ー崩壊の章18- 覗き視ではない。これは視察だ。
太陽はすっかりと大地の向こう側に堕ちていき、代わりに夜空には月が昇っていた。めちゃめちゃイチャイチャしたお竹と京極高吉は疲れ果て、布団の中で一糸まとわぬ産まれたままの姿で絡み合って眠っていた。
お竹は眼を覚まし、今の今まで散々に自分の身体を求めてきた男の寝顔を見るのであった。
「まったく、京極ちゃんはガツガツしすぎだよー。あたしの股が裂けちゃうかと想ったよー」
お竹はぷくうううとほっぺたを膨らまして、男の寝顔を睨みつけるのであった。だが、男は満足そうな寝顔のままである。それにちょっと、カチンとくるお竹である。
「なんか、ちょっと、イラッと来ちゃったなー。このまま、こっそり、居なくなっちゃおうかなー?」
「そんなの嫌でがんす。お竹ちゃんを手放す気はないのでがんす。ぐごーーー。ぐごーーー」
お竹は寝言でそういう男に、ビクッとなってしまう。しかもだ。その男は無意識にお竹の左腕を右手で掴んでくるからだ。
「まったく。本当に勝手なんだからー。まあ、いいかー。京極ちゃん?ちゃんと、あたしの全部を奪ってねー?そうじゃないと、あたし、逃げ出しちゃうからねー?」
「心配しなくても大丈夫なのでがんす。お竹ちゃんには僕の子供を3人産んでもらうのでがんす。お竹ちゃんの娘さんたちも養うのでがんす。ぐごーーー。ぐごーーー」
「なんで、寝言で応えるのかなー?ちゃんと、起きて、応えてほしいところだよー。京極ちゃんは女性の扱いがなってないよー?」
「す、すまないのでがんす。自分、武骨もの故、女性の扱いは慣れていないのでがんす。優しくできるように努力させてもらうのでがんす。ぐごーーー。ぐごーーー」
本当に寝てるのかなー?と想ってしまう、お竹である。お竹は、ふうううと息を吐き、まあいいかー?と言い
「京極ちゃんが本当に女性とイチャイチャしたことがないってのは、あたしにもわかったよー。京極ちゃんの初めてを、あたしが奪っちゃったねー?これは役得なのかなー?」
「接吻も初めてだったのでがんす。もちろん、いちもつのほうも初めてだったのでがんす。うへへ。ぐごーーー。ぐごーーー」
「本当に、京極ちゃん、寝てるー?実は起きてるんでしょー?」
「お、起きてないでがんすよ?ほ、本当に起きてないでがんすよ?ぐ、ぐごーーー。ぐごーーー。あっふん!いちもつを握るのはやめてほしいのでがんす」
「やっぱり、起きてるじゃないー!もう。そんなところが、京極ちゃんの嫌いなところなんだよーーー!」
「ね、眠っているのでがんすよ?僕は眠っているのでがんす。だから、嫌いにならないでほしいのでがんす。ぐごーーー。ぐごーーー」
あくまでも寝ているフリをし続ける京極に対して、お竹は、ぷくうううと頬を膨らませる。そして、何を想いついたのか、いきなり、お竹は京極のいちもつを自分の口に含み、もごもごとしだすのであった。
「あっあっ。やめてほしいでがんす!そ、そんなことされたら、僕、汚されてしまうのでがんす!あっあっあああああ!」
お竹は知ったことかと、京極を責め続けるのであった。
そんな情熱を交えた2人のイチャイチャをこっそり、襖の隙間から覗き見をしている3人組が居たのである。
「うーーーん。困ったのじゃ。お竹殿も京極殿も節操と言うものを知らぬのかじゃ?昼からずっと、屋敷がギシギシ揺れているのじゃ」
「まあまあまあ。貞勝くん、いいじゃないですか?いやあ、良いものですねえ?略奪愛って、何か燃えるものを感じてしまいましたよ。先生も今度、略奪愛をしてみましょうか?」
「やめとけ、やめとけ。殿。殿がやったら、嫁を奪われた家臣が本気で泣くぞ?さすがに可哀想だと想わないわけ?」
「勘違いしないでくださいよ。のぶもりもり。さすがに自分の家臣たちの奥さんを略奪する気はありませんよ?信玄くんみたいに、敵対する豪族の娘を無理やり手籠めにするんですよ」
「ふむ。諏訪姫の件じゃな?あれは、誠にひどい話なのじゃ。信玄の奴が自慢たらげに書状で詳細を殿に教えてきたときはドン引きしたものなのじゃ」
「あれはひどいよなあ。諏訪姫が私の身はどうなっても良いから、弟の命だけは助けてほしいって言ってたんだろう?で、信玄は諏訪姫に男の子が出来たから、その男の子を諏訪の跡取りにするために、結局、諏訪の本家にいた弟は切腹させたんだっけ?」
「うっわ。略奪愛、だめですね。先生、やっぱり略奪愛はやめますよ。しっかし、京極くんはやりますねえ?これ、義昭の馬鹿に教えてやりましょうか?」
