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第67階層 とにかく合体してみよう

雫「○○合体! とかやった方がいいかな?」


 先生から新しい合体の草案とやらを受け取り、読み進めていく。

 緊張した面持ちの先生と、この後どうなるのか気になっているエリアス達を前に、草案を読み終えたら大きく息を吐く。


「先生、新しい合体については評価します。これなら以前の合体より良いでしょう」

「でしょでしょ!」

「とういう訳で、そこの床に正座してください」

「なんでっ!?」


 理不尽だとでも言いそうな先生に、命令と呟いて強制的に床へ正座させる。


「合体の仕方については本当に良いです。とても評価できます」


 今回の合体案は二体の魔物のうち、一体が複数に分裂し、もう一体の武器として武装されるというものだ。

 これならわざわざ両方が変形する必要は無いし、合体時の接合箇所の調整も短く済む。

 わざわざ図説まで入れたそれを先生へ向け、気になった箇所を指差す。


「合体について文句はありません。でもどうして、武装する武器がロケットランチャーにマシンガンにガトリングなんですか!」


 先生の考えた合体は、分離側のゾンビの両脚が手持ち式のロケットランチャーに、上半身は合体される側の背中に合体し、前に向けて出された腕は肘を曲げて肩に手を置くような感じになり、曲がった肘の先からはマシンガンとガトリングの発射口が現れる。

