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ー動乱の章13- 丹羽(にわ)の趣味

「先生としたことが、大事なことを失念していました。丹羽にわくん、普段、何をしているんでしょうか?」


「俺は、てっきり、四六時中、殿とのと悪だくみをしているもんだと思ってたけど、違うの?」


「違いますよ。丹羽にわくんにだって、プライベートはあるんですよ。そりゃあ、いつも頼りにしてますけど、仕事以外については知らないんですよね」


「一体、普段は何をしているんでしょう、ね。結婚はされているとは思うの、ですが」


「結婚はしていますよ。昔、尾張おわりで第2回目の合婚ごうこんをしたときに、お相手を見つけて、結婚しています。私が仲人を務めて、結婚式をしたので、それは間違いありませんよ」


「あれ?俺、その結婚式に呼ばれた記憶がないんだけど」


「のぶもりもりは、新婚ほやほやで、猿化していた時期にかぶるからですよ。あの時期、全然、仕事をしてなかったじゃないですか」


「そういや、そうだっけ?そんなこと、よく覚えているもんだな、殿とのは」


「普段、式とか宴とか、全部、丹羽にわくんにやってもらってたから、逆に、その本人の結婚式の時は、彼が主役だったため、段取りがわからず大変だったんですからね。それなのに、のぶもりもりと言ったら、猿化してましたからね。それは覚えていますよ」


 信盛のぶもりはバツが悪そうな顔をする。


「まあ、その話は今はどうだっていいじゃないか。それより、丹羽にわのプライベートだよ。あいつは、休みの日とか何してるわけだよ」


 信長は、ううんと唸る。


「もしかして、盆栽いじりが趣味とかだったりしませんかね?彼なら、奇想天外な盆栽を芸術だと称して、やってそうじゃないですか」


「それは、ないような気もします、が。城づくりが得意な方なので、つまようじを使って、小さなお城の模型を作っているんではない、でしょうか?」


「そんな光秀くんみたいな、趣味、もってるわけがないでしょう。いくらなんでも、プライベートまで、城を作ってたら、仕事中毒者じゃないですか」


「てか、疑問に思うのなら、直接、丹羽にわに聞いたらいいんじゃねえの?殿とのになら、なんでも話してくれるだろうよ」


 信盛のぶもりの言に、信長は、うん?と顔をし


「それもそうですね。直接、聞いた方が早いですね。では、善は急げと言います。早速、丹羽にわくんに聞きに行きましょうか」


「おーい、親父。勘定、ここに置いておくからなあ」


 そうこうして、信長、信盛のぶもり、秀吉は、そば屋を後にする。そして、二条の城建築にいそしむ、丹羽長秀にわながひでを訪ねにいくのであった。




「あれ?信長さまに、信盛のぶもりさま。それに秀吉じゃないですか。どうしたんですか?何か、プロデュースしてほしいことでも出来たのですか?」


 丹羽にわが3人を不思議そうな顔をして出迎えるのであった。


丹羽にわくん、大変です。先生としたことが、丹羽にわくんが、お休みの日に、一体なにをしているのか知らないんですよ」


「ん?丹羽にわちゃんが休日に何をしているかを聞きにきたのですか?」


「自分に仕えてくれている家臣たちが普段、何でストレスを解消しているかを知っておくのも上司である先生の役目です。それが、つい、丹羽にわくんのことを聞いていなかったことに気づいたんですよ」


 んー?と丹羽にわは首をかしげている。


「あれ?丹羽にわちゃんは、信長さまに言ったことがないんでしたっけ。いつも、信長さまと一緒にいるので、言ったつもりになっていたのです」


「で、結局、丹羽にわさんは、休日とかは、何をされているん、ですか?」


 秀吉が丹羽にわに問う。


「それはですねー。丹羽にわちゃんは、わんちゃんを2匹、飼っているのです。2匹は甘えん坊で、丹羽にわちゃんはいつも顔をぺろぺろと舐められているのです。わんちゃんと遊んですごしているのですよ」


「盆栽いじりかと思いましたが、意外といえば意外な趣味ですね。そのわんちゃんたちは、なんて言う名前なんですか?」


「太郎と花子なのです」


 普通すぎる。いや、別に普通で問題ないのが、数々の信長の難題をことごとくこなす丹羽にわなのだ。至って普通すぎて、逆に違和感すら感じてしまう。


「そのわんちゃんは、頭がふたつついていて、炎を吐いたりしませんよね?」


「そんなわけないじゃないですかー。一体、どんなわんちゃんを想像しているのですかー?」


「先生の思い過ごしなのでしょうか。ううん。一体、どんな犬種なんでしょうか、今度、丹羽(にわ)くんの屋敷に遊びに行っていいですか?」


「構いませんけど、信長さまって、わんちゃん好きでしたー?わんちゃんは、わんちゃん好きかどうかを敏感に察知するものですよー」


「犬は好きですよ。昔は犬千代くんとよく遊んでいましたし。犬の扱いには、先生、自信がありますよ」


 犬千代とは、前田利家まえだとしいえの幼名である。彼らは、昔はつるんでよく悪さをしていたものだ。


利家としいえ殿と、犬は違うとおもうんです、けど」


 秀吉が信長につっこみを入れる。


「え?違うんですか。骨を投げたら、口にくわえて持ってきてくれましたが、それと同じものだと思っていましたが」


 秀吉は、ううんと首をかしげる。


「似たようなものの気がして、きました。でも利家としいえ殿って、そんなキャラでし、たっけ?」


「秀吉くんは知らなかったんですね。今度、鶏の骨でも、投げてみてください。きっとおもしろいものが見られますよ」


「確かに、利家としいえは犬っぽいところがあるよな。俺も、機会を見つけてやってみるか」


 信盛のぶもりがそう言う。


「ところで、用件は、丹羽にわちゃんが、わんちゃんを飼っていることを聞きにきただけなのですか?」


 はっと信長が思う。そういえば、それだけだ。信長は、んんっと咳払いをし


「わんちゃんと遊ぶ以外には、他に何か変わった趣味なんかを持っていないんですか?わんちゃんだって、移動が多い、織田家うちでは四六時中、連れまわすことができないじゃないですか」


