先輩と後輩03
先輩と後輩01〜02での、ぎこちないな会話のやりとり。その理由が、今回わかります。
俺たちラストリンカーが勢揃いしても、自称『先輩』の強気は変わらなかい。それどころか、さらなる挑発をしてきた。
「これで全員勢ぞろいか。そしてお前がトウタか……当然、知ってるぜ‼︎ 攻撃魔法がなくて転生魔法のナビ役やってたっていうヘタレだよなぁ〜。さらに赤ん坊連れてくるとは、ナビ役から赤ん坊のお守りに降格か⁉︎ アハハハ〜」
「そりゃ、どうも」
トウタさんは怒りもせず、罵倒を軽く往いなした。……これは『アギト君たちだけの力でこの場を収束してみな』というメッセージだ。相変わらず、この人は俺たちに対するプレッシャーのかけ方がエグい。
「まぁ〜即答もなんだから、1日だけ猶予をやるよ。みんなで仲良く考えな‼︎」
「必要ないけどね。さっきから、断ってるじゃん‼︎」
「だからよ。お前らの良い返事をくれるように、こっちもちゃんと考えているんだよ……オイ!!お前ら、やれ‼︎」
「粉塵魔法【ダストボム】‼︎」
「粉塵魔法【ダストボム】‼︎」
……しかし、何も起こらなかった。
「ん⁉︎ ん⁉︎ ……お前ら、なに失敗してんだよ⁉︎」
「あ、失敗はしてないっすよ」
「なぜか発動しないんですよ」
「え⁉︎ え⁉︎ ……なぜ、爆風が起きない⁉︎ なぜ粉塵煙が舞い起こらないんだ⁉︎」
奴らは、ここにきて初めて動揺した。同時にこいつらが口先だけで実践を経験していないことが立証された。少なくとも実践を経験したものならば、予定どおりにいかない場合、二の矢三の矢を準備してるものなのだ。ところがそういう想定もせず、ただオロオロしている時点でこいつらの底の低さが、戦闘経験の少なさが、器の小ささが容易に想像出来た。
「あんまり僕たちを『後輩』扱いしないで欲しいよね。俺たちはさ、あんたらの考えているより、さらに高い次元の戦いを想定しているんだよ」
「なにを言ってやがる⁉︎」
「口だけのやつと一緒にしないでほしいよ。そもそも粉塵に紛れて人質をとって逃げる作戦なんていうのはバレバレだったのさ」
「な、なんだと⁉︎」
「あんたたち全員の動きはさ、この魔なび舎の敷地に入ってきた時点でからアギトの記憶魔法【レコード】で読み取っていたのさ。それを受けて、ここに集合する前に、僕の解析魔法【ワイヤーフレーム】で解析済だったのさ」
スバルがドヤ顔で説明し始める。……そこまで自慢する事の程でもないけどなぁ〜と思いつつ、だんだんスバル満面のドヤ顔が味方ながらにムカついてきた。
「いつの間に⁉︎……そんな連携する暇も詠唱する暇もなかったはずなのに」
「そんなのはあんたらがこの敷地に入ってくる時点で終わっているんだよ。あんまり俺たちを舐めないでくれるかな。いくらなんでも不審者相手に無策でここまで接近させるわけないじゃん」
「こ、ここに侵入した時点でもう魔法を張り巡らせていたというのか⁉︎」
「だからさ〜。基本っていうか初歩の初歩だよ。あんたら魔なび舎で何を習ってきたんだよ⁉︎」
「……だが、魔法は仕込めても俺たちが繰り出す粉塵魔法【ダストボム】までの対処の相談はしてないじゃないか⁉︎ そもそも俺たちがどんな魔法を持っているかが、わかっていないじゃないか‼︎」
「あんたがペラペラ喋ってくれたんで、簡単だったよ。あんたらの言葉を借りれば大先輩が接近魔法のエキスパートってことはさ、逆を言えばあんたらも接近魔法使えないって言ってるもんじゃん。さらにいえば、一度の交渉ですんなりOKがもらえる分けないと踏んで、逃げる手段を考えるのは誰でも読めるよ。調子に乗ってペラペラ喋りすぎだね」
スバルの反撃は止まらない。今回に限らず口論になるとスバルは活き活きとする。過去においてアギトさんやミトさんには言い包められてきた分、今回は勝つ気満々といった圧が側から見てても強く感じる。
「……しかし……それでもお前らにはダストボムの仕組みを相談する暇がなかったじゃないか⁉︎」
「……バカじゃないの⁉︎ちゃんとあんたらにもわかるように親切丁寧に教えてあげたじゃん」
「な、なんだと⁉︎」
「わかってないようだから、種明かししてやるよ」
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『……俺たち、あんた達になんかシタッケ〜⁉︎』
『りょうカイ‼︎』
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「アギトのセリフの語尾を合わせると『シタケーカイ』=『下警戒』ってなるよね」
ここまでネタをばらすと、流石に連中は青ざめた。
「んで、僕のさっきのセリフはこうさ」
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『……めんどくさいな〜素直に本題入れバ⁉︎』
『ここは僕一人でいク‼︎』
『みんな僕の性格は知ってるハズダヨネ‼︎』
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「つまり『バクハズダヨネ』=『爆発だよね』になるのさ」
「……ふ、ふざけたことをやりやがって‼︎」
「普通に考えてみてよ。こんなおかしい返事や、変な会話をするわけないじゃん」
もう、連中に反論する余地はなかった。完全に主導権を握って上から目線で場を牛耳っていたつもりが、実は全くの逆でまんまと策略に嵌るだけでなく遊ばれていたのだ。コレには流石に連中たちもショックを隠せなかった。そして気が滅入った刹那を見逃さない。
「つまりさ、あんたたちは注意力が全然足りないんだよ」
「バ、バカな動けない」
「はい、残念でした〜。あんたらのダストボムをトモミの保管魔法【マルチストレージ】で封じ、アギトの罠魔法【ボトムトラップ】で動きを封じさせてもらいました〜っと」
いい加減にスバルのドヤ顔にも耐えられなくなったので、もうそろそろいいだろ〜と合図を送り、俺が代わりに反論した。
「俺たちは、あんたらと同じ転生者だけど、見ている景色が全然違うんですよ」
「……」
「あんたらは見下す事しか考えていない。前世の年功序列にしがみついた悪しき風習をいつまでも支えにして、それだけに縋って生きている。自分が上の世代に背負わされた事をそのまま下の世代に繰り返しやろうとしている……全く進歩のない残念な方々ですよ」
「な、なんだと」
「幸か不幸か……この世界でせっかく新しいチャンスをもらっておいて、前世と同じスタイルって、どれだけ人生を棒に振る気なんですか⁉︎」
俺の言葉が相手に届くとは思っていない。それでも言わずにはいられなかった。少なくとも俺たちを『後輩』と呼ぶのであれば『先輩』らしい姿を見せて欲しかった。それが本当に残念でならなかった。
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その後、この連中は護衛班に引きわたされ、『叛逆準備罪』の現行犯で一時的な魔法封印の処罰が下った。ちなみに、精霊との魔法契約解除が次に重く、最も重罪ともなると、さらに契約解除に加え街追放まで行うのだという。
ちなみに封印魔法であるならば、解除魔法【フリーキャンセル】で解く事も可能だのがが、三重鍵で封印魔法を重ね掛けしているので、現代の技術では魔法をかけた当人以外に解除することは不可能である。以前、猛毒地帯でトウタが行った魔法痕迹を封じる方法と同じ理論である。




