トウタの新魔法02
ミストさんが魔なび舎が来るようになって、カミュールさんだけでなく俺たちにまで容赦なく高いレベルを要求してくるようになった。少しでもミスをすると「アギト‼︎ 手を抜くんじゃないよ‼︎」と叱咤される。「ス、スンマセン」……俺自身わかっているのだが、なかなか思い通りに魔法を使いこなせない。
そうやってうまくいかない日々が続き、だんだんとイライラを隠せないでいた。そんなフラストレーションが最高潮になりかけたある日の午後、授業中なのに魔なび舎の入り口の扉が開く音がした。……振り向くと、そこには珍しい人物が立っていた。
「あっ‼︎ トウタだ」
「わ〜い〜トウタおにいちゃんがきてくれまちたぁ〜やったネ」
「きゃぁ〜‼︎ 師匠〜〜〜会いたかったですぅ〜〜‼︎」
「きゃーパパ〜〜〜パパ〜〜〜〜」
「久しぶり〜トウタさん」
「みんな〜久しぶりだね‼︎ そしてミストさん、カミュールさん、お疲れ様です」
「はい、師匠‼︎」
「なんでだよ‼︎ そこは、みんなに『お疲れ様』……だろ‼︎」
「そうだったね〜ごめんごめん。お詫びにアイスを買ってきたんだ。みんなで食べてね」
「やった〜〜〜」
「気がきくじゃん」
相変わらず、この人は頭の回転が早い。わざと依怙贔屓みたいな素振りをみせ、スバルらを怒らせる。それに対し、トウタさんが謝る事で子供達にアイスをあげる口実を作る。……つか授業中なのに堂々と来てアイス持ってくるなんて……まったくもって、あざとすぎるよ‼︎
「では、少しだけ休憩するかね」
「いぇ〜ぃ‼︎」
「やったネ」
みんながアイスを食べながらも、もうひとつ気になっている事があった。それについて、トモミがトウタさんに質問した。
「あの〜その可愛い赤ちゃんは誰ですか⁉︎」
「ま、まさか、パパに子供がいたの⁉︎ 信じられない〜〜〜。もしかしてカミュール、あんたとの子供なの⁉︎」
「……そ、そ、そうですよ。あの子は私と師匠の愛の結晶なんですぅ〜〜。だからケイの入る余地はないんですぅ〜」
「くやしぃ〜‼︎」
「カミュールは嘘をつくんじゃないよ‼︎……この赤ん坊もラストリンカー(最後の転生者)だよ」
珍しくミストさんがツッコミを入れた。
「おぉぉぉ〜マジか。んじゃ俺たちと同じだね」
「小さいですね〜かわいいですね〜」
「ね‼︎ ね‼︎ トウタはこの赤ん坊と一緒に戦うの⁉︎」
「そうだよ。この子は『ラル』って言うんだ。みんなも仲良くしてね」
「あーい。そうちたらモモちゃんはきょうからおねえちゃんです」
「モモちゃんがお姉さんならボクもお兄さんでいいかなぁ〜」
「パパの子供じゃないなら……いいわ。……でも私、赤ちゃんをあやした事がないのよ。……どうしようかしら」
久しぶりにトウタさんに会えた事で、最近うまく魔法が出来ない苛立ちから停滞感が募り、難しい顔ばっかりしていたみんなに笑顔が戻った。よかった‼︎俺を含めみんなに元気が出たようだ。しかし、良いタイミングでトウタさんは来るよな〜。ほんとオイシイとこ全部持っていく人だよ‼︎
「ところでトウタは、何しにきたの⁉︎……まさかアイスを持ってきただけじゃないよね」
ゲンキが当たり前のように呼び捨てでトウタさんに質問した。俺たちラストリンカー内での決め事というか一つ約束事をしていた。ミストさんとカミュールさん以外の仲間内には『さん』づけはやめようという事。そこには年齢差を超えた俺たちの仲間意識を絆を強くしたいという願いから年長の俺が率先してみんなに提案した。モモちゃんは『ちゃん』とつけてるけど、それはご愛嬌でみんなもそれに同意してくれた。
ゲンキは、そのノリでトウタさんに対しても呼び捨てをしてしまった。
……まぁ〜トウタさんなら、寛大だから問題ないだろう。