「んー、わんちゃんを連れてこれない時の話ですかー」


 丹羽にわが考え込んでいる。他にも趣味があるのかと思う、信長である。


「そうですねー。他にと言われれば、利休さんと一緒に、お茶をたしなんでいますねー」


「利休くんですか。そう言われれば、彼も休日、何をしているんでしょうか。もしかして、丹羽にわくんと何かしていたりとかですか?」


「はいなのです。利休さんは面白い方なのです。丹羽にわちゃんのプロデュース心を湧き立たせてくれるのです」


 一体、利休と休日に何をしているのだろうか。聞くも、何やら怖い気分もするが、聞くだけ聞いておこう。


丹羽にわくん?利休くんとは、普通に茶を楽しんでいるのですか?」


「はい、そうですよー。この前は、茶紛と魚粉を何割ずつ入れれば、茶の味が際立つかどうか、プロデュースしていたのです」


「え?そんなことしてるんですか、きみたち。茶紛と魚粉は合わない気がしてたまらないのですが」


「意外とですね、お茶と鰹節が合うんですよー。今度、信長さまにもお出ししましょうかー?」


「い、いえ。結構です。何か味覚が変な方向に目覚めてしまいそうですので」


「えー。それは残念なのです。美味しいですよ。鰹の出汁が良い感じに茶の匂いを引き立てさせるのです」


 怖いもの見たさで飲んでみたいとは思うが、曲直瀬まなせくんの薬より、すごいことになりそうだ。


「大体、なんで、魚を茶に混ぜようという発想に行きつくんですか?」


「利休さんは、本業は、お魚屋さんなのです。お茶は趣味なので、本業のほうでも有名になりたいって言ってましたよ?」


「確かに忘れがちですが、利休くんは、お魚屋さんでしたね。そんなに本業のほうは、儲かってないのですか?」


「お茶うけにはお菓子ですが、お魚さんは使わないですしー。趣味のお茶が流行っても、お魚屋さんは流行らないらしいですよー?」


「ううん。いっそ、本業を茶の指導にしたほうが、よっぽど、彼の才能を生かせていいと思うのですが。そういうわけにはいかないんでしょうかね」


「趣味が仕事になってしまっては本末転倒なのです。趣味は、仕事を忘れるためのリフレッシュなのです」


 丹羽にわがまともなことを言っている。明日は雪か?と疑いたくなる。


「本業に才能がなくて、趣味で才能が開花するとか、人生はままならないものですね。利休くんも災難ですね」


「たまにいるよな。そういう奴。本人は軍人として名を馳せたいのに武の才能がなくて、趣味の能に長けていたりとかさ」


「のぶもりもり、うちの息子のことを言っているんですか?ちょっと、先生、怒りますよ?」


「い、いや、そんなつもりで言ったつもりはないんだけど。あちゃあ、いらないもんに触れちまったなあ」


「本当、あれ、なんでしょうね。長男の信忠のぶただくんは、先生に似て武に長けて、他のこともそつなくこなすんですが、次男の信雄のぶかつのダメっぷりと言ったら。本当に自分の息子なのかと疑いたくなるほどですよ」


「まあ、ひとさまの息子について、とやかく言える身分じゃねえけど、本当に、信忠のぶたださまは殿とのの若かりし時にそっくりだよな。将来が楽しみだぜ」


「そうですよね。丹羽にわちゃんから見ても、後ろ姿は、信忠のぶたださまは信長さまにそっくりなので、時々、見間違うほどなのですよー。わかりやすく、首から名札をぶらさげていたほうがいいんじゃないですかー?」


「あれで、女性の趣味まで似ていますからね。屋敷に連れ込む女性が、生駒そっくりでびっくりしましたよ。そんなとこまで似てどうするんですかって思っちゃいましたよ」


「あれ?でも、信忠のぶたださまって確か、武田信玄の娘と結婚するって話だったよな。それなのに、他の女を寝所に連れ込んでいいのかよ」


「正妻は正妻。めかけめかけですよ、そこは。子が多いことに越したことはありません。こんな世です。なにが起きるかわかったもんじゃありませんしね。しかし、筆まめなところまで似なくていいと思うんですけどねえ」


「そういえば、信忠のぶたださまは、松姫で合っていた、でしょうか。よく、書状や贈り物を送っているそう、ですね。家中でも噂になっているくらい、です」


「そうですね、松姫で間違いありませんよ、秀吉くん。武田家と今川家のいくさが終われば、祝言を上げる予定です。親ばか風に言いますが、信忠のぶただは良い男です。松姫に恥じぬ、立派な夫になるでしょうね」


「これは盛大に祝ってやらないとだな。そのときは、もちろん、丹羽にわが結婚式をプロデュースしてくれるんだろ?」


「はい。丹羽にわちゃんが盛大な式を執り行わせてもらうのですよー。信長さま、楽しみにしていてくださいなのです」

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