屋上
先生の支持に従って教室に戻ったが、巫はその日戻ってこなかった。
次の日。
俺が教室についても巫はいなかった。
休みなのか?
予鈴がなって先生が来た。
「あら?巫さんは来てないですね。
誰か知っている人はいませんか?」
先生が出席を取りながら尋ねたが、入学式の翌日ということもあって、誰も知らないようだ。
カラカラ…
そこに巫がそっと扉を開けて教室を覗き込んで来た。
仕草が小動物っぽい
「巫さん!遅刻ギリギリですよ!」
巫は謝りつつ席に着いた。
「さて、これで全員出席、と」
出席簿を机に置いた先生は今日の予定について話した。
「今日は能力検査です。
中学校でもやったとは思いますが、能力値が変わった人もいると思われるので実施します。
今日の結果で校章を配りますので皆さん全力を尽くしてください。」
先生はそう言って出て行った。
アッサリとした先生だな…
「あの、おはようございます。石垣くん」
ぼうっとしていると巫が挨拶をしてきたので、挨拶を返す。
「おはよ。ところで聞きたいことがあるんだけど」
「何ですか?」
「巫はFランクだよな?」
「はい…すみません」
「いや、俺もだから気にしなくていい。俺が聞きたいのは、本当にFランクなのかってことだよ」
「えっと、それは私が嘘をついてると思われてるんですか?」
巫が少し悲しそうな顔をした。
「そうだな。そう思ってる。もしくは、ランクを測った時より、成長したんじゃないか?」
「いえ…入学前に測ったのでそんなことはないと思いますけど」
「じゃあ、何でSランクにすら構築が難しい最上級魔法が使えたんだ?」
その言葉を聞いた途端巫は俺の手を掴み、教室から出た。
そのまま黙りこくって俯いている。
「あのー…巫さん?」
もしかしてまずいことを聞いただろうか…
もういいと言おうと思った時、巫がガタッと音を立てて立ち上がった。
そのまま教室から連れ出され、興味津々と行った様子のクラスメイトたちの視線が向けられたが、追いかけてくるものまではいなかった。
まあ、もうすぐ、授業が始まるしな。
巫は階段を登り、屋上の扉の前で止まった。
「屋上は開いてないんじゃないか?」
巫は扉に手をかざし…
「解除」
鍵を開けてしまった。
バレたら怒られるだろうな、これ。
初めて入った屋上は意外ときれいだった。
扉を閉めた巫は今まで閉じていたその口を開きーー
「どうして、記憶が消えてないの?」
飲み込まれそうな瞳でそう言った。