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Become Monster Online~ゲームで強くなるために異世界で進化素材を集めることにした~  作者: 亜掛千夜
第五章

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第百二八話 ブルーチェイサー開放

 ブラットが運悪くも死神に見つかり追いかけられるというハプニングはあったものの、なんとか危機は脱し、それからはサクラが作ってくれたマップで、互いの位置や死神の場所をわかりやすく伝えられるようになり攻略も順調に進んでいった。



(あそこ怪しいな……。『ボーングラスパー』か?)



 ブラットが茂みに潜みながら外を探索中に、よく見ると不自然に地面が少し盛り上がっている所を発見した。

 近づきすぎないように気を付けながら接近し、ブラットはソコへ少し大きな石を投げつける。



「アァアアアァッ」

(やっぱり!)



 石が当たった瞬間そこから骸骨が飛び出してきたので、それ以上騒ぎ出す前に魔刃で切り捨てた。

 これはモンスターというよりも設置型のオブジェクトのようなもので、上を通ったプレイヤーに抱き着いて騒ぎ妨害してくる【ボーングラスパー】と呼ばれる罠。


 近くに死神がいれば当然音に気付いてやって来るし、追われている最中に足に抱き着かれでもすれば転ぶ危険すらある。

 探索中に処理できて良かったと胸をなでおろし、前のようにたまたま近くにやってきた死神に物音を聞かれていないか、少し場所を変えて数秒じっと茂みに伏せて警戒する。



(ふぅ、大丈夫そうだね。……ん?)



 ふと『ボーングラスパー』が出てきたことであいた穴に視線を向けると、ブラットは何かがそこに入っていることに気が付く。

 気になって覗きに行ってみれば、そこには『△』のマークが柄の先端についているカギが落ちていた。



『白い三角のカギを見つけた。マップ11のPに台座であってる?』

『うん、そうだよ。パスワードはカタカナで【ドライ】だからね』

『わかった、ありがとサクラさん。じゃあ今からそこに向かう』



 台座は、はるるんが。パスワードはサクラが既に見つけていたので、これで『△』の台座を起動するピースが揃う。

 ブラットは現在『16M』辺りにいるので、南西に真っすぐ行けばさほど遠くないと、すぐに向かうことにした。

 道中【致命の頭蓋骨】をまた発見し破壊しながら、『11P』の座標に到着。

 ここの台座は廃屋の中にあるキッチン、そのシンク下の収納に隠されている。



『今、死神は中央塔の辺りにいる。ブラットの位置ならばれないはずだ』



 はるるんは途中で【暗視ゴーグル】を拾い、観察者オブザーバーとして死神を逆に追跡し観察する役割を担っていた。

 【暗視ゴーグル】越しなら視線に気づかれないという利点はあるのだが、追跡中に何かの罠を発動させたりするだけ一気に危険になると、自分の周囲の警戒も怠れないので実際にやろうとすれば難易度は高い。


 彼のがんばりに感謝しながら、ブラットは罠に注意しながら廃屋に入り、シンク下の収納棚を開ける。

 すると中が一段掘り下げられた場所に、『△』の台座が鎮座していた。


 台座の中央下にある鍵穴に先ほど拾ったカギを入れると、そのままカギはカチカチと音を立てながら穴に吸い込まれるように消えていき、パスワードの入力画面が座面に表示された。



(ドライ──っと。よしっ、逃げよう)



 パスワードを入れた瞬間、台座が起動しはじめ全体がキラキラと輝きはじめる。それを横目に確認しながら、ブラットは急いで棚の扉を閉めて廃屋の外に逃げていく。

 なぜなら台座を起動させると、一〇秒後に大きめの起動音が鳴り響き周囲にそのことが伝わってしまうからだ。


 はるるんが見ていてくれているので大丈夫だとは思うが、また何か思いもよらない不幸が重なって見つからないとも限らない。

 ブラットはあのときのことはトラウマというほどではないが、その衝撃は未だに拭い去られておらず、そうならないよう急いで離れた茂みの中に生えた木の陰に入り込む。



(けっこう大きいなぁ。もっと静かに起動してよ)



