それぞれの出発06
コンセプト画像が描けました。近々、公開予定ですん('-'*)エヘ
ミトさんの話だとオールドウッズまでは移動魔法を駆使しても結構な時間を要する長丁場の旅だという。ミストラルを出発後、草原を抜け、湿地帯を抜け、様々な珍しい景色が猛スピードで過ぎ去っていく。そんな中、スタンス先生の負担を考え、休憩を挟みつつ移動をしていたが、休憩中でも全員を覆っている膜を解除することはなかった。だからなのか、みんなにはどこか『守られている』という安心感があった。そのおかげで本当に遠足のように雑談話は盛り上がり、会話がいつまでも途切れることはなかった。
ところが2度目の休憩も終わり移動開始したばかりなところで事件は起きる。ミトさんの指示でスタンプ先生は急に移動魔法を止めたのだ。さらに集束魔法も解除した事で全員を覆っていた透明な膜が消えた。浮遊感のあった感触から乾いた砂混じりの地面に足がつくことで外に出た実感を感じる。突然の事でみんなは何が起こったのかわからなかった。
「え⁉︎ ……どういう事⁉︎ もぉ〜ついたの⁉︎」
「いや、まだなんも見えないよ。見渡す限りの荒野だよ」
「ミトさん、これは一体⁉︎」
「何でもかんでも、すぐ質問する癖はやめな。まず質問する前に自分たちで考えな」
いつにも増してミトさんが、冷たく突き放した。
「……まさか、敵か⁉︎」
「うそ、いきなりかよ‼︎ でも、どこに敵がいるんだ⁉︎」
「知らないわよ」
「アギトは早く記憶魔法【レコード】を‼︎」
「もぉ〜やっている」
「で、どうなんだよ⁉︎」
「いや、特に変化はない気はするが……油断はするなよ」
ここにきて、ようやくみんなに緊張が走る。それを見てミトさんが言う。
「取り立てて普通の場所だけど、これがミストラルと外の世界との『違い』なんだよ」
「え⁉︎」
みんながキョトンとした。遠足気分から一転、緊張感が漂う中、ミトさんの説明を理解出来ないでいた。そんなみんなの反応をよそにミトさんは説明を続ける。
「何もないように見える場所でも、ココだと警戒せざるを得ないだろう⁉︎」
「は⁉︎ なんの話⁉︎ さっきから何を言っているの⁉︎」
どうにもミトさんの話の意図が見えない。
「だからミストラル内で普通の道を歩いている時は、こんな警戒はしないだろうって話だよ。……いかにミストラルが安全で平和で治安が良い街だって事が、この場所と比べることで改めてわかるだろうって話さ」
全ての説明を聞いて、ようやく理解出来た。
確かにミトさんの言う通りだ。平和や安全が当たり前だと思っていたミストラルの敷地内の道では何も考えず平然と歩いていられる。正確には歩いている時に平和とかは考えた事がない。つまり漠然と平和と決めつけ、安全を意識する事なく日々過ごしていたことになる。
それに対して今みんなが置かれているココは、一切の事前情報もなく目の前に何があるかわからない場所に他ならない。下手したら罠があるかもしれない。そんな危険かもしれない、何が起こるかわからない場所を呑気に鼻歌まじりで歩き回るなんて、とてもじゃないが出来るわけがなかった。
「なるほど〜当たり前だけど平和ってすごいなぁ〜‼︎ こんなに意識の持ち方が違うのかぁ〜」
みんなが感心している中、スバルが反論した。
「んじゃさ、俺たちにその違いを『教えるためだけ』に、ここに留まったの⁉︎……いくらミトさんでもやりすぎでは⁉︎ 本当に何かあるのかと思ったじゃないか⁉︎ 敵がいるのかと思って、すっかり騙されたよ‼︎」
「騙しちゃいないよ」
「え⁉︎」
「なにか、くるぞぉ‼︎」
瞬時にアギトが叫んだ
「何が⁉︎」
次の瞬間、地面から爆煙が轟いた。パノラマに景色を堪能出来ていた風景を乾いた土煙が周囲全てを覆い、視界を完全に封じられた。
「なにこれ⁉︎ 何も見えないわ」
「どうなっているんだよ⁉︎」
「ほらね」
「ほらね……じゃないよ‼︎ ミトさんは、なんでそんなに落ち着いていられるの⁉︎」
「みんな、慌てるな‼︎」
アギトは、レコードで周囲を凝視しつつ、みんなに警戒を呼び掛けた。『慌てるな』と口に出しながら、まず俺自身が冷静にならなければと自分にも言い聞かせた。
「ゾーンでちゅ‼︎」
うまい‼︎ この土煙の中、誰もが何も見えない事を逆に利用して、モモちゃんの能力向上魔法の発動条件が整った。最年少でありながら、勝負勘が強く、物怖じしない所がモモちゃんの凄いところだ。
「みんな油断するな。……つか、ミトさん‼︎ 早くなんとかしてくださいよ‼︎」
「なんで⁉︎」
「なんでって、そりゃ〜ここら全体が土煙で覆われていて、なにも見えないからですよ‼︎ どうしたらいいんですか⁉︎」
焦る俺たちとは逆に、涼しい顔でミトさんは淡々と返事を返す。
「最初に言ったよね。あんたたちは『護衛』だって。護衛は守るのであって『守られる立場』じゃないんだよ」
「なに屁理屈を言ってるんですか‼︎ そんな押し問答をしてる場合じゃないんですよ。本当にヤバいんですよ‼︎」
「だったら、あんたたちだけでなんとかしな」
「うそでしょ⁉︎」
ミトさんの無関心さは置いといて、これから何が起こるのか⁉︎ アギトはそれだけに神経を集中させた。




