(かついえ)くんが居なくて良かったですね。彼、酔いだすと家康くんをちびらせようと、色々と画策してきますからねえ?」


「本当にやめてほしいのでござる。俺、勝家かついえ殿に恨まれているのでござるか?勝家かついえ殿に会うと毎度、おしっこをちびらさせられるのでござる」


「恨まれてはいませんよ。逆に気に入られすぎているんですよ。ほら、よく言うじゃないですか。可愛い男の子が居たら、ついイジメたくなってしまうって。勝家かついえくんはまだ、家康くんに恋心を抱いていることに気付いてないだけですよ」


「なんか、それ、嫌な話でござるな。もし、勝家かついえ殿が恋心に目覚めたら、俺の尻の穴がガバガバにされそうなのでござる」


「おや?家康殿は衆道は平気になったのか?じゃ。前までは殿とのが良い男を紹介しても断っていたのじゃ?」


「嫌。それが、以前、家臣の酒井忠次さかいただつぐに、殿とのはちゃんと家臣を抱いてやらねばならないでござる!と説教をされたのでござる。だから、俺は心を入れ替えて、自分の親衛隊となる男を作るためにも、積極的に良い男を抱くようになったのでござる」


「ほほう。それは良い傾向ですね。今度、家康くんのお尻を狙っていそうな若者がいたら、家康くんのために紹介しますよ。どんな男の子が好みですか?筋肉隆々系ですか?汚いおっさん系ですか?」


「ちょっと待ってほしいでござるぞ?なんで、俺が掘られる方向なのでござる?それと汚いおっさん系とはなんなのでござる?」


「えっ?家康くんって総受けに見えていたんですが、違うんですか?しかも、無理やり力でねじ伏せられるようなシチュエーションが好きだと想っていたのですが。うーーーん。これは困りましたね。家康くんはヘタレ攻めのほうが良いのですかね?」


「まあ、どちらかと言うと、ヘタレ攻めからの謀反攻めをされそうな気がするのじゃ。まあ、衆道を極めた前田玄以まえだげんいにでも候補をあげてもらっておくのじゃ。それよりも、高天神城が落とされた以上、そろそろ、長島攻めを完了させておいたほうが良いのではないかじゃ?」


「そうですね。家康くんの性的嗜好はとりあえず置いておいて、長島攻めを終わらす必要がありますね。あそこに織田家の主力を置いておく時間がなくなってしまいましたし」


「す、すまないのでござる。本当なら、高天神城さえ落とされなければ、もう少しのんびりと、信長殿が長島の一向宗を痛めつけ続けれたと言うのにでござる」


「まあ、その話はもう良いじゃないですか。どうです?家康くんも三河に帰る前に、一緒に長島火祭虐殺パーティを見物していきませんか?」


「うむ。そうでござるな。うっぷん晴らしも兼ねて、信長殿に同行しようと想うのでござる。で?いつ、長島に向かうのでござる?」


「へ?いつって、今から向かうに決まっているじゃないですか。ちなみにこの京の都から長島の地まで、三日で到達する予定です」


「へ?今の今まで飲み続けていたのでござるよ?そんな、強行軍をしたらゲロゲロゲロってなるでござるよ?」


「そうです。ゲロゲロゲロとやりながらの強行軍です。貞勝さだかつくん。さっそく、馬と兵糧丸の準備をしてください。あと、酔い覚ましに曲直瀬まなせくんの新作の薬もお願いします。1時間後には長島の地へ出立ですよ!」


「はいはい。わかったのじゃ。準備している間に殿とのと家康殿は水垢離みずこりをしてくるのじゃ。酒臭い身体だと馬も嫌がるのじゃ」


「というわけで、家康くん。くんずほぐれず水垢離みずこりをしてきましょうか。なあに、家康くんが泣くまで水をぶっかけるので覚悟していてください?」


「むむむ!それは聞き捨てならないのでござる。俺は確かに総受けでござるが、いつまでもやられっぱなしではないのでござる!家康の逆襲を思い知るが良いのでござる!」


 信長と家康はニヤリと口の端を歪ませて、ふっふっふと笑いながら、中庭の井戸に向かうのであった。結果は家康が水責めを散々に喰らい、さらには相撲で土の上にぶん投げられて、まわしを分捕られ、さらにそこから水責めを喰らい、しくしくと泣きだす始末となるのであった。