 近くで聞けば明らかにあの家で台座が起動したとわかる「キュィーーーン」という起動音が鳴り響き、ブラットは苦い顔をしながら一つ目の──『△』の台座を起動させることに成功したのだった。




 その後も全員が一丸となって探索していき、カギやパスワードより比較的見つけやすい台座は、既に起動させたものも含め『★』『△』『□』『◇』『◆』『〇』の計六個が見つかった。

 さらにその内、ブラットが『△』、HIMAが『〇』を起動させた状態で今、しゃちたんが三つ目の台座『◇』の起動パスワードを入力──というところで、次への動きについて軽く打ち合わせをはじめていく。



『いよいよね。三つ目が起動したら、最初に三体のブルーチェイサーたちを生み出すから気を付けて』

『今までは能動的に動いてたのは死神だけで、そこさえ見ておけばよかったが、これからは他にも注意をする必要が出てくるってわけだ』



 開始から召喚までの時間で『ブルーチェイサー』の性能が強化されていってしまうので、ギリギリまで放置し一気に台座を起動──というのは悪手に繋がりやすい。

 なので早めに最初の三体の青レイスを、ここで呼び寄せることを決断する。



『レイスってペナルティくらうけど倒せるんだよな?

 八体全部揃う前に、最初の三体をやっちゃうってのも手じゃない?』

『ペナルティも一体だけならまだ──って感じだしね。私もブラットの意見に賛成かな』



 HIMAが続いて賛同してくれる。



『最後の方になると死神の権能も全て解禁されているから、実際問題八体もレイスがいたら一気に全滅する可能性すらある。

 俺もその意見には賛成だが、やるとなると、どのパターンでやるかという話になる』

『そんなにやり方があるの?』

『私たちのやり方ってだけだけど、基本的に三パターン対処法があるんだよ、しゃちたん』



 そう言ってサクラが、これまでの彼女たちのやり方によるパターンを説明してくれた。


 一つ目は、三人が順に一人一体ずつレイスを始末し、順番に三分の位置ばれペナルティの間、他の四人が全力でフォローして三人全員を無傷で守り切るというパターン。


 二つ目は、ペナルティを受けたらあえてすぐに捕まり檻の中で三分消化してから、仲間の救出を待ち、救出したらまた二人目がレイスをやって──という一番楽といえば楽なパターン。



『なら一人で二人やって、檻の中で二体分のペナルティを過ごせば──と考えるのもいるかもしれないが、檻の中で消化されるのは一体分だけで、二体目の分は律儀に解放されてから再発動して一〇分間って感じになるから意味がない』

『それにその一〇分間で捕まれば二回目。退場にリーチがかかっちゃうから、これはお勧めできないの』

『うまくできてるな、ほんと』



 三つ目は、三人で一体ずつ同時に一気に倒し、死神の気を分散させ三分間を乗り切る。三人同時なら負担は三分で済むじゃない?という、かなり力技なやり方ともいえるだろう。

 ただしこちらは三人とも捕まると過半数を切ってしまうので、救出側がかなり苦労する羽目になる。



『三つ目がおもしろそうだ』

『二つ目は二回まで捕まっても死なない権利を無駄に消費する気がして、私は嫌だな』

『うーん、私もなにもせずに捕まるのはやかも。一つ目が現実的で一番よくない?』

『しゃちたんが言うように、一つ目が一番時間がかかって面倒だが確実性は高い。

 だがな。その間全員でフォローすることで、序盤でこちらの手札をみられ、アイテムも消費することにも繋がるというのがデメリットがある』

『あの死神のAI、すっごい学習能力が高いんだよ。一度やられた罠や攻撃はきかん! って感じでね』



 【ホーリークラッカー】などは対死神用のアイテムなので、その限りではないが、プレイヤーの個人技で攻撃を弾いたり罠に嵌めたりというのは、効果的なのは精々最初の一回のみ。

