60 私の執務室
「ここが私の執務室ですか」
木材が活かされた優しい感じの部屋で、王弟殿下の執務室と雰囲気が似ている。
案内をしてくれたのは、王弟殿下の侍女マーキュリーさんだ。彼女には、何かと世話になっており、今では、お手本にしたい大人の令嬢の一人となっている。
「フランソワーズ様の侍女は、私たちが兼務いたしますので、なんなりと申しつけて下さい」
これまでも、マーキュリーさんは、私の侍女であるかのような働きをしてくれている。
実は、カゲで私を守ってくれていた。
紫の瞳を持つ侍女から教えられなければ、気が付かなかったけど。
そういえば、マーキュリーさんではなく、マーキュリー女男爵になったんだ。まぁいいか。
「フランソワーズ様、早速ですが、第四の派閥に加わりたいと、貴族たちが押し寄せてきてます。面会を許してもよろしいですか?」
マーキュリーさんが私の指示を待っている。私が主人になるのか……緊張する。
「私の派閥に加わるなんて、珍しい貴族ですね。分かりました、来るもの拒まずです」
また面会か……たいした人数ではないだろう。
◇
「私たちは、フランソワーズ様に忠誠を誓い、第四の派閥に加わります」
予想に反して、けっこう多くの貴族が、第四の派閥へ参加を表明した。
聖なる水の時に、さらに聖女降臨の時に、密かに忠誠を誓った貴族たち、クラスで私を心配してくれていた友達の親など、私は、これほどの人たちに影響を与えていたのか。
やっと一段落したので、自分の執務室で一息つく。
「多くの貴族が加わりましたね。いったい何名だったのかな」
「軽く見ても、貴族院の過半数を超えています。最大派閥になりますね」
マーキュリーさんが、お茶をいれながら、答えてくれた。すでに、名簿まで出来上がっていて、机の上に置かれている。
「え! 最大派閥?」
彼女は軽く答えたが、これは大変なことである。
「最大派閥だと、王都の清掃事業を行えるのかな?」
まずは、流行り病の再発を防ぎたい。これは、私のかなえたい願いの一つである。
あれ? マーキュリーさんは、笑って答えてくれない……
「これほどの貴族たちが集まるなんて、裏で女王コノハ様のお力が働いているのでしょうね」
元女王コノハ様の人徳の素晴らしさは、私の耳にも入っている。
私が見習いたい大人の女性、ナンバーワンである。
コノハ様が一声かけるだけで、こんなにも貴族が集結するんだ……引退しても、その統率力は素晴らしい。
そういえば、聖女の役目を、友好国の聖女は『国を勝利に導く者』と言ってたと、サクラから聞いた。まさに、コノハ様のことだろう。
「どうでしょう? 筆頭侯爵様と次席侯爵様は、人徳が無いですから、貴族の皆さんは、コノハ様のような『女傑』を待ち望んでいたのかもしれませんよ」
「女傑?」
コノハ様は男勝りで、知恵と勇気が備わった女傑だけど……私が?
「はい、すべてが、フランソワーズ様のお力だと思いますよ」
マーキュリーさんが、また笑った。
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