「いやあ。良い汗をかきました。先生、疲れたので寝ていいですか?」


「だめなのじゃ。さっさと長島に行ってくるのじゃ。すでに殿とのがそちらに向かうと言う伝令を送りだしたのじゃ」


「あらら。それは退路を断たれてしまいましたね。その伝令の者には、織田家うちの将たちに長島の一向宗に降伏勧告を促せと言うことは伝えてありますか?」


「もちろんなのじゃ。そこはぬかりなくやっているのじゃ。だから、殿とのが長島の地に辿りつくころには万事、準備は整っていると言うことなのじゃ」


「ふーーーむ。まったく、貞勝さだかつくんは本当にできる子ですね。長島の地が片付いたら、先生、貞勝さだかつくんに何か褒美を与えないといけませんねえ?」


「そんなのは別にいらんのじゃ。それよりも槍働きを頑張っているモノたちにでも褒賞を配ってやるのじゃ。殿とのの褒美は、どうせ、わしの仕事が増える何かなのじゃ」


「ちっ、バレていましたか。先生だけでなく、織田家うちの家臣たちにも官位をもらえるように朝廷に働きかけてもらおうと想っていたのですがね」


「そこはさすがに難しいのじゃ。1国1城の主ともなれば、話は別なのじゃが、その第1候補の勝家かついえ殿がそうではないのじゃ。他の者に官位が先に与えられれば、いくら勝家かついえ殿でも気分は悪いモノなのじゃ」


「それもそうですね。勝家かついえくんには越前を取り返したあとにでも、そこを治めてもらう予定なので、官位をばらまいてもらうのはその後になりますね。では、長島をまず火の海に沈めましょう。家康くん?そろそろ泣きやんでください?出発しますよ?」


「ううう。ひどいのでござる。こんな扱い、徳川家うちでもされないのでござる。信長殿は魔王なのでござるううう」


「そりゃ、先生は第六天魔王ですからね。家康くんが総受けならば、その望みをかなえなくてはなりません。いやあ、尻の穴まで水垢離みずこりをしてやろうかと想いましたが、さすがにそれはやめましたよ」


「ううう。誰か、この第六天魔王に天誅を与えてほしいのでござる。この傍若無人な魔王に鉄槌を与えてほしいのでござるううう!」


 しくしく泣いている家康に無理やり服を着させ、さらにその襟首を掴み、ずるずるとひっぱって、信長は貞勝さだかつに準備させた馬のもとまで行く。そして、家康を無理やり片方の馬に乗せ、自分は自分の栗毛の愛馬にまたがり、はいよおおお!と掛け声を上げて颯爽と長島の地に向かい、馬を走らせるのであった。


「まったく。殿とのは言い出したら、即実行なのじゃな。さて、遅かれ早かれ、織田家うちの者たちには官位が必要になってくるのじゃ。それとなく、朝廷の貴族たちに話をもちかけておくのじゃ」


 村井貞勝(むらいさだかつ)もまた、これからの織田家のために動きを開始していたのであった。




「ふううう。強行軍なんてするもんではありませんね。途中、なんどかゲロゲロゲロっとしてしまいましたよ。家康くん、生きてます?」


「げほっげほっがはっ!ああ、気持ち悪いでござる。いくら近道だからと言って、南近江から伊勢路を抜けていくとは想っていなかったでござる。しかし、のんびりしてられないのも事実でござるしな」


 信長と家康は京の都から出発し、伊勢路を通って、三日後には長島の地に辿り着いていた。彼らは長島を取り囲む佐久間盛政(さくまもりまさ)柴田勝家(しばたかついえ)の本隊の下へと合流をはたす。


「おお。殿(との)。お帰りって、うわっ!なんだよ、顔が真っ青だぞ?なにか変な病気でも、貴族からもらってきたのか?」


「いやあ。徹夜で飲み明かしたあとに、京の都からここまで三日で馬に乗って走り切ってきましたからね。おかげで道中、吐きまくりましたよ。で?状況はどうです?長島のほうからは動きがありました?」


「ガハハッ!今、降伏勧告を長島の城や砦に行っているところでもうす。まあ、ここ2カ月で奴らは兵糧を喰い尽くしているはずでもうす。三日も経たずに、降参すると想われるでもうす」


「勝家くん、なるほど。では、作戦は最終段階に来ているってことですね?これは良い傾向ですよ?一益(かずます)くん、丹羽(にわ)くんの方も同じ運びになっています?」


「そこはもちろんでもうす。2つの砦の方にそれぞれ民衆も含めて1万から2万ずつ、なだれ込んだようでもうす。あちらのほうも、飢え死にの危機に瀕しているはずだと伝令が来ていたのでもうす」


 勝家(かついえ)の応えに信長は満足そうにうんうんと頷くのであった。


「しかし、良いのでござるか?信長殿はここ、長島の民を全員殺すつもりでござるよな?そのようなことをすれば、信長殿の悪名は、将軍殺しをおこなった松永久秀(まつながひさひで)を超えることになるのでござる。それが恐ろしくないのでござるか?」


「言っておきますが、これはあくまでも、本願寺顕如ほんがんじけんにょくんが和議を一方的に破ったことが原因です。先生に咎はこれっぽちもありません。それに先生は長島の民たちが極楽浄土に旅立つのを手伝うだけです。誰に恥じることがあるというのですか?いいえ、先生は逆に民たちから喜ばれる存在となるわけですよ」

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