45 第二王子のハーレム
「王弟殿下の執務室って、なんだか落ち着きます」
王弟殿下の執務室は、木材が活かされた優しい感じの部屋で、王宮のピカピカに装飾された派手な様式とは違う。
「古臭い家具ばかりだぜ?」
サクラはそう言うが、温かみのある部屋だと、私は思う。
「温かみのある……そうよ、これは愛情の温かさなのよ」
少し興奮してしまった。家具に込められた愛情、子孫に家具を残す愛情……そんな温かさを感じた。
「フランソワーズ様、面会を希望する貴族が、まだ押しかけてきています」
元女王コノハ様との謁見を終え、ゆっくりとお茶でも飲もうかと、王弟殿下の執務室に戻ったが、休んではいられない状況だった。
◇
「フランソワーズ様の『聖なる水』で、大切な人の命が救われました」
「聖女降臨の奇跡も、フランソワーズ様のおかげだと聞いております。感謝の気持ちでいっぱいです」
「この恩は、孫子の代まで伝え、密かにではありますが、フランソワーズ様への忠誠を誓います」
たくさんの貴族が押し寄せた。筆頭侯爵の派閥、次席侯爵の派閥など、派閥の壁を越えて、私への忠誠を誓う……まぁ密かにだけど。
◇
「フランソワーズを、僕の聖女ハーレムに加えることにした」
感謝の列が一段落したと思ったら、第二王子が勝手に部屋に入ってきて、壁際に立っていた私に、壁ドンした。
「王弟殿下の侍女たちも、聖女ハーレムに加える。どうだ、素晴らしいだろ」
顔が近い、きもい、離れて欲しい。
「スパン!」
第二王子が吹っ飛んだ。
「ガキが!」
隣の控室で侍女となにやら話し合っていたサクラが、仁王立ちで「ハリセン」を手にしていた。
この行動力に、私は憧れている。自分の思うがままに、くだらない貴族を張り倒してみたい。サクラのように……
「王弟殿下の侍女たちは、全て既婚者だ」
サクラの言葉に、第二王子が固まった。
「いやまて、僕は既婚者でもかまわない。そうだ、多少の障害は乗り越えるぞ」
どこまでクズなんだ。サクラが、もう一発張り倒そうとした時……
「騒がしいぞ!」
元王女コノハ様が部屋に入ってきた。
「友好国の聖女の来訪が、週末の土曜日に決まったことを伝えに来たのだが、なんだこの状況は」
女王コノハ様の眼光が鋭い。謁見した時以上だ。
「第二王子、女王コノハ様も聖女だと言われていますよ」
私は、余計なことを言った。もちろん、ワザとだ。
でも、コノハ様は、本当に、聖女なのではないだろうか?
「女王コノハ様、僕と婚約してください。聖女ハーレムに加えます」
予定どおり、クズは、クズらしく行動した。
「スパン!」
第二王子が吹っ飛んだ。
「クソが!」
元女王コノハ様だ……コノハ様の紋章が入った「ハリセン」を手にしている。
これら「ハリセン」は、王族ご用達なのだろうか?
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