4.王女様と顔合わせに行くお義兄様に付いていって邪魔しようと心に決めました
気絶した私をハルトお義兄様が背負い、ローデリヒお義兄様がヒールでほとんど傷が治ったルーお義兄様に肩を貸して私達は帰還したんだって……
その後でハルトお義兄様とローデリヒお義兄様がお父様にボコボコにされたのは言うまでも無い……
そもそも公爵家令嬢である私がダンジョンなんて潜る必要は無かったと後でお父様から聞かされたのよ。何でも、女子供まで魔物退治に駆り出すほどハウゼン公爵家は落ちぶれていないそうだ。
それを聞いた私はハルトお義兄様たちにぷっつん切れていた。
お父様にボコボコにされたハルトお義兄様とローデリヒお義兄様を見ても良心の呵責なんてこれっぽっちも感じなかった。なにしろ私は危うくゴブリンに殺されるところだったんだから……
まあ、お陰で公爵家の美味しいケーキを食べられたし、癒やし魔術を使えるようになったけれど……
ヒールが出来るなんてまるで聖女様みたいだ。
もっとも、この国にはお母様みたいにヒールを使える治療師はたくさんいて、私程度の能力の治療師は掃いて捨てるほどいるそうだ。
聖女と呼ばれるには全然能力が足りんとハルトお義兄様達には馬鹿にされたけれど……
うーん、聖女になれたら私もこのゲームのヒロインになれるんだろうか?
もっともゲームのヒロインなら、こんな公爵家のお嬢様では無くて平民やしがない男爵家の娘のはずだ。
公爵家の令嬢と言えば多くは悪役令嬢だ。
ええええ! 私、ひょっとして悪役令嬢に転生した?
いやいや、それはないだろう。こんな可愛い悪役令嬢なんていないはずだ。
髪は濃いピンク色で緑色の瞳はくりくりしていて、いかにもヒロインって顔立ちなのよ。
誰よ、顔が怖くて悪役令嬢に見えるなんて言う奴は!
悪ガキのハルトお義兄様とかローデリヒお義兄様の相手をしているとどうしても怖い顔になるのよ。
ハルトお義兄様は今もまた悪いことをして、剣術稽古でお父様にボコボコにされてやって来たから治して上げたのに、「ティアナ、少し目がつり上がっているぞ」
ですって!
誰が治してやったと思っているのよ!
そう、あの後、私がヒールを使えるようになったからか、私は治療師として強引にハルトお義兄様達のチームに入れられて、それからも魔物退治に連れて行かれるようになったんだけど……
最初は注意していたお義父様たちもその回数が増える度に、慣れてしまってもうハルトお義兄様達も怒られなくなったんだけど……
いや、ちょっと待って……私は公爵家令嬢なのに、何でダンジョン探検に付き合わされているのよ!
まあ、ハルトお義兄様とローデリヒお義兄様が公爵家特製のケーキをくれると言ったから、付いていった私も悪いんだけど……
ケーキの罠にはあらがえなかったのよ……
そんな私が六歳になった時だ。ハルトお義兄様に婚約の話が持ち上がったのよ。
なんとそれもこの国の王女様と。
ええええ! ハルトお義兄様がお姫様と……何か可笑しくない?
私は笑いたくなった。
まあ、ハルトお義兄様はそこまでの美男子では無いけれど、この国の公爵家の嫡男だし、剣術は強いし、何しろこの前卑怯な手を使って公爵家の騎士団長に勝って喜んでいたし……
その後怒った騎士団長にボコボコにされていたけれど……まあ、騎士団の他の騎士には勝てるようになっていたから大分強くなってきたのは事実だ。
この国の王女様は長女で次の王位を継ぐかもしれないと噂されていた。この婚約が上手くいったらお義兄様は将来は王配になるかもしれない。
まあ、公爵家にはローデリヒお義兄様もいるし後継者は全然問題はないみたい。その下には天才のルーお義兄様もいるし……
でも、待てよ。このハルトお義兄様が王配なんて務まるんだろうか?
絶対に無理だと思うけれど……現に今も王宮に連れて行こうとしたお父様から逃げてこの柱の陰に隠れているし……
「何しているのよ。お義兄様?」
「しーーーー! 静かに! 父上に気付かれるだろ!」
ハルトお義兄様が唇に人差し指を立てて私を黙らせようとした。
「ハルト、どこに行った、ハルト?」
お父様の怒鳴り声が屋敷中に響いていた。こんなとこに隠れていてもすぐに見つかるのに!
