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最初に言っておく‼︎ 転生者はキミだけではない‼︎  作者: クリクロ
第二章 『動き出した思惑編』
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先輩と後輩06

 自分勝手な欲望があまりにも露骨すぎた今回の事件。だが、おそらく欲望に取り憑かれた状態では、暴走した連中のように正論は通用しないのだろう。そこまで機械化に執着する奴らのり所はなんなのだろうか⁉︎……どうしても、そこがわからない。


俺の疑問は置いといて、スタンプ先生は引き続き機械化の問題点について話を続けている。



「座学で何度か説明してきましたが、この世界において人間が生きる種族の頂点じゃないからなんです」


「……何度聞いても意味がいまいちわからないんだけど」


「では、その工業化や機械化のリスクはなんだと思いますか⁉︎」


「え?……なんかリスクあったっけ⁉︎」

「さぁ〜なんだろう⁉︎」



みんながあまりにピンときていないので、ミトさんが、満を持して話に入ってきた。


「それは汚染だよ。廃棄物汚染の排水や排気ガスだよ」


「あ‼︎」


「人と違って精霊は非常に繊細なのさ。だから緑が多く茂って、かつ水や空気が綺麗じゃないと生きていけない。何より人間の耐性値をはるかに超える清潔さでないと、私たち精霊は生きていけないのさ」


「……」


「そもそもお互いの安全を守るために、この地域一帯を精霊と人間との共有財産として自然破壊をしない契約を結んだのさ」


「そうだったんですね。前世の知識があるのに、機械化が実現しなかったのはそういう理由だったんですね」



「理由はまだあるのさ」


「え⁉︎ まだあるんですか⁉︎」


「原材料となる鉱物がここ周辺では取れないんだよ」


「え〜〜〜」


「さらに言えば、特定の鉱物は摩耗速度、腐敗速度が早すぎて実用できない」


「え⁉︎ どういう事ですか⁉︎」


「鉄や銅や鋼やなど一部の金属は、すぐさびてボロボロになってしまう」


「あらら」


「どうも精霊との相性によるものらしい。詳しいことはわからないが精霊が生きるため必要な空気中の酸素濃度が高いせいなのか⁉︎ もしくは精霊の存在そのものなのか⁉︎ ……とにかく瞬時に金属は酸化劣化してしまうのさ」


「それでは使い物にならないですね」


転生者リンカーの一部が前世のように機械化を中心とした近代生活を要望する意見や、ここでの暮らし方に不満が出ている者がいることは薄々知っていた」


「そうかな〜。最初は不便だと思ったけど、今はもう感じないよ。そもそも、ここの暮らしはオレ好きだよ‼︎」


「モモちゃんもすきでちゅ」

「僕も‼︎」


「リンカー全員が、そう言う考え方じゃないのはわかっている。でも、その『一部』ってのが問題なんだ。なぜならば、実際に隠れて森や川の水を汚している連中がいるんだよ。勿論、違反行為に該当する」


「嘘でしょ」

「がーん」


「そのせいで、精霊が離脱する事件が起きたんだよ」


「ちょ、ちょっと待ってくださいよ……大精霊祭の前に精霊が逃げた事件の原因は元を辿れば、リンカーのせいだったんですか⁉︎」


「そういうことに……なるね」


「ショックだわ〜」

「誰だよ‼︎ そんな事してるのは⁉︎」


みんなの怒りは頂点に達していた。そして事の重大さを改めて見に染みた気がした。


「余波はそれだけじゃないんだよ」


「ま、まだ、なんかあるの⁉︎」


「三代目大精霊ミストラルのめいにより、転生魔法の無期限封印が決まった」


「マジかぁ〜〜」


「野盗事件が終わったら封印解除するもんだと思っていましたよ。それが無期限封印ってどういうことなの⁉︎」


「リンカーによる、第2第3の反乱者を出さない為さ」


「そ、そんな‼︎ だってオレ達は反乱してないじゃん‼︎」


「そうだよ‼︎ たった数人の印象のせいでリンカーの残り全員が悪者みたくに言われるのは面白くないなぁ」


「可能性がある以上、現状では仕方ない決断だね。むしろ英断だと思う。この段階でミストラルの知識のない転生者を魔なびでなく、反乱者が勧誘したら、そちらになびく可能性は高いだろうからね」


「そうかもしれないけどさ。……なんか腹たつわ〜」


あたしはしばらく、3代目ミスト様と交渉してこれ以上の精霊離脱を防ぐ手段を模索する事になる。だから、しばらく修練はあたし抜きで頑張りな」


「俺も、引き続きネスザック次長の命で、内密に動く事になるはずさ。ただし、みんなが反乱軍とのトラブルに巻き込まれる可能性は依然残されているんだ。今回の一連の事件の中心に君たちがいるっていう自覚をちゃんと持って、気を引き締めて欲しい」



ミトさんとトウタさんの意見は予想以上に生々しくて深刻だった。『平和な日常』が想像しているより早いスピードで崩されている気分になった。だからこそ俺たちラストリンカーが立ち止まっている暇はなかった。

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