それぞれの出発05
いよいよアギト達ラストリンカーが精樹大国オールドウッズに向かう日が来た。今日は風もなく空気がとても澄んでいる。覆われた霧の隙間から無数の光が差し込み、日中の快晴を予感出来た。こういう出発日に天気が良いと心まで晴れやかになる。そしてその心地よい陽気に誘われてなのか、メンバーは遅れることなくミストラル東門前に集合していた。ただケイだけが集合時間から15分ほど遅刻してきた。
「遅せ〜〜よ‼︎」
スバルがすかさずケイに対して文句を言った。
「あのね〜……初の遠出に限らずココぞという時、女性は身だしなみの準備に時間がかかるものなのよ‼︎」
ケイは謝るどころか、むしろ自信満々に言い放った。
「いや、よくわかんねぇ〜けど」
「モモちゃんには、わかりまちゅ」
「マジで⁉︎」
「さすがモモちゃん」
「やったネ」
「いや、やってはないよ」
みんなが出発前で大はしゃぎしているのをよそに、アギトは少しだけ違う感情も抱いていた。初めてこの世界に転生されミストラルに連れてこられてから、だいぶ日が経つ。その間、ミストラルを出た事が一度もなかった。もちろん外への興味がないといえば嘘になるが、実際はそんな余裕がなかったのが正直な理由だ。
ミストラルの外の世界を強く意識したのは、間違いなく野盗が攻め込んで来たあの事件だ。それはこの世界のパワーバランスについて、日々の魔法修練を行なってはいたものの現実味がなかった。もっと正直な事を言えば世界情勢は対岸の火事みたいな出来事で、自分たちには関係ないんだろうという意識の方が強かった。
しかし実際にミストラルが攻め込まれる情報を聞かされ、準備をしていざ本当に敵が来た時、最初の印象が『これは現実なのか⁉︎』と疑ってしまった事を思い出した。勿論、それが油断には反映されずラストリンカーの誰も傷つく事なく勝利と言う成果を挙げた事は、この世界において己の生きる存在価値みたいなのを改めて発見出来た瞬間でもあった。
今回、初の他国への出向という事に対して不安はあるものの、この世界の新しい真実を知れるという点においての期待値は、みんなと同じ気持ちだと思っている。だからこそ、これまで以上に万事滞りなく任務を遂行したいと言う意気込みが強い。
背中大好きモモちゃんは、いつもより緊張しているみたいだった。すぐにトモミがそれを察して、モモちゃんをおんぶしてあげた。ゲンキやスバルやオサムはその光景に嫉妬してブーブー文句を言っていたが、しばらくするとあきらめてまた3人で集まってバカ話を始めている。
「さぁ〜出発しますよ」
スタンプ先生はそう言うと、全員を透明な筒の様な膜で覆った。この魔法は一番最初にトウタさんとカミュールさんと出会い、一緒にミストラルに来た時と同じ魔法である。複数を一つの膜で覆い、『ワンパケージ』と認識する。それに対して移動魔法をかける。今回は総勢8人という大所帯での高速移動になる。つまりスタンプ先生は収束魔法、痕跡除去魔法、そして高速移動魔法を同時に行っている事になる。
ここに来た当時、見るもの全てが初のアギトにとって『移動魔法』は、ただただ不思議な存在だった。しかし実際に魔法を理解し始め、自らが使う立場になって、この複数魔法における同時発動が、いかに複雑で難易度の高い事を行っているのかが今改めて理解出来る。そして、それをいとも簡単にやっているスタンプ先生のポテンシャルの凄さに感服せざるを得なかった。
「あ⁉︎ ハンカチがないでちゅ」
モモちゃんが突然、慌てはじめた。
「え⁉︎」
「どこかにおとしのかもしれましぇん」
「あらら」
高速移動中だったがトモミがモモちゃんの異変に気づき、みんなに大声で問いかけた。
「ね〜〜モモちゃんがハンカチを落としたみたいだけど、誰かわかる⁉︎」
「僕のハンカチは落としてないよ。だからここにあるよ」
「ゲンキのハンカチの話はしてないよ。モモちゃんのハンカチだよ‼︎」
「つか移動魔法してる時に落し物したらどうなるの⁉︎」
「この筒で私たち全体を覆い包んでいるから、地面には落ちないんじゃない⁉︎」
「んじゃ、どっか足下の方にあるのかなぁ〜」
本当に遠足のような和気藹々(わきあいあい)としたムードだった。この和やかな雰囲気に関して、ミトさんもスタンプ先生も何も言わないし、一切絡んで来ない。この事がアギトには少し引っ掛かった。いつもなら『もう少し落ち着きな』とか言いそうなのに、今回は敢えてだんまりを決め込んでいるような気がする。
ただ眼前に広がる未知なる世界が流れる景色を見るだけで興奮が止まらない。高速移動中とはいえ、みんなの会話が途切れず、はしゃいでしまうのはある程度仕方のないことかもしれない。今回はその辺りの心情をミトさんは汲んでくれて、大騒ぎでも大目に見てくれているのだと高を括っていた。
コンセプト描くか、物語の続き書くか、迷い中(゜ー゜;Aアセアセ




