モモちゃんとラル05
誰もがモモちゃんの新魔法に期待していた。しかしミトさんとカミュールさんの予想に反して、またもや魔法不発に終わってしまった。
「……モモちゃん、気にしなくていいからね。ちゃんと原因を探すので少し待っていてね」
カミュールさんがモモちゃんに優しく声をかけた。
「なぜか、どうちてもできません」
モモちゃんも首をかしげ、納得のいかない様子だ。
「これは……そもそも成功率が低い魔法なのでは⁉︎」
「いや、そう言う問題ではなく、単に発動条件が整っていない感じだね〜」
みんなが色々意見を言う中カミュールさんが思い出したように、呟いた。
「あと残っている可能性としては、モモちゃんが魔法を見せてくれた時と違う事といえば……師匠の家で師匠もいました」
「それよ、カミュール‼︎ 今すぐパパを呼びなさいよ‼︎パパが魔法発動のサポートをしたのよ。だからパパを呼んで来なさいよ‼︎」
ケイがまるで別の理由でもあるかのように叫んだ。
「いや、流石にそれはないね」
ミトさんはそう言いながら、相当難しい顔をしている。もともとラルの存在自体が特殊なのだ。精霊契約前に魔法を発動して、そこからトウタさんと協力魔法を作り上げた。そして今度はモモちゃんにも影響を与えたはずだと言う。
しかし、魔法発動において仮にあと1つか2つの追加条件があったとして、ここまで複雑な条件が実用的かどうかと言う問題が出てくる。現状、ラルはトウタさんとのコンビだ。混血魔法【ミリオンブラッド】を差し置いてまで、モモちゃんとラルのコンビ魔法を優先するメリットは今のところない。残念だがモモちゃんの新魔法の発動条件がラルの存在ありきプラスアルファだったとしたら……この魔法はお蔵入りになるかもしれない。
「ラルでもない。パパでもない。んじゃ、あと発動条件はなんなの⁉︎……他に何か思い出せないの、カミュール」
ケイがトウタさんが来てないフラストレーションをぶつけるかの様にカミュールさんを問い詰めている。
「そ、そんな事言っても、モモちゃんがラルにミルクをあげているのは、いつもの事で安心仕切っていたの。だからってわけじゃないけど、モモちゃんが魔法を覚えた瞬間は見てなかったの」
「なんで見てないのよ⁉︎ モモちゃんたちを気にしないで、カミュールは他に何をするべき事があるのよ。……まさかパパを見てたの⁉︎ パパばっかり見てたの⁉︎」
「あ〜〜〜〜〜〜〜‼︎」
いきなり、トモミが叫んだ
「ん⁉︎ どうした⁉︎」
「モモちゃんとは、いつも自分の背中越しに会話をしているんです。そしてその状態こそモモちゃんは一番メンタルが安定しているんですよ」
「トモミは、なに自分の背中アピールしてんの⁉︎ 今、関係ないだろ」
「……な、なるほどね。ナイスだよトモミ」
どうやら、ミトさんはわかったようだ。同時に俺もようやくわかった。モモちゃんの新魔法の発動条件が。
「なになに、どういう事⁉︎」
「きっかけは確かにラルさ。ただし発動条件はラルじゃない。モモちゃんが新魔法を発動する条件、それは発動中を『誰にも見られない事」さ」
「な、なんだって‼︎」
「そりゃまた、レアな条件だね〜」
「なるほど‼︎ 昨日もさっきもみんなが注目した中で、発動しようとしてたもんね」
「た、確かに師匠の家で魔法を発動した時、全員が目を離した瞬間があったんだと思うの」
「んじゃ、みんなが目つぶるか、後ろ向いてれば出来るんだよね⁉︎」
「モモちゃん、もう1回魔法やってみてね。今度はみんなが見てないからね」
「わかりまちた」
薄目だったり、手で隠した隙間から見るといったズルはしないよう、みんな後ろを向いた。そして誰にも視線を向けられて居ない状態でモモちゃんは再び集中した。
「……あ、できまちた」
モモちゃんがそういうと俺たちは一斉に振り返った。
「おぉ〜〜」
「おぉ‼︎」
「やっぱり、発動条件はこれだったんだね」
その魔法は、トウタさんの混血魔法【ミリオンブラッド】とは対照的にミカンくらいの大きさの光の粒がモモちゃんの胸の前と背中に1個づつ合計2個浮いていた。そしてミリオンブラッドとは異なり場所は空中で固定しているように見えた。
「なんか、トウタさんみたい」
「綺麗というか、かわいいね」
「まぁ〜これで一安心だね」
「ミト母さん。このモモちゃんの魔法は、能力はともかく実践投入としては難しくないですか⁉︎ 敵と遭遇しているのに誰にも見られないのが発動条件っていうのはかなり難易度が高くないですか⁉︎」
「そんなのは、あんたちがフォローすればどうとでもなるだろう。そのための『仲間』なんだろう⁉︎」
確かにその通りだ。条件が厳しいなら俺たちがフォローして、その無理難題を打破すればいいだけの事。実にシンプルな答えだ。そして俺はこの時、モモちゃんの魔法に触発されずにはいられなかった。




