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散文詩  作者: 百島圭子
44/59

散文詩 44 「昭和歌謡♪恋の奴隷」

日々、心に残ったことを文字にしてみた


「昭和歌謡♪恋の奴隷」


♪あなたに会ったその日から恋の奴隷になりました

あなたの膝にからみつく子犬のように

だからいつもそばにおいてね

邪魔しないから

悪い時はどうぞぶってね

あなた好みのあなた好みの女になりたい ♪


私が生まれた頃に奥村チヨが歌った昭和歌謡曲だ。

奥村チヨは小柄で可愛い歌手だった。

相当ヒットしたのだろう。私は今でも歌えるくらい覚えている。


昨今の風潮からしたらとんでもない歌詞を、物心つきたての純真無垢な幼い私は覚えて歌っていたのだ。 おそろしい。


「恋の奴隷」って、奴隷なんて植民地時代の悪しき制度を恋愛に持ち込んで、「悪い時はどうぞぶってね」って、DVを受容し助長している。

「いつもそばにおいて」くれるのなら叩いてもいいわよって、SM趣味なのだろうか。

「あなた好みの女になりたい」とは男女同権、女性尊重のフェミニズムとは全く相容れない。フェミニズム運動はとうに始まっていた時代だったろうから、日本は遅れていたのであろうか。


(2番)

♪あなたを知ったその日から恋の奴隷になりました

右と言われりゃ右向いてとても幸せ

影のようについてゆくわ

気にしないでね

好きな時に思い出してね

あなた好みのあなた好みの女になりたい

あなたにだけ言われたいの可愛い奴と

好きなようにわたしを変えて

あなた好みのあなた好みの女になりたい ♪


「右と言われりゃ右向いてとても幸せ」言われるままに従うことが幸せと公言している。

「影のようについてゆくわ」女は男より三歩下がって師の影を踏まずっていう理念だ。

影のようになった上で「気にしないでね」って、存在を忘れちゃって「好きな時に思い出して」くれればいいって。もうそれは生霊なのか。


いつも黙って影のようにそばにいて、何も主張せず、邪魔でもしようものならぶっ叩いて、忘れてしまえる女が昭和の男たちには「可愛い奴」と思われていたのだろうか。

「膝にからみつく子犬」でもペットとしての地位を確立して、忘れられることはないだろう。


今考えるとちょっと不気味な女だ。こんな女の人って本当にいたのだろうか。

少なくとも私の周りの下町の昭和の女たちは、うるさく自己主張して男の影を踏んで追い越し、「忘れたのぉ!?」と買い物を頼んだのに買い忘れた男たちを罵倒していたように記憶している。

私の周辺に恋の奴隷はいなかった。


作詞のなかにし礼は男性だから、こういう女の人がいたらいいなぁという願望を歌詞にしたのではないだろうか。

悲しい男の幻想か、もしくは子供の私の知りえないこんな女の人たちのいる竜宮城のようなところがあったのかもしれない。

昭和歌謡は面白い。




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