勝利の余波03
動揺するアギト君をよそに、淡々とミストさんは説明を続けた。
「私は今のトウタの推理を上層部に伝えてくるよ。おそらく今後の護衛の仕方にも影響するだろう。そして、もうしばらくで一時中断していた大精霊祭も再開するはずさ。その時までに三代目に仕事を引き継ぐ準備も私の仕事なんだよ。……全く忙しいったらありゃしないよ。とにかく時間がないんで、あの子らの事はあんた達に任せる。3人で相談しな‼︎」
そう言うとミトさんは忙しくパークを目指し、来た道を走って行ってしまった。
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「トモミとオサムとケイはいいとして、問題はあのちびっ子3人組だよ。特にモモちゃんはまだ6才だぞ。いくらしっかりしてるとはいえ、どうやって説明すればいいんだよ。変に誤魔化したり後に引き伸ばしても、可愛そうだよなぁ〜」
アギト君は答えが見つからないようで悩んでいた。
「わたしがモモちゃんに言います」
信念を持った口ぶりでカミュールさんがそう言った。しかし、俺はその提案には乗らず、自分の素直な気持ちを伝えた。
「カミュールさん、ありがとう。でも俺が言う事にするよ。……実は前世において祖母に聞いた話によると自分は3才の時に両親を同時に亡くしているんだ。……当然、両親の記憶はない」
「……師匠〜」
「……トウタさん」
「でも、今回の野盗の『死』を伝えることで、モモちゃんは今までよくわからなかった今の自分が置かれている現実に気づくはずだと思うんだよ」
「……」
「モモちゃんは多分気持ちの半分では、まだご両親に会えると思っているはず。何よりモモちゃん自身が『死んでこの世界に来た』という事を完全に理解出来ていないはずなんだ。でも、今回の野盗に起こった『死』を伝えることで、モモちゃんは『死』の意味を多分理解してしまう。そして同時に気づいてしまう。……もうご両親に会えない事を」
「……モモちゃん」
「……つらすぎるわ」
「それでも、モモちゃんはみんなの前ではそういう弱さを、決して見せないはずさ……このミストラルに来て、モモちゃんは人前で泣いた事がないんじゃないかな⁉︎」
「……俺も見たことがありません。」
「……私も、、、、」
「周りが『モモちゃんは強い』とドンドン乗せてしまうから、モモちゃんもそれを受けて絶対に弱音を吐かないで元気に努めてきたんだねぇ。……でもね。泣いてもいいんだよ。……人は、泣いてもいいんだ。そしてそれを一番感じることが出来るのが『死』なのさ。……俺はね、そろそろモモちゃんにも、『元気印』という重責から解放してあげたいんだ。モモちゃんにも悲しい時には思いっきり『泣いて』欲しいんだ。今回の戦いを超えたモモちゃんなら、ご両親との別れという真実も乗り越えてくれると思う」
「……」
「ただ、みんなの前で泣かせるのは忍びない。……最低限、モモちゃんのプライドも守らなければならないからね。だから俺の前だけならば、素の自分を見せてくれるかもしれない」
「頼みます、トウタさん‼︎」
「わかりました。師匠〜お願いします」
アギト君とカミュールさんは、みんなの所に戻り『事の真相』を話し始めた。その間、俺はモモちゃんに2人だけで(ラルが背中にいるけど)話しがしたいと伝え、みんなとは離れたところへ誘った。モモちゃんは疑いもせず、二つ返事で一緒について来てくれた。
そして細い路地をしばらく歩き、モモちゃんを自宅に招き入れた。最初、モモちゃんは部屋のあちこちをわくわくしながら眺めていた。俺はラルを揺籠にそっと置き、そしてストックしておいたミルクを温めなおした。モモちゃんは、その行程を興味津々でずっと見ている。
「モモちゃんにおねがいがあるんだけど。ラルにミルクをあげてもらえるかな!?」
「やったネ‼︎ モモちゃんがおてつだいちます」
そう言って、俺の仕草を真似てラルにミルクをあげてくれた。
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ひと段落してモモちゃんには、ちゃんとしたミルクを出してあげた。猫舌だというので少し温めにしたつもりだったが、それでもモモちゃんには熱かったらしく、チビチビと飲んでくれた。
そしてモモちゃんがミルクを飲み終わったのを見計らい、座っている前に俺は膝をつき、目線をモモちゃんに合わせ、まず俺の生い立ちからゆっくり話す事にした。最初は、なんのことかわかってないみたいだったが、話の途中でモモちゃんは気づいたはずだ。それでも、モモちゃんは最後まで俺の目をしっかり見ながら話を聞いてくれた。
……この後、モモちゃんがこの世界に来て、憚ることなく本気で泣く姿を俺は目撃する事になる。