「将来の王配なんて堅苦しいことは絶対に嫌だ」
お義兄様がそう言ったが、まあ、このお義兄様には無理だろう。そこは私も頷いた。
「でも、お義兄様、王女様はとても美人かもしれないわよ」
「ふんっ、アンネリーゼが美人なものか。噂によるとメイド達に威張り散らしてふんぞり返っているそうだぞ」
お義兄様に言われたくないだろうと私は思いつつ、アンネリーゼって、どこかで聞いた名前だ。
誰だっけ?
この国の名はロスドルフ王国だから、アンネリーゼ・ロスドルフ!
「ああああ!」
私は大声をあげていた。
アンネリーゼって『ロスドルフのピンクの薔薇』の悪役令嬢だ!
それに伴って今世が何のゲームか判った。
『ロスドルフのピンクの薔薇』だ。
何で今まで思いつかなかったんだろう?
このゲームはアンネローゼの悪役令嬢ぶりが目に付いたゲームで、私はアンネローゼのピンクの薔薇だと間違って覚えていたくらいだった。王女の名前をもっと前もって調べておけば良かった。そうしたらもっと前に思い出したのに!
まあ、『ロスドルフのピンクの薔薇』は私がやったゲームの中でもベスト5にも入らないマイナーな乙女ゲームだ。
私の印象では悪役令嬢のアンネローゼだけが印象に残っていた。
このゲームは男爵令嬢がヒロインで幾多の困難を乗り越えてヒロインが攻略対象と結ばれる乙女ゲームだ。
そんな中、悪役令嬢のアンネローゼがヒロイン相手にやった虐めは凄惨な物があった。
周りの者を使って、無視したり教科書やノートを隠したりするのは可愛い方で、水を頭の上からぶっかけたり、階段から突き落としたり、果ては破落戸を雇ってヒロインを傷物にしようと企んで、婚約者の皇子に阻まれて白い塔に幽閉されるのよ。
そのアンネローゼの婚約者にハルトお義兄様がなるってどう言うことだろう?
確かアンネローゼの婚約者はハルトお義兄様では無くてリーベンブルクの皇子ユリウスのはずだった。ゲームでハルトお義兄様なんて出て来なかったはず……いや、まてよ、そう言えばお義兄様の正式名称はラインハルトだった……
攻略対象の一人ラインハルト・ハウゼンだ。
私は興味なかったけれど、ネット界隈ではワイルドで格好良いと人気だった。
この柱の陰で隠れて震えているのを見ても決して格好良いとは思えなかったけれど……
「おい、ティアナ、俺は震えてなんかいないぞ」
なんか横で愚痴愚痴言い出したけれど、隠れているのは違いないじゃない!
金色の髪、青い目、そういえばゲームの時の面影もある。ゲームではもっと格好良く描かれていたから気付かなかった。
そうか、ハルトお義兄様も攻略対象の一人か? このお義兄様が!
なんか信じられなかったけれど……
ヒロインは確か男爵家に養子で入った平民のはずだから、まだ周りにはいないはずよ。ゲームでは勝手に名前をつけられたから自分の苗字をつけていたけれど……
今はそれどころではない。このまま、お義兄様がアンネローゼと婚約したら、悪役令嬢とお義兄様が婚約することになる。あんな性格の悪い悪役令嬢と家族になるなんて嫌よ。下手したら邪魔な小姑として、王命で年老いた男爵とかと結婚させられるかもしれないし、それだけは避けないと。
こうなれば絶対にお義兄様とアンネローゼとの仲は割かないと。
「ハルト、ここにいたのか!」
そこにお義父様がやってきた。
「ティアナ、お前が大声で叫ぶから」
お義兄様が恨めしそうに私を睨んできた。
どうしよう……このままだとお義兄様とアンネローゼが婚約するかもしれない。
それだけは絶対に避けないといけなかった。
「お義父様、私もついて行くわ!」
私は突然良いことを思い付いたのよ。
そうだ、私も一緒に付いていって、二人の仲を邪魔をすれば良いのよ。義兄のお見合いの場に妹が付いていくなんて普通は絶対にない。
「ティアナ、止めなさい、また今度王宮に連れていってあげるから」
お母様まで出てきて、私を止めようとしてくれたが、
「嫌だ。ティアナもお姫様に会いたいの!」
私はわがままな幼児を演じたのよ。
果ては行きたくないお義兄様と一緒に泣き出した。
お義兄様は泣いてなんかいなかったけど、私と一緒に嫌だ嫌だと叫んでくれたのよ。
「まあ、仕方がないな。ティアナ、大人しくしているんだぞ」
私に甘いお義父様が、折れてくれた。
でも、私はお義父様の言うことなんて聞く気は全くなかった。私はお義兄様の邪魔をする気満々だったのよ。
続きは今夜です。
お楽しみに!








