49 ため息
「元女王コノハ様から、第一王子との婚約は、延期ではなく、白紙化すると宣言されちゃった」
図書室の王族専用の個室で、サクラに私の進むべき道について相談する。
サクラは、なぜか個室のカギを開けることができる。
「王族との婚姻は、爵位が伯爵以上なんだって」
二人の王子との婚約が無くなったことはうれしいが、悲しい面もある。
「フランは、あんな王子と婚約したかったのか?」
サクラが、少し寂しそうな眼をした。
いや、女性同士でそんな表情をしないで! 勘違いするでしょ。ただでさえ、貴女のパンツのことで、私は接し方に悩んでいるのに。
「父が侯爵を返上した私の爵位は、男爵だよね……どうやったら、伯爵になれるかな?」」
「フランは、フランソワーズ女男爵だ。伯爵になる方法は、伯爵夫人になるか、国王に高価なものを献上するくらいかな」
サクラは冷静に答えてくれた。彼女は、たぶん、王弟殿下と婚約するので、爵位を秘密にしているが伯爵以上だと思われる。うらやましい。
「伯爵以上……政治的なバランスなのか……貴族への示しなのか……私の関係ない所での話に、巻き込まれちゃったなぁ」
ため息ひとつ……私は、今後どうするべきなのだろうか。
私が侯爵令嬢であれば、第一王子の後ろ盾である筆頭侯爵の派閥と、父の中立派の派閥が手を結ぶことによって、貴族院の過半数を得て、第一王子が国王になっても、政治は安定する。
しかし、父のエメラルティー侯爵は、爵位を返上したと聞く。中立派を取りまとめる長でもあったのに、これからの、中立派の結束はどうなるんだろう。
もしも、私が第二王子と結ばれたら、イライザが第一王子と結婚して……
第二王子の後ろ盾である次席侯爵の派閥と、父の中立派の派閥が手を結ぶことになり、第二王子が貴族院の過半数を得て、いずれ国王となる第一王子と敵対してしまい、政治は不安定になる。
仮にだ、一代男爵である私が王族に嫁ぐ前例が出来れば……今後、王族との結婚を希望する令嬢がたくさん手を挙げ、足の引っ張り合いが始まり、これまた政局が安定しなくなる。
「私の行き先は、修道院しかないのかも」
考えるほど、私の先行きは不安だらけだ。
「いっそのこと、王国を捨てて、国外に逃げようかな」
冒険者みたいな生活も、面白いかもしれない。
「独り言にしては、声が大きいな」
サクラが、ツッコミを入れてくれた。
「サクラは、王弟殿下が爵位を捨てて、平民と婚約するとか思わないの?」
私の突飛な質問に、彼女は固まった。これは、思ったことなどないようだ。
「お、王弟殿下は、国を捨てることはない」
「だよね、私もそう思う。だから、私も国を捨てないよ」
兄さまは国を捨てない。私も捨てない。これは二人をつなぐ約束だから。
「ねぇ、来訪される友好国の聖女って、瞳は宝石のような紫色なの?」
サクラは、友好国からの留学生だ。自国の聖女のことは、よく知っているはずだ。
「宝石のように美しいが……紫色ではない」
そっか、何色なんだろ? 土曜には分かるか。
「フランの瞳の色なんだが、普段は美しいエメラルドのような青緑色だが……あのマジックの時、ローソク魔法の下では、魅力的な紫色だったよな」
サクラが、私の触れられたくない秘密にしていた話をしだした。やはり、彼女は空気を読まない。
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