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その愛、猟奇的につき。  作者: ようかん
14/26

その13



「…………何があったかは聞かないでおくわ。

 とにかく無事に帰れてよかったわね、ルル。」


そう言って生暖かい目で自分を見つめる友人を、

ルルーシアは少しだけ憎らしげに見返す。

………人の気も知らないで。

本当に死ぬかと思ったのに、いろんな意味で。


「それよりルル、あなた今朝の新聞は見た?」

「新聞………?まだ見てないけど。」

「ご両親にも何も聞かれていないの?」

「…………特には。…………あ、でも、

 なんか二人とも朝から微妙な雰囲気だったかも。」


朝、パーティーでの騒動とランジュのせいで

ヘトヘトになりながら起きてきたルルーシアを、

両親は微妙、というか、

先ほどのエマのように生暖かい目で迎えてくれた。

パーティーでの騒動のことは

両親の耳にも入っているだろうと覚悟していたが、

二人がその事について何か言ってくる気配はない。

じゃあ他になにが、と不思議に思うルルーシアに


「…………ルル。もう諦めなさい。」

「は?」

「あなたが自由に動き回れる時間は終わったの。

 ………残念だけど、籠の中の鳥は所詮、

 どんなに足掻いても籠から出られない運命なのよ。」

「お、お母様?

 何言ってるのかわからないんだけど………。」

「きっと大丈夫だよ、ルル。

 ………あの子は昔っからキミ一筋だから。」

「は?え、なに?お父様まで一体なんなの?」


自分達の言っている事が理解できず、困惑する娘に、

それ以上ふたりは何も言わなかった。

いったい何の事だったんだろうかと、

ルルーシアはわからないまま今に至っている。


「………さすがは狡猾公子、もう手を回してあるのね。」

「え?なに、今なんて言ったの?エマ。」

「なんでもないわ。

 それより、新聞は見ておいた方がいいわよ?

 まぁ見てないと思って持ってきてあげたから。」


はい。とエマに新聞を手渡され、

ルルーシアはワケもわからず素直に受け取る。

普段から新聞は見るようにはしているが、

そんなに自分が気になる記事でも載っているのだろうかと

折り畳まれた新聞をパラリとめくったルルーシアの目に


「………………なっ。」


飛び込んできた一面の記事は、彼女をア然とさせた。


「…………ど、どういうこと?」

「昨日の騒動のことが書かれちゃったわね。

 ………ベルロット公子の婚約者は、

 ジュリア様じゃなくて本当はアナタだって。」

「へっ、は?あれっ?

 わたし、ちゃんとみんなの前で否定したよね?

 ベルロット公子の婚約者はジュリア様でしょ?」

「ルルは否定したかもしれないけど、

 当の本人のランジュ様は否定しなかったでしょう?

 むしろみんなの前で宣言しちゃったじゃない、

 "こちらのご令嬢が、僕の愛する女性です"って。」

「…………それ、わたしは忘れることにしたの。

 あの悪魔が人間を愛するワケないし、

 同じ悪魔でもない限り絶対に相手なんて無理だと思う。」

「………………………。」

「それに、

 あの悪魔が好きだって変わり者がいるじゃない。

 それならその方にもらってもらえばいいと思う。

 わたしはいらない、絶対に嫌だ。」

「ルルが嫌だって言っても、

 ランジュ様はルルじゃなきゃ嫌だって言ってるのよ?

 あの人から逃げられると本気で思ってるの?」

「逃げるもなにも、

 わたしは公子のただの幼なじみだよ?

 あの人の婚約者はわたしじゃないし、

 それにやっぱり、この国に長くは居たくない。」

「……………ルル。」

「お父様もお母様も反対するだろうけど、

 やっぱりお兄様のところに行こうと思って。

 ここに帰って来る前に相談したときも、

 お兄様は自分と一緒にいてもいいって言ってたし。」

「はっ?!そうなの?!」

「う、うん?

 ………なんでそんなに驚くの、エマ。」

「えっ?!………あ、てっきりアッシュ様も

 ご両親と一緒にいた方がいいって

 言ってるんだと思ってたから………。」

「全然。むしろ寂しそうだったし。

 それによくよく考えてみれば、

 お兄様のそばにいる方が

 外交官の方と知り合う機会は多いと思って。」

「あ、諦めてなかったの?

 外交官と婚約するって話。」

「…………なんで諦めなきゃいけないわけ?」

「だ、だって、

 あのランジュ様がルルを逃がすとは…………。」

「ねぇ、エマ?

 ベルロット公子がわたしをそばに置いておきたいのは、

 べつに人間らしく"愛してるから"とかじゃなくて、

 ただ単に自分が愉しめるオモチャとして

 そばに置いときたいだけって思わない?」

「!」

「現に一度だって、

 わたしはあの人に愛されてると思ったことはないよ。」


そう言ってルルーシアは、プイッとそっぽを向く。

ランジュが自分に向ける感情は愛情ではない、

ただ自分の嗜好を満たすためだけの玩具だ。

もしそれを、彼なりの愛情だと言うのなら、

悪いが自分に受け止められる自信はない。


「エマは王城で働いてるんだよね?

 それならもしベルロット公子に何か言われても、

 婚約者はそのままジュリア様だって伝えてね。」

「はっ?」

「わたしも早いうちにお兄様のところに行けるように、

 お父様たちを説得してみるから。」


そう言ってルルーシアは、エマに向かってニッコリ微笑む。

その笑顔にエマは、若干引き攣った顔を見せた。


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