モモちゃんとラル02
いつものようにモモちゃんがラルにミルクを飲ませている時、安心仕切ってしまったのだろうか……偶然にも俺もミトさんもカミュールさん全員がモモちゃんから目を離した時があった。そして次の瞬間モモちゃんがつぶやいた。
「モモちゃんはラルちゃんからまほうをおしえてもらいまちたよ」
「え⁉︎」
「え⁉︎」
「なんだって⁉︎」
慌てて、みんながモモちゃんを見た。
「ミト母さん、これは⁉︎」
「……信じられないが、本当に魔法を覚えている。おそらくラルの魔法とモモちゃんの魔法が共鳴したんだね〜」
「確かに、モモちゃんに強い魔力を感じますね」
「共鳴⁉︎ ……共鳴とはなんですか⁉︎」
カミュールさんが不思議そうに尋ねた。
「お互いが相手の考えや行動を理解し同意する事。その結果、お互いの良いところが重なり合わさって新魔法が出来た。ラルの防御魔法とモモちゃんの精神安定系魔法が共鳴した事で魔法自体が昇華した……と考えるべきかね〜。というより、こ、これは、能力向上魔法かな」
「と、とても、6才の年齢で扱える魔法ではありませんよ」
「モモちゃんの魔法は、そんなにすごいんですか⁉︎」
「能力向上魔法……本来、本人や他人のポテンシャル以上の力を強制的に出させるということは、言ってみれば後先考えない言わば玉砕覚悟の手段なんだ。当然、魔法使用者も魔法を受けた方も無傷ではすまない。なぜならこれ以上フィジカルの負荷をかけてはいけないという自己防衛の命令を、無視した更に上の領域で活動しようとしているんだからね」
「そ、それは相当危険なのでは⁉︎」
「ところが、モモちゃんはこの限界を超えた状態をほぼノーストレスでやってのけている。モモちゃんのストレスをラルから覚えた半永久的な持続防御魔法で相殺しているんだ」
「なんですって!?」
「この防御魔法によって、限界を超えたにもかかわらず自らのメンタルにもフィジカルにもダメージを一切受けていない。それどころか魔法におけるリスクも全部この防御魔法が削除処理しているようだね〜」
ミトさんが、モモちゃんの頭を撫でながら感心していた。
「元々モモちゃんの魔法は精神系です。それにラルの具現系な防御魔法が加わった合成魔法です。冷静に考えれば、きちんと整合性が取れていて安全なように見受けられます」
俺も驚いたが、破綻のない理に適ったバランスの良い魔法なので一先ず安心した。
「では、危険はないのですね⁉︎」
「あ〜。今のところ、そのようだね」
「よかったわ〜」
「やったネ」
一人喜んでいるモモちゃんをよそに、大の大人が大慌ての状態だった状況が客観的に見て笑えた。……それにしても、子供の成長はいつだって、こちらの想像を超えてくる。おそらく、ここのところ毎日モモちゃんがラルとコミュニケーションを取り、一生懸命にラルの世話をした事で、二人の間に見えない絆が出来たのかもしれない。
「師匠〜‼︎ 具体的に能力が上がると、どうなるんでしょうか⁉︎」
「フィジカルに関しては反応速度が上がる。それこそ、考えるよりも先に行動するといったことが可能になる。つまり『危ない』と思うよりも早く、防御魔法がその部分を守ってくれるのさ。能動的にではなく反射的に防御してくれる」
「まぁ〜」
「そしてメンタル面では魔法成功率が跳ね上がる!!現状モモちゃんの睡眠魔法【フラッシュスリープ】の成功率は60%くらいだけど、カミュールさんの交換魔法【コンバート】を介さなくても多分100%になると思うよ」
「モモちゃん、これは、すごいわ‼︎ すごすぎるわ‼︎」
「やったネ」
「でも、モモちゃん。からだのどこかわるいところとか、いたいところはないですか⁉︎」
「へいきだお。どこもいたくないよ」
「よかったぁ〜」
「……しかし、これは相当強い魔法だね〜。あんたらもウカウカしてられないよ」
「そうですね。俺も頑張りますよ」
「モモちゃん。私も負けないからね」
目の前で予期せぬモモちゃんの魔法を見て、みんなが驚き興奮し喜ぶのは至極当然の事。だからというわけではないが、不覚ながら俺もミトさんもカミュールさん……つまり誰一人としてもう一つの可能性に気づけないでいた。
そう……『ラル』もまた新魔法を覚えていたのだ。




