1.お義兄様に馬になれって言ったら殴らて前世を思い出しました
幾多の物語の中からこのお話見つけて頂いてありがとうございます
「私のお馬になって!」
私はその時、本当に怖いもの知らずだった。
まあ、まだその時は3歳だったから許して欲しい。
私がそう命じた相手のハルトお義兄様は、当時はまだ7歳だったが、今では学生にもかかわらず氷の死神と恐れられているお義兄様に、そんな事を命じていたのだから、3歳児の私は天下無敵だった。
「煩い、俺に指図するな!」
でも、お義兄様も私に負けずに無敵だった。
無敵と無敵がぶつかったらどうなったかって……当然8歳のお義兄様の方が勝つに決まっているじゃない!
喧嘩するも何もない。
怒ったお義兄様が振り払った手が私の顔面を直撃したのよ。
ガキン!
「ギャッーーー」
凄まじい痛みが私を襲った。
お義兄様に殴られた!
私はまだ3歳なのに!
お母様にも殴られたことがないのに!
怒りと屈辱でぷっつんきれた時だ。
私の頭の中に前世の記憶が甦ったのよ。
凄まじい量の記憶が私の頭の中を一杯にしてくれた。
その瞬間私は倒れてしまった。
私はその後、お義兄様に殴られたのと前世の記憶が甦ったショックで三日三晩高熱を発して寝込んでしまった。
私は前世、引きこもりだった。
朝から晩までゲームをしていたのよ。
両親は共働きで、私が中学から不登校になった時、最初はギャーギャー行って学校に行かそうとした。
でも、私が頑なに行くのを拒否したのと、不登校になる生徒が多くなっていたので、両親も仕方なしに諦めたみたいだ。
後でスマホやゲームを小さい時からやっていたら脳の働きが悪くなって不登校を起こしやすいと何かのネツトで見たけれど、そんなのはもう知ったことではなかった。
考えたら私は両親が共働きであったのもあって小さい時からスマホもゲームも与えられていた。
親が手間暇かけずに子供を黙らせるには最適だったんだろう。
そんな私がまともな高校に行けるわけもなく、大学にも行けずにプー太郎になった。いやプー子か……親に寄生して生きていつ死んだかも覚えていなかった。
40半ばで親と喧嘩しているうちにいつのまにか死んだような気がする……
なんか最低の人生だった。
今思うに親の言うように学校に行っていれば良かったのかもしれない。
今世はもう少しまともに生きよう。
私は心に誓ったのだ。
私が気絶してから大変だったらしい。
私の今世の名前はティアナ、ヴァルモーデン男爵家の長女だったが、少し前にお父様が流行病で亡くなっていた。そうしたら元々平民出身だったお母様に、弟夫婦が親戚をバックに難癖を付けてきて、お母様と一緒に男爵家を追い出されたのよ。私はまだ幼かったけれど、これから大変だというのはよく判った。
でも、そんな時に助けてくれたのが、今のお義父様のジークムント・ハウゼン公爵様だ。公爵様も丁度奥さんを流行病で亡くして、3人の子供がいて大変だったらしい。
何故か元平民のお母様とお義父様が意気投合して、2人は再婚したのよ。
信じられない玉の輿だった。
私は男爵家を追い出されたのに、何故か公爵家のお嬢様になれたのだから。
でも、そんな私達を公爵家の子供達がよく思うわけはない。
そんな事も考えもせずに馬になれとハルトお義兄様に言った私はどれだけ考え無しなのよ。
前世の記憶を取り戻した今ならよく判るわ。
でも、私は見た目も可愛い三歳児だ。
多少の失言はかわいさ余って許されるらしい。
可哀相にハルトお義兄様は、飛んで来たお義父様にきついお灸を据えられたらしい。
三日後に私に謝りに来たお兄様の顔はボコボコに腫れていたし……
「ティアナ、すまなかった」
お義兄様は顎を上げて私を見下してくれた。
それが謝る姿勢か? 私は少しむっとした。
バシン!
「痛て!」
しかし、ハルトお義兄様は後ろに控えていたお義父様に思いっきり叩かれていた。
「ハルト、貴様、それが謝る態度か!」
「すまなかった」
お義父様にぎろりと睨まれて不承不承ハルトは頭を私に下げてくれたのだ。
そうそう、素直に謝れば良いのよ。何しろ私は見た目は小さいけれど大人だからね。
私がニヤリと笑うと、ぎろりとハルトお義兄様は睨見返してくれた。
「お義父様。ハルトお兄様の顔が怖いです」
私はすかさずこの場で一番強いお父様にすがった。
「ハルト!」
「顔が怖いのは元々です」
お義兄様は必死に言い訳していたが、お義父様に睨まれて、また私に謝る羽目になったのよ。
私は小さくて可愛いんだから、私に逆らったらお義父様にまた言いつけてやるんだから……そう思った私は浅はかだった。
子供達の間で一番強いのはハルトお義兄様なんだからお義兄様にもっとヨイショしないといけなかったのよ。私は本当に馬鹿だった。
ここまで読んで頂いてありがとうございました。
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今日は三話更新予定です








