新たな出会い
「それ息子さんは……」
部長が悲しげに微笑む。
「知らないさ。知る必要もない」
「ですが、誤解されてる可能性も……」
「今更言ったところで、仕事を言い訳にして自分のやってきたことを正当化しているようにしか思われないんじゃないかな」
「ああ……」
渡瀬のことが思い出される。
確かに論理的なあいつはそう言うかもしれない。
……だが、誤解したままでいいのだろうか。
「成瀬君」
神野社長から突然声がかかる。
声の方に目をやると笑みを浮かべた神野社長と目が合う。
「君が心配しなくていいんだよ。
君は昔から優しくて当事者より悲しい顔をするからな。
渡瀬親子は大丈夫。ちゃんと絆で繋がってるから」
神野社長の言葉で癒されていくのを感じる。
この人がそう言うならそうなのだろう。
本来なら俺みたいな他人が土足で踏み込んでいい領域でもない。
――――――
仕事帰りに買い物をするため遠回りして帰ることにした。日用品を一通り買い家路に着いた。
のだが、家に着く前に佐伯さんを見かける。
道路の向こう側を歩いている。
……男と。
見かけない顔なので今の営業所の奴ではないだろう。雰囲気からして同業じゃないと思う。
だって金髪だから。社内規定で明るすぎる髪色は禁止されているし、営業という職業柄は金髪では難しい。
でも前回の元同僚の時と違って距離が近いし、スキンシップも多い気がする。それを佐伯さんが嫌がってないのも気になる。
自然と向こうと同じ速さで歩いてしまい、チラチラと目線を送ってしまう。だが話に夢中なのか気付く様子はない。
そしてその流れで信号待ちになる。佐伯さんたちはこっちに、俺は向こうへ行かなければならない。
ようやく佐伯さんと目が合う。
だが、明らかに「しまった」という顔をされる。
ということは? 話しかけない方がいい?
見られたらマズい相手ということか?
佐伯さんは目を逸らし隣の男に何やら話している様子。
しばらく話すと軽い言い合いをしているように見えた。
そして、信号が青になりこちらに歩き出す。
まだ佐伯さんはその男に険しい顔で話しかけ続けている。
とりあえず、知らないふりをして二人から距離をとって歩き出す。
しかし、その男が一直線に向かって来る。佐伯さんは腕を掴み制止しようとするがそれを振りきって目の前に現れた。
「ちょっと来て」
そう言われ、途中まで進んでいた横断歩道を戻される。
心配そうな目の佐伯さんと視線が合うがどうすることも出来ないようで、誘導されるまま人気のない路地へと進んだ。
「あんた、みのりの彼氏?」
唐突に言われ、どう答えたらいいかわからないので佐伯さんを見る。会社内で隠れて付き合っているためである。
目が合うと、頷いてくれたので答える。
「そうだけど」
辺りは暗くなり、路地裏で光が乏しく気まぐれに通る車のライトの光で相手の顔を見る。
中性的な顔立ち、背は低めだがスラっとしていてスタイルがよく見えるタイプ。
パーカーにジーンズのラフな格好をしている。
「彼氏って言っても俺たちより親密になれることはないだろうけどな」
言いながら佐伯さんの肩を抱き寄せる。
佐伯さんは嫌がればいいものの、何も言わず不機嫌な顔をしてこの男の顔を睨んでいる。
こっちが何も言わないことを確認し続ける。
「一緒に風呂も入ってるし」
「……え? 今現在? 過去じゃなくて?」
「そうだよ」
不敵に笑いながら返される。
こっちが動揺するのを喜んでいるのが手に取るようにわかる。
何だ? こいつの目的は。前の彼氏?
返せってこと? ならそう言えばいい。
苛々してくるのを感じる。
「キスだって……」
そう言いながら佐伯さんに顔を近づける。
「は!? ちょっと待っ……」
思わず声を出すも、
「あさひ!! いい加減にして!!」
佐伯さんが怒りを帯びた声を上げ、その男を両手でぐいと押しのけた。
俺に目をやりながら佐伯さんが続ける。
「私たち双子なんです!」
「双子……? いや、でも流石に一緒に風呂は……」
食い気味に佐伯さんが続ける。
「女なんです!! この子こう見えても」
「え……?」
そう言われて見れば見えないこともないし、顔も似ているような……?
「私たち二卵性だからあまり似てなくて。
父親似と母親似っていうのもあるし」
佐伯さんが話し始めるも、あさひは何も言わずこちらを睨んでくる。
ため息混じりに佐伯さんが話す。
「いつも彼氏が出来るとこうやって邪魔したり試したりしてくるんですよ……」
「心配だからだろ!! お前いつも変なヤツに好かれるじゃないか!!」
何気にあさひが言う言葉に若干傷付く。
佐伯さんは気まずそうな表情を浮かべた。
ちょっと……嘘でもいいから否定して欲しい……