 ブラットがやった【聖灰】からの石で足音を偽装──という作戦も、二度目はもう引っかかってくれないと思っていい。

 攻撃で大鎌の弾きも初見以外は見切られ、カウンターでバッサリという例を、はるるんもサクラも、自分たちやネットに上がっている動画で何度も見たというくらいに的確に。



『死神は後半になるにつれて、特殊技能が解放されていく。

 まだかなり制限がかかった状態のあいつに、今から学習させるのは後に響く可能性がある』

『案外そっちで最後までいけちゃった~っていうことも、あるんだけどね。

 二つ目は素直に捕まることで、こちらの手札をほとんど温存できるっていうメリットはあるんだよ。

 だから結局どれを選んでもメリットもデメリットもあるし、そのときの状況や運にも左右されちゃうから、皆の好みでいいと私は思う』



 あれやこれやと意見を手早く交わしていき、ブラットが面白そうといった三つ目の選択肢に決まった。

 結局ゲームは失敗しようが、楽しんだものが勝ちなのだからと。



『じゃあ誰がという話になるが俺は、俺、サクラ、しゃちたんがいいと思う』

『そうだね。最悪、私とはるるんで時間を稼いで、ブラットくんとHIMAちゃんに、しゃちたんちゃんをフォローしてもらうっていう形にもできるし』

『逃げ足ってことならSTの概念がないここなら、ブラットがこのメンバー最強だろうし、HIMAも上位のプレイヤーだしね。

 この二人なら案外、次の二体のとき無傷で逃げられそう』



 今回の場合、五人全員脱出で望む結果を得られるが最悪でも、しゃちたんだけが逃げられれば、他の四人のデスペナルティあけにすぐ再挑戦することもできる。

 だが、しゃちたんが逃げ切り失敗すると不動石からは死亡判定され、また別のしゃちたんとして前の四つの試練からやり直しという面倒な事態になってしまう。


 だからこそ、はるるんもサクラも、しゃちたんだけはまだ無傷でいてほしいと考えていた。



『死神だって馬鹿じゃない。三人いっぺんに居場所がわかっても、どれにしようか迷って時間を消費するなんてことは絶対にない。誰かに標的を絞って順番にやりに来るはずだ』

『だったら、はるるんとサクラさんで先にヘイトを買って時間を稼いで、残りの時間をオレとHIMAで、しゃちたんを守り切った方が現実的ってわけか』

『それで四つ目の台座起動で出てくる次の二体は、私とブラットでやって他三人がフォローって感じになると……。うん、私としても、それでいいですよ』

『なら決まりだな。しゃちたんがパスワードを入力ししだい、全員でレイスの捜索。頃合いを見計らって、三体同時に処分ということで』

『『『『了解』』』』



 はるるんがそう纏めたところで、いよいよしゃちたんがパスワードを入力していく。



『えーと……ここのは【たいや!】っと。入力したからね!』



 しゃちたんはそう言って台座から離れ逃げていく。

 『◇』の台座は茂みの中に隠されるよう野ざらしになって設置されているので、屋内よりもさらに音が響くのだ。


 ブラットはいよいよレイス投入かと、少しワクワクしながら子供が入れそうな朽ちた木箱を背に身を潜め、レイスが召喚されるときを待つ。


 その頃、死神を見張っていたはるるんは、死神が立ち止まり空に手を掲げ呪文を唱えだしたのを確認した。

 そして天に向かって口を大きく開け、そこから青い魂のようなものが三つ飛び出し、周囲に散っていく。



『召喚が終わった! 死神は6C付近でレイスの魂が東、南東、南の方角に飛んで行った! その方角にいるものは注意しながら空を探してくれ』



 途中で方向転換する可能性もあるが、何の情報もなしに探すよりはましだ。

 全員地図に目を向け、自分の位置からレイスの魂が死神から飛び去った方角を確認し空を見上げる。



『あっ、今青いのが上の方を通り過ぎてったよ! そっちに行ってみる!』