 最後に頭部が少し変形してヘルメットのように装備されるとある。

 それぞれの武器から発射されるのは魔力により作られた砲弾や弾丸だから、連射もできるし当たった後は魔力に戻って霧散するから後始末の必要が無い。

 そういった点への配慮はできているのに、どうしてこう現代武器を作りたがるのか、その理由を問い詰めたい。


「えっと……火炎放射機やレールガン、レーザーの方が良かった?」

「そういう問題じゃありません。俺が聞きたいのは、何故現代兵器を再現したいのかです」


 ダンジョンを攻略されたくない俺としては、強力な武器があるのはありがたい。

 でも、どうしてこういった武器を作りたいのか、理由は聞いておきたい。


「私達の世界の武器が、異世界でどれだけ通じるのか気になって……」


 視線を逸らしながらの回答に対し、反応に困った。

 自分達の世界の技術や知識が、異世界でどれだけ通用するのかは気になる気持ちは分かる。

 俺だって、自分なりに考えて築き上げたダンジョンがどれだけ通用するのかは、今も気になっている。

 だからこそ、頭ごなしに否定して怒ることができない。

 それにダンジョンを攻略されないように強化するという点では、これらの武装はとても役立つだろう。

 第一、自重はしろと言ったけど、こうした物を作るなとは一言も言っていない。


「はあ……。分かりました。そういう気持ちは分からなくもないんで、これ以上は何も言いません」

「ホント!?」

「ええ。これについても許可しますが、今後は限度を弁えて下さいね」


 でないと通路へ配置しづらいし、訓練で被害が出かねない。


「任せておいて!」


 自信満々に言うけど、どうにも信用しきれないから任せきれない。


「香苗と戸倉は引き続きチェックを頼む。やり過ぎたのがあったら、遠慮も躊躇も迷いも無く没にして、食い下がってきたらハリセンの使用を許可する」

「よっしゃ! 任せとけ」

「私にとって柊君の指示は絶対だから、覚悟してね」


 直後に先生が絶叫したけど無視した。


「新しい合体の実験は明日やろう。ということで、この話はここまでにして夕飯にしよう」


 手を叩いて夕食を促すと、当番のミリーナとフェルトが台所へ向かう。

 既に下準備はできていたのか、すぐにいい香りが漂ってきて空腹を刺激してくる。

 全員が席に着いての食事は定休日の定番と化していて、普段は司令室勤務の関係で全員揃わないから、こういう時間は貴重だ。


「はあ……やはりコーンコロッケは至高です……」

「いやいや、やはりメンチカツです! こんなにお肉がぎっしりなんですよ!」

「前にマスターヒイラギから教わった、コロッケパンにしてみますか」

「パンのお代わりあるっすか!」


 食事ほど趣味嗜好が分かりやすい行為は無い。

 おかずのメイン、数種のコロッケとメンチカツを前に、皆が思い思いに食べている。


「ところでマスター。サトウさんの草案を見ましたが、魔物は何を使うんですか?」

「分離場所が関節だからな……。ヴァーチとアグルでいってみるか」


 どっちも以前に作ったダークネスゾンビで、生み出してから今日まで生き残った強者だ。

 新たに魔物を準備してもいいけど、既に鍛えた奴らを合体させたらどうなるかという、個人的な探究心もあってこの二体を選択した。


「ということは、ゾンビがロケランとかマシンガンを撃ってくる」

「そういった攻撃を浴びる側のゾンビが、逆にそういった武器を相手へ浴びせるのね」


 戸倉の発言に先生が続き、その光景を想像する。

 逃げる侵入者へロケットランチャーを撃って、マシンガンやガトリングで虐殺するゾンビか……。

 元の世界に例えるのなら、ゾンビの逆襲とかそういう感じなるのかな。


「そんなダンジョンになる前に捕まって良かったぜ……」

「ロケットランチャーがどんな物か分からないけど、怖そうだから挑みたくない……」

「同じく意味は分かりませんが、無理だと思います」


 香苗とフェルトとミリーナの気持ちは分かる。

 いくら金を積まれようとも、そんなダンジョンには挑みたくない。


「ところで、一つ質問があるのですが」

「なんだ?」

「今回のような武装をする合体の場合、どちらか一方をゴーレム化すれば、もう一方はゴーレム化する必要は無いのでは?」


 ああ、武装するだけだから武器を持ったり、鎧のように装着されたりすると思っているのか。

 言われてみれば、武装の仕方によってはそうなるな。

 だけど今回はそうはいかない。


「いや、今回は必要だ。火力重視で背中に装備を背負う以上、ゴーレム化して接続機能を備える必要がある」


 でないと、背中にマシンガンとガトリングを背負えない。


「だけど武装の仕方次第ではいけそうだから、それも明日試してみよう」

「そうですか。お役に立てて良かったです」

「でしたら、私も一つよろしいでしょうか?」


 隣の席に座っているエリアスが控えめに手を挙げた。


「今のラーナさんの質問から思いついたのですが、鎧状になる魔物を作って侵入者へ強制合体。操って味方を攻撃させる、というのはどうでしょう?」

「そういうの、何かの戦隊で見た覚えがあるわ!」


 確かに、薄っすらとそういうのを見た記憶がある。


「ですが侵入者に意識が有るので、何かの拍子に支配権を奪われませんかね?」

「育成スペースに入れても平気でしょうか?」

「そもそも、強制合体は可能なのかな?」


 エリアスの提案に色々な意見が出ては、皆が難しい顔をして考える。

 こういうことが自然に出来るほど、物怖じせず意見を出し合って話し合えるのは良い事だ。

 結局エリアスの提案は、問題点が多々あるのと、その解決方法が出なかったため却下になった。


「難しいものですね」

「おうだな。だけど、こうして問題点を指摘して、解決方法を一緒に考えてくれる仲間がいるのは、いいもんだろう?」

「ええ、そうですね」

「ふふふ。この調子なら、いつかは巨大ロボへ合体する魔物だって……」


 ……今聞こえた先生の呟きは、聞かなかった事にしよう。ちょっとだけ見てみたいし。

 この後は特にダンジョンに関する話も無く、式でのエリアスの衣装はどうだとか、ユーリットの初デートはどうだったとかを話して夕食は終了した。




 *****




 定休日翌日の午後、育成スペースにて新しい合体魔物を生み出す実験を開始する。

 予定通りヴァーチとアグルに来てもらい、育成担当のローウィ立会いの下、前回と同様に発案者の先生と合体魔物の作成に挑む。


「先生、アグルは頼みます。くれぐれも、余計な事はしないでくださいね」

「分かってるわよ。でも、その、やっぱり私がやらなきゃダメ?」

「発案者としての責任と思ってください」

「頑張ってください、サトウさん」


 ゾンビに触れる事が嫌なんだろうけど、我慢してもらおう。


「じゃあ、いきます」

「うぅ……」


 腰が引けながら手を伸ばす先生の隣で、ヴァーチを合体魔物へと変化させるため、魔心晶へ触れてイメージをしながら魔力を流す。

 魔力を流すのが随分とスムーズになったから、ひょっとしたら魔力操作に関するスキルを手に入れているかもしれない。おっと、イメージイメージっと。

 そうして魔力を流し続け、ヴァーチはダークネスゾンビゴーレムとなった。


「よし、できた」


 魔石盤で変化を確認していると、隣で光が発生してアグルを包む。

 やがて光が収まると、アグルもダークネスゾンビゴーレムへと変化していた。


「ちゃんとできてる?」


 すぐにでも手を洗いたそうな先生に、魔石盤で確認して完成していると告げると、手を洗って来ると言い残して水場へ駆けて行き、手を洗いだした。

 今度から何か罰を与える時は、ゾンビ系魔物の武装化や変形魔物化を頼もうかな。

 いや、仕返しに変なことされたら困るからやっぱりやめておこう。

 それよりも、ヴァーチとアグルの合体だ。


「ヴァーチ、アグル、いけるか?」

「いけます」

「問題ありません」


 喋りが流暢になった二体から了解を取り、合体実験を始める。


「よし、いけっ!」

「「合体!」」


 合体の声と同時にパンタイガーゴーレムの合体同様、障壁が展開されて二体がその中で合体する。

 装備される側は身体能力上昇のスキルがあり、体格的にも優れているヴァーチ。

 装備する武器側になるのは、複数種類の魔法を使えるアグル。

 分裂したアグルの体がヴァーチに装備されていき、完成したのは今にも銃器を撃ちまくってジェノサイドしそうな雰囲気の、草案の図説通りの重装備ゾンビになった。


「やった!」

「おぉ……図で見るよりも強そうですね」

「えさとて、詳細は……」


 新種認定は絶対にされているだろうなと思いつつ、魔石版で詳細を調べてみた。




 名称:ブラストダークネスゾンビ 新種

 名前:ヴァーグル

 種族:アンデッド(ハイゾンビ)

