対応策
中華人民共和国首都北京中南海中央軍事委員会緊急会議室
会議室の空気は、重く淀んでいた。
大型モニターには、東シナ海から台湾周辺海域にかけての状況が、容赦なく映し出されていた。
日本海軍連合艦隊の2個遠征打撃群が、強襲揚陸艦紀伊級とドック型揚陸艦根室級を中核に、台湾島東部の海岸線に向かってゆっくりと接近している。
4個空母打撃群も、その後方から強力な航空支援を展開し始めていた。
趙建国国家主席は、椅子に深く腰を下ろしたまま、モニターを睨みつけていた。
その顔は、まだ先ほどの撤退命令の余波で赤く染まり、目には怒りと苛立ちが残っていた。
指先が、卓上の紅茶カップを強く握りしめ、かすかに震えていた。
「日本が……台湾奪還を本気で狙っているというのか。」
彼の声は、低く、抑えきれない怒りが混じっていた。
中央軍事委員会副主席(上将)が、慎重に口を開いた。
「主席、日本軍の2個遠征打撃群が、台湾東部海岸に向かって展開を始めています。
強襲揚陸艦紀伊級2隻とドック型揚陸艦根室級4隻を中核に、水陸機動師団の部隊を搭載している模様です。
4個空母打撃群も支援体制に入っています。」
趙建国は、拳を強く握りしめた。
「許さん……絶対に許さん。
台湾は我々の領土だ。
13年前にようやく取り戻したものを、今さら日本に渡すなど……絶対に認めん!」
彼は立ち上がり、モニターを指差した。
声が徐々に大きくなり、怒りが露わになっていく。
「即時対策を講じろ!
海軍は一旦後退したが、戦略ミサイル軍と空軍を総動員して、日本軍の上陸作戦を阻止するんだ!
台湾に展開している陸軍にも、即時戦闘態勢に入るよう命じろ!
一歩も引くな!
日本軍を海に叩き落とせ!」
副主席は、深く頷きながらも、現実的な報告を続けた。
「了解しました。
戦略ミサイル軍に対して、対艦弾道ミサイルと巡航ミサイルの集中発射を許可します。
空軍も台湾上空での航空優勢争いに投入します。
台湾島内の陸軍部隊には、既に全師団に戦闘準備命令を出しています。
市街戦・山岳戦を活用した徹底抗戦を指示します。」
趙建国は、荒い息を吐きながら言った。
「良い……。
日本がどれだけ軍拡をしようと、所詮は島国だ。
我々は台湾を完全に支配下に置いている。
地上軍の抵抗と、本土からのミサイル・航空攻撃で、日本の上陸部隊を海に沈めてやる。」
しかし、会議室の空気は重かった。
東部戦区司令員(上将)は、静かに目を伏せながら思っていた。
(……本当に、それで十分か?
日本軍の空母打撃群と、無人機スウォームの連携は、すでに我々の想定を超えている……)
趙建国は、モニターに映る日本艦隊の動きを睨みつけ、歯を食いしばった。
「小日本……
台湾を奪うなど、夢にも思うな。
我々が、必ず叩き潰してやる。」
中央軍事委員会会議室では、国家主席の怒りと、制服組の現実的な対応が交錯する中、台湾防衛のための最終準備が急ピッチで進んでいた。
日本軍の上陸作戦は、刻一刻と近づいていた。




