その22
「……………ルル?」
いつもの彼女なら、抵抗するはずなのに。
自分の唇が彼女の唇に触れる
あとわずかな距離にまで迫っても、
彼女は身じろぎしなかった。
瞬きもせず、ジッと自分を見つめたままだ。
「………………ランジュ様。」
「…………なに?
このタイミングで"待て"は難しいんだけど。」
「……………ランジュ様は、
そんなにわたしのことが好きなんですか?」
「?
ずっと言ってるよね?好きだって。」
「そ、それは!
玩具としての好きであって、
恋愛感情の好きではないですよね?!」
「は?
恋愛感情で好きじゃない人間に
結婚してくれなんて頼むことある?」
「え?だ、だって!
どう考えてもおかしいでしょ?!
好きな子にあんなひどいことします?!」
「するよ。現にしたし。なんならこれからもする。」
「………………………………。」
ポンっと頬が赤くなったルルーシアを、
ランジュは今さら?と不思議そうな顔をする。
どうやら自分が植え付けた恐怖心は、
ただの純粋な恐怖として彼女の中に記憶されただけで、
自分を忘れないようにする為だったなどとは
微塵も思われていなかったのかと心境は複雑だ。
「とりあえず、もういい?キスしたいんだけど。」
「!!
だっ、だめですっ。無理!!」
そこでようやくランジュとの近さを自覚したルルーシアは、
自分の手のひらを彼の唇に押し当てる。
もちろんキスされるのを防ぐ為だったのだが、
そのことに眉を顰め、
『気に食わない。』と表情を歪めたランジュに、
「?!」
ガリッと手のひらに歯をあてられ、
思わず彼の唇から手を離してしまう。
「こ、こういうところですよ?!
好きな子に痛いことするなんておかしいでしょ?!」
「おかしくないよ。それが俺の愛情表情だから。
……………それより。」
「!?」
「おとなしくキスさせてくれないなら、
今度は唇に噛み付くけど、いいの?」
「ヒッ………!」
小さな悲鳴をあげたルルーシアの唇は、
あっけなくランジュの唇に塞がれてしまう。
前回同様、息継ぎをする隙も与えてもらえないそのキスに、
"だからこれのどこが愛情表情なの?!"
と、ルルーシアは心の中で悲鳴をあげ続けたのだった。




