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その愛、猟奇的につき。  作者: ようかん
19/26

その18



「ねぇ、エマ。正直に言って?

 知ってたんだよね?知ってて騙したんだよね?!」

「……………………違うわよ。」

「じゃあなんでこっち見ないの?!

 さっきから全然目合わせないじゃん!!」


ギャーギャーとエマに抗議するルルーシアを、

ロイドは微笑ましい、といった表情で見つめる。

………この子がランジュの。

自分の右腕とも呼べる男の想い人は、

たしかに可愛らしい見た目の童顔の女の子だった。

先ほど挨拶を交わした際は

彼女は引き攣った笑みを浮かべていたが、

たぶんそれは自分に対してではなく

自分の隣にいる男の存在のせいだろう。


「ルルーシア、でいいんだよね?

 今回は司書の仕事を引き受けてくれてありがとう。」

「えっ?

 あ、いや、まだ承諾してな……………。」

「ちょうど探してたんだよ、多言語に詳しい子。

 きっと図書館の司書達も喜ぶよ。」

「…………あの、王子殿下。

 申し訳ないのですがその話は保留で…………。」

「しかもこんなに可愛い子が働いてくれるなんて、

 図書館も賑やかになるだろうなぁ。

 もちろん給金は出すし、休みもしっかりしてるから。」

「いや、だから。まだ働くなんて一言も…………。」

「図書館は王城の敷地内に併設されてるし、

 エマも王城で働いてるから安心でしょ?

 もちろんご両親にはこちらから伝えておくよ。」

「…………ですから、わたしはまだ。」

「なにか心配な事でもある?

 図書館の司書はみんな優しいから大丈夫だよ?

 歳はルルーシアより上の人間ばかりだけど、

 こんなに可愛い子なら大歓迎だと思うし。

 エマや俺も時々顔を出すようにするし、

 もちろんランジュも…………。」

「すみません!お断りします!」


キッパリ言い切って、

ルルーシアは座っていたソファーから立ち上がる。

だがすぐにエマに腕を掴まれ、再びストンと座らされる。

裏切り者め………!!とエマを睨んでみるが、

彼女はどこ吹く風といった顔で気にもしていない。


「………………ルル。」

「!!」

「なにがそんなに嫌なの?

 昔から本を読むのは好きだったよね?

 今まで身につけてきた言語も役に立つし、

 ルルにはピッタリの職場だと思うけど。」


突然話しかけてきたランジュに

『あなたが近くにいるのが嫌なんです。』と

さすがに面と向かって言う勇気はなかったが、

ここで断らなければ地獄を見るのはわかっている。

ルルーシアはランジュの方を見ないようにしつつ、

ロイドに断りを願い入れる。


「し、司書として働けるのは大変魅力的なお話ですが、

 やっぱりわたしには無理だと思います。

 他国の言語について詳しい方は他にもいるでしょうし、

 なにより自分は、この国に長く滞在する気は…………。」

「ルル。それは言わないでおいた方がいいわ。」

「へっ?なんで?

 だって働いたとしてもすぐに辞める…………。」

「"永久"に働ける職場って貴重よ?

 今は女性も外で働く時代だし、

 一日中屋敷に閉じこもってても退屈でしょ?」

「そ、それはそうだけど…………

 でも働くなら王城から離れたところで…………。」

「図書館ならご両親も安心だろうし、

 ランジュ様が言ったように本は好きでしょ?

 私も王城で働いてるんだから、

 時間を合わせれば一緒にランチも出来るわ。」

「そ、それは嬉しいけど、

 それよりもわたしはこの悪………。」

 

この悪魔と離れたい。

そう言いかけてルルーシアは、グッと言葉を詰まらせる。

………危ない。うっかり本音を口にするところだった。

先ほどからヒシヒシと感じる視線に怯えながら、

ルルーシアはエマをジッと見つめる。


「ごめんね、エマ。

 せっかく話を持ってきてもらって悪いけど、

 わたしはやっぱり司書としては働けない。

 ほかにもやりたい事はあるし、

 でもそれは、ここにいたら出来ないから。

 …………王子殿下も申し訳ありません。

 やっぱりこの話は無かったことにさせてください。」


ペコリと頭を下げ、

謝罪の言葉を口にしたルルーシアは、

今度こそ部屋から退出しようと思ったのだが。


「……………それじゃあ、

 やっぱり俺の婚約者になろっか、ルル。」


その恐ろしい一言に、

顔を上げようとしたルルーシアは動きを止める。

もはや顔を上げる勇気はない。

かといって反論しないわけにもいかない。

迷った末、おそるおそる顔を上げてみれば。


「司書として働かなくても、

 ルル一人ぐらい俺が養ってあげるよ。」

「ヒッ………。」


悪魔の表情を浮かべ、愉しそうに提案する彼の姿があった。



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