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永遠の未完作品  作者: 夜桜詩乃
6/9

手のひら

 さて、君たちはコレが夢であったほしいと思ったことはあるだろうか?

 俺も昔は結構あったし、今でもたまにあるが……。

「おい、神谷。ちょっと面貸せよ」

 今ほどそう思った事はない。


 時は遡り、五時限目。

 俺はあの地獄と天国のような昼休み……地獄はあの重箱で天国はあの料理が美味かった事だ。まぁ、それをどうにか乗り越えて午後の授業を受けていた。

 普段であれば、この時間は寝ているはずなんだが、あの重箱のせいで腹がいっぱいすぎて逆に寝れないという謎の現象に襲われていた。

 そして、事件が起こったのは五時限目の休み時間だった。

「おい! 廊下に何か貼りだされているらしいぞ!」

 クラスメイトの誰かが言った瞬間にクラスメイトはそれを見るために次々と教室を出ていく。

 そして、最近……というか、今日色々と巻き込まれまくった俺は何だか嫌な予感がしてならなかった。

 また、飯島が何かをやらかしているんじゃないか?

 もしかして、また俺が巻き込まれてるんじゃないか?

 そう言った恐怖心に耐えながら自分の席に座って神に祈っていた。

「神谷君」

 そんな時、悪魔の声が聞こえた。

「大丈夫、今は私と貴方しかいないわ」

 飯島の声に祈っていた顔を上げて周りを見渡してみると、確かに俺と飯島を除いてだれも教室に居なかった。

 何やら、廊下のほうで怒声や悲鳴が聞こえる気がするが、努めてスルーする。

「俺に何か用か?」

「神谷君、すぐに逃げることをおススメするわ。状況はハッキリと言ってかなり不味いわ」

 飯島が本を読んでいるフリをしながら、俺にそう言ってくる。

「どういう事だ?」

「まず、今廊下に貼りだされているのは新聞部が貼りだした新聞よ。そして、そこには私と神谷君が一緒に屋上でお昼を食べている姿が激写されているわ」

 oh……なんてこった。

 終わったわ。コレ、完全に終わったわ……!

「だから、すぐに……もう遅いみたいね」

 飯島の言葉通り、どうやら俺は完全に逃げるタイミンウを失ったらしい。

 教室に何だかガタイがいい連中が入ってきて、真っすぐに俺に向かってくる。


 そして、冒頭に戻る。


「い、いやぁ……ちょっと面を貸す理由が見当たらないなぁ」

 俺はどうにかこの場を凌ごうと笑って誤魔化そうとするが、相手は俺の胸倉を掴んで強引に立たせてくる。

「お前に無くても、俺たちにはあんだよ。昼休みになにをしていたか……キッチリバッチリ聞かせてもらおうじゃねぇか?」

 ん~、やっぱり詰んだ臭いぞぉ~!

 助けを求めて周りを見渡してみても、誰もが俺に敵意がある視線を送ってくるだけだった。

 視線で人を殺せたら、俺はもう何百回も死んでいるだろう。

「まぁ、待て。放課後でもいいんじゃないか? もうすぐ六時限目が始まるだろ」

 時計を横目で確認すると、六時限目開始まであと1分を切っている。

「安心しろよ。先生方にもちゃぁんと許可をとって六時限目はお前のごうも……事情聴取に使っていいとさ」

 おいいいいいいい!

 担任、何を許可してんだよ! ここ学校だろ!?

 てか、今拷問って言おうとしてたよね!?

「そ、そうなんだぁ……困ったなぁ……」

 これは本気でやばい。

 まず、俺の命がやばい。

 次に俺の命がやばい。

 最後に俺の命がやばい。

「……」

 逃げ場はなし。

 よくよく教室の入り口を見てみると、担任が立っていた。

 その目は完全に犯罪に手を染めた生徒を見る目だった。

「そうか……」

 まぁ、気持ちはわかる。

 飯島はこの学校きっての超優等生であり、金持ちの娘だ。

 そんな飯島に何かあった場合、責められるのは学校側だし、何より飯島がいいところに就職なり進学してくれれば学校にも箔が付く。

 つまり、俺は邪魔者なんだ。

 俺から関わったわけじゃないのにな……。

「それで、俺はどこに連れていかれるんだ?」

「なぁに、ちょっと体育館にだよ。大丈夫だ。みんなもう待ってるぞ」

 俺が急におとなしくなったことで自分が上を取ったと思った男はニヤリと笑った。

「それは、怖そうだ」

「大丈夫だ。痛いのは一瞬だって本に書いてあったぜ」

 痛い思いをするのは、確定なんですかね?

