それぞれの出発08
後半の表現が、重複していたので、修正しました。(;^_^A アセアセ・・・
アギトたちの意見を一切聞いてくれないミトさんをよそに、正体不明の敵?からのいきなりの奇襲にただ驚きを隠せずにいた。そして、ようやく土煙が晴れて視界が見えてくると、なんと目の前にどでかいモンスが現れた。風貌もさることながら見るからに好戦的で、今すぐにでもこちらに向かって来そうな勢いだった。それを証明するかのように、けたたましい唸り声を発し、俺たちに対して威嚇をしてくる。
「こ、こいつ、何に似ているかって言えばイノシシだよね。……サイズがエグいけど‼︎」
パッと見、大型トラックくらいの大きさに見える。そもそも、こんな強大なモンスは見た事がなかった。
「なんで、こんなバカでかいワイルドモンス【少数の凶悪モンスター】が地面に潜っているんだよ⁉︎ 聞いてないよ‼︎」
ゲンキの逆キレのような質問に対しミトさんは冷静に回答した。
「ヤツらは、こうやって『狩り』をしてるんだよ。私たちはちょうど獲物としてターゲットにされたようだね」
「マジか⁉︎」
「つか、トモミはガードに専念しろ〜」
「もうやってるよ」
何がなんだからわからない状態に俺は慌ててしまい、新魔法を使えなかった。普通にレコードをやってしまった。こういう突発の判断が戦闘経験のなさに出てくる。明らかに、用意周到で戦ってきたこれまでとは全然違う。今回ばかりは完全に後手に回ってしまった。
興奮したモンスは完全に俺たちをターゲットにしている。これはもう腹を括るしかない。俺はようやく冷静になれて、記憶魔法【レコード】に変わる新魔法『記憶&解析魔法【スキャン】を発動した。これで敵の行動をレコードより高速にそして短時間で解析する事が出来る。
しかし問題は接近戦だ。まだ接近魔法は完成に至っていない。だから従来通り、モンスとの距離が離れている今こそが罠を放つチャンスだった。
「罠魔法‼︎」
瞬時にモンスを中心に円状に12箇所に罠魔法を配置した。これで少しは足止め出来るはずだ。その間に冷静になれる時間を確保し、みんなとの連携をとる準備が出来ると思った。ところがモンスは御構い無しに口から魔弾を罠めがけて吐き出した。命中したボトムトラップはその衝撃でどんどん破壊されていく。これは完全に予想外な行動だった。これほど簡単に罠魔法が見破られるとは思っても見なかった。
「ヤバい‼︎ こいつはこっちの魔法を探知している」
モンスが放つ魔弾の命中精度は非常に高く、俺の設置した罠は一瞬で半分が意味なく暴発した。
「みんな〜気をつけろ‼︎ こいつはこれまでの敵より強い‼︎」
モンスは御構い無しに立て続けに罠を破壊し、ほぼ俺の発動したボトムトラップを無効化させてしまった。更に俺たちに向かって魔弾を連射してきた。
「トモミ‼︎ガードしろ〜〜」
「だめだ〜1発でガードが崩されかけている。2発目以降が持たない‼︎」
その刹那、モモちゃんを守っていた光の球のうちの一つが、こちらへ向かってきた魔弾を全て防いだ。おそらくこの中で唯一、ゾーン魔法を発動中のモモちゃんだけが、敵の動きに順応している。
「助かったよ。モモちゃん」
「やったネ」
「さすが‼︎」
「でも、とおくてまほうがとどきまちぇん」
「うぅ〜」
……何か、何か策はないのか⁉︎……と考えている暇はなかった。魔弾を打ち終わった後、モンスは間髪入れずこちらへ突っ込んで来た。
それに対しケイの音波魔法もゲンキの弾丸魔法もオサムの反射魔法で応戦するも当たらない。敵の動きの素早さもさることながら、突進は直線ではなく予測不能な蛇行をしながらこちらに向かってくるので、対抗手段が追いつかない。そしてそんな俺たちの攻撃魔法を物ともせず、モンスは突進スピードを緩めない。
「まずい‼︎ ぶつかる‼︎」
「きゃ〜」
「危ない‼︎」
猛突進してくるモンスになす術がなかった。もう目をつぶるしかなかった。
次の瞬間、いつの間にかスタンプ先生が超高速移動でモンスの背後から接近し、後ろ足を蹴っ飛ばした。モンスはその反動でバランスを崩し、俺たちのいる正面ではなく、斜め横に転げ回って飛んでいった。モンスが吹っ飛んだ場所は土煙が立ち上がる。そしてよく見ると自らに威嚇魔法をかけていたようで、さっきより一回り小さい姿のモンスがその場に倒れて気絶していた。つまり見た目に騙されて、まんまとモンスの魔法に振り回されていたのだ。
一瞬、時が止まったかような錯覚を起こしていた。目の前で行われた光景が、リアルなのか夢なのか⁉︎ ……とにかく心が折れてしまった時点から、急転換な現実に理解が追いつかなかった。
スタンプ先生は何事もなかったかのようにスッと立ち上がり、ズボンの裾からお尻にかけて砂埃を丁寧に払っている。その所作を見て、モンスとの戦いが終わったのだと実感した。
「俺たちは……助かった……のか⁉︎」
「いや、あんたらの負けだね」
唖然としているみんなをよそに、ミトさんはそう言い放った。
そんな事は言われなくても、わかっていた。負けというより……完敗だった。正直何も出来ず、心は折れ、最後はあきらめてしまった。
「こういうのをあんたらの前世ではなんて言うか知っているかい⁉︎」
放心状態というかショックの途中で、まだ現状における整理がついていないと言うのに、ミトさんは畳み掛けるように質問してくる。
「……え⁉︎、な、何を言っているんですか⁉︎」
「井の中の蛙って言うらしい。……なかなか理に適った言葉だね〜」
「……」
「どういういみでちゅか⁉︎」
モモちゃんが、質問をした。
「……今みたいなことさ」
アギトは力のないかすれた声で、そう返すのが精一杯だった。