「ふむ。そうすれば、義昭めが怒り狂って、二条の城から飛び出してくれるかも知れぬのじゃ。おっと、そろそろ、10回戦が始まるとこなのじゃ。殿、もうすこし、横にずれてほしいのじゃ」
「京極殿、すげえな。俺も一晩でどれくらいできるか試したことはあったけど、5回戦までが限界だったぜ?」
「まあ、のぶもりもりは結婚したときにはすでに35歳くらいでしたからね。そりゃ、小春さんも欲求不満でしたでしょ?」
「うっせえええ!俺もまさか、小春があんなエロエロになるとは想ってみなかったんだよ!あっ。エレナのほうが、きついな。立たない俺のいちもつを無理やり立たせようとする分」
「信盛殿はうらやまけしからんのじゃ。まあ、義昭の件が済めば、皆で久しぶりにゆっくり正月が迎えられそうなのじゃ。殿、義昭をどうする気なのじゃ?そろそろ、決定的に追い詰める何かをするべきなのではないかじゃ?」
「うーーーん。そうですねえ。軍事担当の京極くんも二条の城から逃げてくれて、いま、ここに居ますからね。もう、義昭の戦闘力ははっきり言って、まともに戦うことすらできないほどガタ落ちしています。あとは京の都の民たちが、義昭追放を叫び出せば、完成と言ったところですね」
「ふーーーん。じゃあ、予定通り、京の都を丸焼きにしちゃうってことで、ファイナルアンサー?」
「ファイナルアンサーって何です?南蛮語が流行ってきているからと言って、よくわからないことを言うのはやめてもらえませんかね?のぶもりもり」
「すまねえすまねえ。やっぱり、覚えたての南蛮語って、使いたくなるもんじゃない?最近ではイチャイチャのことを南蛮語ではセックスって言うのを覚えてさあ?」
「それはやめておくのじゃ。趣が損なわれる気がするのじゃ。やはり、古来からの言葉、イチャイチャを使用するのが正しいのじゃ」
「おお。お竹さん、京極くんの上に乗っかりましたねえ?これは京極くん、すぐに果ててしまうんじゃないんですか?」
「まさに嫁に尻にしかれる体位って奴だよな。俺もアレばっかりは、5分も持たずに果ててしまうわ。自分のペースで腰が振れるわけじゃないからなあ?完全に主導権は嫁に持っていかれるんだもんな、アレ」
「先生も、吉乃さんがあの体位を覚えたころは初々しさに感動を覚えましたけれど、今じゃ、先生が搾り取られる危険な御業へと昇華してしまいましたよ。いやあ、女性と言うものは怖いものですよ」
「そう言っているうちにも10回戦がそろそろ終わりそうなのじゃ。まったく、京極殿はあとどれほど絞り取られるつもりなのじゃ。これは赤玉が出るまで終わりそうもないのじゃ」
「まあ、出ちまっても良いんじゃねえの?あんだけイチャイチャしてたら、子供くらいすぐ出来るだろ。それよりも、お竹さんと義昭の離縁はどうする気だ?そっちのほうもしっかりしてやらないと、この2人、可哀想だろ」
「うーーーん。とりあえず、前田玄以くんのかつて勤めていた寺にでも、1カ月ばかし、お竹さんを放り込んでおきますか。あの寺は縁切りも確か、兼ねていたはずですし。尾張の寺ですが、このまま京の都にお竹さんとその娘さんたちを置いておけば、危険ですからね。一石二鳥と言ったところです」
「玄以もさらに仕事が増えて、感涙しそうなのじゃ。さて、11回戦には突入してくれるのかじゃ?」
「そりゃあ、朝までイクでしょ。この勢いなら。お竹さんは2児の母親だけど、まだまだ若いんだぜ?おっと、京極殿が泣きはじめたな。そろそろ、蝮酒でも投入したほうが良くね?」
「では、貞勝くんの側付きの者に、それとなく食事と蝮酒、あとは曲直瀬くん作の精力増強の薬も進呈しておきましょう。貞勝くん。それとなくですよ?わかっていますよね?」
「うっほん。任せるのじゃ。その辺の機微も察せれないような者など、わしの側付きにはおらんのじゃ。一番良いタイミングで膳を運ばせるのじゃ!」
信長、信盛、貞勝の要らぬお節介がこのあと、とある事件で功を奏するとは、だれが予想しただろうか?ただ単に覗き視をしていただけなのに、信長たちは大業ともいえるきっかけを作ることになったのである。
「がははっ!殿、信盛殿、貞勝殿。そろそろ、風呂に入って、メシにするのでもうす!覗き視も大概にしておかないと、我輩がお仕置きするのでもうすよ?」
「ちょっ、ちょっと!声が大きいですよ、勝家くん!それにこれは覗き視ではありません。視察です!勘違いしないで頂きたいですね!」
「そ、そうなのじゃ。これは立派な視察なのじゃ!勝家殿は、高尚な視察を理解するつもりはないのかじゃ!」
「やべえ、殿!お竹さんに気付かれたっぽいぞ!視察は一旦中止だ!戦略的撤退だあああ!」