 ふと、そこでこちらを横目で見ていた飯島が立とうとしているのが目についた。

『動くな』

 俺はアイコンタクトで飯島にそう告げる。

 飯島は何か言いたそうにしていたが、俺の目力に圧倒されて立とうとするのをやめた。

「てめぇ、何飯島さんにガンつけてんだ!」

 一瞬、何をされたかわからなかった。

 だが、頬に鋭い痛みが走った事で殴られたんだと俺は理解した。

「はぁ……」

 さて、材料は揃ったな。

 そろそろ、俺もやられっぱなしというのも癪だし反撃に出るとしよう。

「さて、お前は今俺を殴ったわけだが」

「それがどうした?」

 俺は、ポケットから携帯を取り出した。

 そこには、ポケットの中で打ち込んであった『110』の文字。

「バカなお前はコレが何だかわかるか?」

「は……?」

「まず、お前は俺を脅迫した。続いて殴ってきた。コレはれっきとした犯罪だ」

 男は俺がいきなり何を言い出しているのか理解できずにいるらしい。

 畳みかけるなら今だ。

「ちなみに、そこの担任も同罪だぞ。学校の教師という立ち位置でありながら『イジメ』を止めずにむしろ助長した」

 俺の言葉に担任は青くなっていく。

「だ、だが……誰もこのことを認めないはずだ!」

 そこで、一人の生徒が叫び声をあげる。

 確かにそうだ。

 ここに居るのは全員、俺の敵だ。

 誰もこのようなことがあったとは認めないだろう。

「いいえ。私が証言するわ……勿論、あなた達全員共犯よ」

 凛とした声が教室に響く。

 誰かは言わずともわかる。飯島だ。

「私が、そこの神谷君に集団リンチにあいそうだったと警察に証言するわ」

「な……い、飯島さん……」

 周りは飯島がこちらについた事に驚いているらしい。

「全く、飯島さんに料理の味見を頼まれたから、それに協力しただけなのにこんな目にあったらたまらないぜ」

 俺は、わざとらしく。

 大声でそう言った。

 それを聞いて、クラスはざわつき始める。

 そう、ココだ。

 お前たちの逃げ場はここしかないぞ?

「そ、そうだよな!」

「俺は最初からわかってたぜ!」

「だ、だよね~!」

 一人を皮切りにこちらを睨んでいた生徒達が目をそらしながら手のひらを返していく。

 ほら、人間は醜い。

 すぐに自分の保身に走るんだからな。

「それで? お前はいつまで掴んでいるつもりだ?」

 俺は胸倉を掴んでいる男の腕をつかむ。

「わ、わかってるよ……」

 男は俺の胸倉を離す。

 俺は襟を正しながら、担任を見つめる。

「それで? コレは一体どういう意図があったんですかねぇ?」

「そ、それは……そ、そうだ! 生徒の自主性に任せたんだ! だが、殴るのはやりすぎたな!!」

 俺に見つめられた担任はそう言って、俺を殴った生徒に後で生徒指導室に来るよう伝えてそそくさと出ていこうとする。

「あ、先生」

 それに対して、俺は待ったをかけた。

「六時限目の授業、お願いしますね?」

 先生は俺の言葉に何回も頷いてそそくさと出て行った。

「ふぅ……」

 俺は自分の席に座って、外を眺めた。

 きっと今頃は体育館に集まっていた生徒も全員教室に戻されているだろう。

 俺も学校で色々と居づらくなるかもしれないが……まぁ、それは別にいいさ。

 どうせ、俺、ボッチだし。

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