『こっちも遠目に青い光を確認。縦軸Cあたりを維持したまま東に進んでいった』

『空が暗いからわかりやすいね。南下した個体が途中で西に進路を変えて、3N辺りに降りていきました!』

『3Nなら私が近いかも。HIMAちゃん、私もそっち行くね』



 他の四人もすぐに青い魂の軌跡を報告し合い、テキパキと自分のやるべきことを判断していく。

 ブラットは東に飛んだレイスを、しゃちたんは上の方を通過しマップ右端に向かって飛んでいくレイスを追う。

 HIMAは見つけたレイスにサクラが向かっているので、それを待ちながら監視を続けた。


 効率的に動いたおかげで、三体のレイスの居場所もすぐに発見することができた。


 死神を放置するのは恐いので、ひとまず、はるるんはブラットに【暗視ゴーグル】を渡し観察者を交代。今はブラットが見つけたレイスを、はるるんが尾行中。

 サクラはHIMAが見つけたレイスを、しゃちたんはHIMAと二人で自分で見つけた今現在、一番死神から遠いマップ右端のレイスを尾行。

 これで作戦に上がった三人が、すぐにでもレイスへ攻撃を仕掛けられる態勢が整った。



『作戦通りに行くぞ。まず今現在、一番死神から近い俺が最初の陽動をする』

『その間にオレは死神の観察を止めて、しゃちたんの方に行って二人と合流。しゃちたんのフォローの準備』

『はるるんが捕まったら、今度は私が陽動に出て、できるだけ時間を稼いでしゃちたんにバトン──この場合死神だけど……を渡すと。

 HIMAちゃんとしゃちたんも、準備はいい?』

『大丈夫です』『おっけー』

『じゃあ、ブラットの合図で一斉にやろう。レイス自体はそんなに強くないから、サクラやしゃちたんの火力でも一撃でやれるはずだ』

『オレが合図を? わかった』



 ジリジリと三人はレイスにバレないよう、距離を詰めていく。



『いける』

『いけるよ』

『同じく、いけそう』

『了解、いくぞ────五秒前、四、三、二、一、──GO!!』



 ブラットのカウントダウンに合わせ、三人はほぼ同時にレイスに気づかれる前に飛び出した。

 はるるんは身長に見合わないほど大きな棘付き金棒を振り上げ、レイスを脳天から叩き潰す。

 サクラは両手から出した細く頑丈な魔力のこもった糸を使い、レイスを絡めとってバラバラに切り刻む。

 しゃちたんはブラットたちとの期間限定イベント後に取得した【鞭使い】の職業補正が乗った、【雷鞭】で思い切り背中を叩いて弾き飛ばした。


 しゃちたんが若干遅れたが、一秒程度は誤差の範囲。ほぼ同時にレイスが撃破されたことで、解呪不能の【カース・オブ・ブルーチェイサー】がその身に降りかかり、死神にその正確な位置が三分間伝わるようになってしまう。



「おっしゃ、行くぞコラー!!」

『がんばれよ、はるるん』



 もうばれても構わないと、はるるんはスプリガンとしての能力を開放し、小さなおじさんから巨人のおじさんへと変貌を遂げる。

 ついでとばかりに先ほど見つけて壊そうと思っていた、ブラットが最初に追われる原因にもなった死神の転移用の杭を、今は身の丈に合った金棒で叩き折って、さらに挑発していく。



「おらおら! こっちにこいよ、ガイコツ野郎!!」

「ゲケケケケッ!!」



 距離的にそう大差のないサクラと一瞬迷いはしたようだが、杭を折られたことで死神はすぐに決断し、はるるんのいる方へと怒りながら全力で飛んでいく。

 それを見ながらブラットは、しゃちたんとHIMAに合流すべくマップ右端に向かって移動を開始した。



『オレは行くからな。がんばれよ、はるるん』

『ふっ、ブラットよ。別に俺だけで三分逃げ切っても構わんのだろう?』

『いや……それもうフラグにしか聞こえないんだけど…………。とにかく……うん、健闘を祈る』

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