 スキル:拳術 蹴術 身体能力上昇 水魔法 治癒魔法

     暗黒魔法 砲撃【新】 射撃【新】




 うん、やっぱり新種認定された。

 それと新種スキルの砲撃と射撃に、両方とも闇魔法を持っていたからか暗黒魔法を使えるようになっている。

 新種認定はともかくとして、スキルに関しては予想外だった。

 特に砲撃と射撃は、こんなスキルがあるのかという感じだ。


「よし、訓練用の的を用意してくれ。それと場所を開けてくれ!」


 見物していた魔物達へ指示し、的を用意させて距離を取らせる。

 準備を整えて試し撃ちをさせると、砲撃と射撃の二つのスキルのお陰か全弾命中。

 しかもロケットランチャーはアビーラ特製の頑丈な的を破壊したから、俺とローウィと周囲で見物していた魔物達だけでなく、撃ったヴァーグルですら驚いていた。

 唯一驚いていないのは、よしっ! と言って小さくガッツポーズしている先生くらいだ。


「す、すごい威力ですね。でも余波があれくらいなら、通路でも使えそうですね」


 まあ威力の高さは置いておくとして、ローウィの言う通り余波はそれほどでもないから通路内で使っても問題無さそうだし、良しとするか。


「さあ、もう一つの実験もするぞ」


 もう一つの実験はラーナから出た、武装化なら両方を合体魔物化する必要が無いのでは、という意見の実証実験だ。

 そのために用意した魔物は、シャード―ガーゴイルとヒートスコーピオンの二体。

 既に合体後の姿も考えてあって、分裂して装備になるのがヒートスコーピオンで、それを装着するのがシャドーガーゴイル。

 よって分裂する側のヒートスコーピオンだけを合体魔物化して、ヒートスコーピオンゴーレムへと変化させる。

 あとは合体が上手くいくかどうかだな。


「じゃあ合体、いってみよう」

「ガァッ」

「ギィッ!」


 二体が鳴き声で合体と叫ぶと、ヒートスコーピオンから障壁が展開され、シャドーガーゴイルごと二体を包み込む。

 今までは二体の合体の声に応じて双方から障壁が展開されていたけど、今回のはヒートスコーピオンが双方を包み込むようにした。

 障壁の強度に影響が出ていないか、強めの雷魔法を放ったりローウィが物理攻撃をしたりしながら、合体の様子を見守る。

 両腕と尻尾が外れ、胴体が複数に分裂するとそれぞれが鎧の形状に変形し、シャドーガーゴイルの両腕と両脚、胴体に頭部と装着されていく。

 さらに尻尾は先端に毒針のある鞭として右手に握られ、両腕の鋏は鎧の背中部分と接合し、鋏が開いて中からバルカン砲の発射口が現れた。

 うん、合体は成功だ。

 両腕は鎧との接合にすることでシャドーガーゴイルをゴーレム化する必要を無くし、遠距離用のバルカン砲を装備できた。

 鞭の先端にある棘は勿論有毒で、バルカン砲と魔法以外の中距離戦闘用の装備もできた。

 肝心の詳細はどうかな。




 名称:アーマーシャドーガーゴイル 新種

 名前:なし

 種族:悪魔

 スキル:影魔法 闇魔法 火魔法耐性 身体能力上昇

     毒 奇襲 射撃




 どっちもそれなりに鍛えたのを使ったから、能力もスキルも文句は無いし、こいつも射撃スキルを習得している。

 ただ、あくまで砲撃スキルや射撃スキルは合体中限定みたいで、合体を解除させたら両手の鋏の中からバルカン砲を撃てる、ヒートスコーピオンゴーレム以外はスキルを失っていた。

 暗黒魔法も闇魔法に戻っているし、合体によるスキルの増加や統合による強化は研究に値するかもしれない。


「これで今日の合体実験は終了だ。訓練に戻ってくれ。ローウィ、こいつらにはパンタイガーゴーレムを付けて、訓練させてやってくれ」

「承知しました!」


 敬礼して訓練指導へ向かうローウィを見送り、俺と先生もそれぞれの仕事へ移る。

 先生は居住部で掃除、俺は司令室でダンジョン対応。

 席を外している間も特に変わった事はなく、順調に侵入者を撃退しているようだ。

 戦利品や使えそうな死体の回収もされていて、使えなさそうな死体は魔物達に食べさせるかパンデミックゾンビ化してある。

 毎回指示を出さずともそれぞれが考えて仕事をやってくれていると、皆の成長を実感する。

 俺も負けないよう、仕事に取り組もうとしていたら、困った表情のミリーナが司令室にやってきた。


「失礼します。あの、ご主人様、面会したいという方が来ていますが……」

「うん? 今日は誰かと会う約束あったっけ?」

「いいえ。ですが相手が相手でしてどうしたものか……」

「誰だ?」

「それが……」


 ミリーナの口から出た名前は、かつての第四エリアエリアマスター、ヴァルアだった。


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