先輩と後輩02
いきなり俺たちの前に現れた自称リンカーの先輩達。うすうすわかってはいたが、こうもベタな展開になるとさすがに呆れるというしかない。ただ俺たち以外のみんなの事が気掛かりだ。なのでもう少し時間を稼ぐ事にした。
「自分はアギトと申します。……そしてさっきから『先輩』とか『後輩』とか言ってますけど、それは何ですか⁉︎ そもそも面識ないはずですけど」
「そりゃ〜この世界に先に転生してきたのが俺たちだから『先輩』なんだよ」
「そういう意味ではなくて……この世界は、そういう年功序列じゃないって聞きてますけど」
「アハハハ。お前らはあんなルールを信じてるのか⁉︎ つくづく、おめでたい奴らだなぁ〜」
「……」
「あんなのは精霊たちと先住民たちが決めた約束だろう。そんな大昔の取り決めを、まして俺たち余所者の転生者たちが守るわけがないだろう。俺たちはお前らより、先に来たから先輩なんだよ。先に来たから偉いんだよ。単純な話だろう」
「こいつ、何言っているんだ⁉︎ その理屈で言えばあんたらもネイトの下っ端じゃないか」
「ネ、ネイトとリンカーは別なんだよ‼︎」
「出たよ……ご都合主義にも程があるね〜。相手の文句ばっかり言って、自分の不利な部分には目を瞑る。……こんな自分勝手な考えの持ち主って、まだいるんだねぇ〜。びっくりするわ」
「あ〜後輩が調子こいてんじゃないぞ‼︎」
「ほら、すぐ本性が出たよ。……まぁ〜最初からわかっていたけどね。これ完全に昔のトモミだわ‼︎」
「こ、こ、こんな感じじゃないよ。失礼だなぁ〜」
「余計な話はするんじゃないよ。そもそもお前らに選択権はないんだよ」
「まだ、なんか言ってるけど。……つか、よくこんなやつをトウタが了承したよね」
「いや、おそらくトウタさんは関係ないと思う。年齢的にかなり上の世代な気がするね」
「トウタって……例のあいつか。んじゃ、そいつ呼んでこい‼︎ いますぐ呼んでこい‼︎」
連中はトウタさんの名前に敏感に反応した。しかし先の野盗襲撃事件においてトウタさんの持ち場は西区だったので新魔法情報までは知らない可能性が高い。知っていれば、こんなに簡単に『呼んでこい』とは言わないはずだ。
「つか、マジでトウタを呼ぶ気だったの⁉︎ こんな程度、僕たちで解決しないと流石にミトさんに怒られるぞ」
「まぁ〜そうなんだけど」
「おいおい、俺の話を無視するな……こっちが大人しくしていたら、いい気になりやがって。俺たちにはな〜強力な接近攻撃魔法を有する大先輩がいるんだよ」
……なるほど、こいつらの自信の源はコレか。おかげでこいつらが下っ端レベルなのがわかった。連中がヘラヘラしている理由も、すぐに仲間に連絡がつく段取りなのか⁉︎ もしくは例の接近魔法使いの大先輩がすぐ近くにいるのか⁉︎
しかし、俺らのパワー不足を指摘している時点で、いきなりラスボス登場はないだろう。となると問題は、いかに敵の援軍を呼ばないようにするか⁉︎……勝負のポイントはこれに尽きる。あとは時間との戦いだな。俺は時間を気にしつつ、『演技』以上に感情的になっているスバルを心配した。
「こういうセリフは言っていて恥ずかしくないんだろうか⁉︎ なんで他人の強さを自分の強さだと勘違いするんだろうね〜⁉︎ なんでバックボーンを自分の強さだと思うんだろうね〜⁉︎」
「ガキは無視して、そこのお前‼︎ 背の高いお前だよ‼︎ お前はわかるよな。『世の中のルール』ってやつを、お前はこっち側の人間だよな‼︎ 俺たちの話はわかるよなぁ」
体の良さと顔の怖さからトモミが指名された。当然相手も警戒しているとは思っていたが、そのまんますぎて、トモミに掛けてやる言葉が見つからなかった。……見た目で判断されるって可哀想だなぁ〜。
「いや、全然わからないですけど。」
「んじゃ、言葉じゃなくて先輩の力を見してやるよ。今更、助けを乞いても遅いからな。俺たちに対して舐めた態度をとった事を後悔しろや‼︎」
「別に助けて欲しいとは思ってないけどさぁ〜……もう流石に時間稼ぎは飽きたんだけど」
「……はぁ⁉︎ 何言ってんだ⁉︎ 時間稼ぎ⁉︎ な、なんの時間稼ぎだよ⁉︎」
「そんなの決まってるでしょ‼︎ 私たちがここに集結するまでの時間稼ぎよ‼︎」
宿舎にいたカミュールさんとケイ。そしてモモちゃんはラルを背負ったトウタさんと一緒だった。
「来るの遅いよ‼︎ 捕まったのかと思って心配したぞ……あれ⁉︎ オサムとゲンキは⁉︎」
「2人は飯当番だからパスだって」
「アハハ……どんだけ腹減ってるんだよ‼︎」
ほぼ全員揃ったところで、全員の安否を確認出来た。これでようやくこちらのターン開始だ。




