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35歳の俺が上司ざまぁするまでの物語  作者: VANRI


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渡瀬のお仕事

 翌日にプレゼンを控えているので、ミーティング室に顔を出した。藤田と優愛ちゃんがパソコンを使って最後の調整をしている様子。

 部屋に入ってきた俺に軽く挨拶をして、またパソコンに目を戻し作業をしている。


「あれ? 渡瀬は?」


 藤田はパソコンから目を離さない。

「今日、自分の営業所に用があるらしくて、朝からそっちに行ってます」


「そっか……」

確か、こないだの飲み会で、高橋がそんなこと言ってたような……


「なんか手伝うことある?」


 またもやこちらを向かずに返事がくる。

「大丈夫です。今日不在にするからって、渡瀬、昨日残って最終調整までやってくれたんで」


「そっか……」

頼られないのも寂しいもんだな。

成長するに越したことはないし、嬉しいんだけども。


 これ、俺って邪魔??

この場を離れた方がいいかな……

いや、ここは差し入れでコーヒーとか買ってきた方が……



「成瀬さん、ここちょっと見てもらっていいですか?」


 藤田の言葉に思わず笑みが溢れる。

が、ニコニコで行きたい気持ちを抑えて抑えて、

二人が避けてくれた隙間から、真顔で画面を覗く。


「このデータなんですけど、前に俺が調べたのと違う気がして……」

「……ああ、これはどっちをメインにして考えるかで……」



 部屋の戸が開き、渡瀬が入って来た。

「お疲れ様です……」


「あ、おかえり」

チラと見て、画面に目を戻し考える。


 ……待てよ、ここで引っ掛かってるってことは、

もしかしてこの画面の……


マウスを触り、違う画面に変える。

「じゃあここも……」



「渡瀬?」

 藤田の声にハッとしてその視線を辿る。

 渡瀬は頭をうなだれ、何も答えない。


「渡瀬君? 大丈夫?」

優愛ちゃんも心配そうに声をかけ近寄っていく。

 というか、優愛ちゃんって渡瀬にはタメ口なんだなと、どうでもいいことに気付く。

確か同い年だった気がする。


「どうした?」

こんな渡瀬を見たことがない。

 顔を覗き込む二人の後ろから、渡瀬の様子を見る。

落ち込んでいるとはちょっと違うような、悲しそうにも困っているようにも見える。


 渡瀬がゆっくり顔を上げる。

その瞳は潤んでおり、今にも涙が溢れそうだった。


「渡瀬君!? どうしたの!?

向こうの営業所でなんか嫌なことあった??」

優愛ちゃんが心配して渡瀬との距離を詰める。


 渡瀬は首を横に振り、口を開いた。


「あなたに出逢えて良かったって言われて……」


藤田が呆れた顔を晒している。

「え? 何? 恋愛の話?」


「ち、違います。

今日、契約の時に相手の会社の人に言われて……

すごくすごく嬉しくて……」


「なんだそっちかよ……」

藤田が力なく呟き、続ける。

「良かったよ、嫌なこととかじゃなくて」


 優愛ちゃんは渡瀬の頭を軽く撫でながら、涙目になっている。

「よかったね、よかったね〜嬉しいよね」


 なんか、渡瀬と優愛ちゃんって良い感じじゃねえ?

もしかして付き合ってたり……?

そうだったら、阿部からちゃんと監視してなかったって、どやされかねないな……

 いやいや、もう大人なんだしそういうのは本人たちに任せていいよな……



「ほんとに嬉しかったんです!」

涙目の瞳、少し赤く染まっている頬を俺たちに見せる。


「そんな大きな契約ではなかったんですけど、初めて一人で任せてもらった案件だったし、金額も性能もそこに適した機種を紹介しても全然駄目で、何回か修正したりもして通ってたけど、諦めて営業行かなくなったら契約するって……」


 藤田も優愛ちゃんも、頷きながら渡瀬の話を聞いてくれている。

 渡瀬は二人の様子を気にする余裕もなく、早口でまた話し始める。


「だから、俺の営業が嫌だったんだろうって思ってて。なのに如月所長が契約に立ち会えって言うから、実は不安で不安で行きたくなかったんです」


「そっか、だから昨日あんまり元気なかったのね」


 優愛ちゃんがさり気なく言った言葉も気になる。

 昨日、俺は外回りばかりであまり接してないとはいえ、顔見て会話もした。けど、渡瀬がいつもと違うことに全然気付かなかった。

 俺の前では元気を装っていたのかもしれない。

けれど、優愛ちゃんの前では取り繕うことなく過ごしていたのだろうか。

 どっちにせよ、気付けなかった自分にショックを受ける。


「それで? 行ってどうだったんだ?」

藤田が気になる素振りを見せ、続きが気になっている。


「俺の時に契約まで行かなかったのは、ただ単に時期が悪かっただけみたいでした。

 そこの社長さん、会うなり謝って来られて。俺が営業行ってた時に契約しなくてごめんって。

 ずっと気にしてたみたいでした。それで、俺が紹介した機種がとても気に入ってたって、それで言ってもらえたんです……」




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