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散文詩  作者: 百島圭子
42/55

散文詩 42 「敬語」

日々、心に残ったことを文字にしてみた

「敬語」


テレビを見ていると、敬語が気になって仕方がない。

やたらと「いただく」を使う。「いただく」とさえ言っておけば、言葉が丁寧になっていると思うのだろうか、理解できない。


「いただく」が「~をもらう、食べる」などという動詞の謙譲語のときは、自分の行為にしか使えない。謙譲語は自分の行為を下げて表現する敬語だ。


「とっても美味しいです。あなたもこのハンバーグ、いただいてください。」


ハンバーグを食べるのは、話し手ではなく相手なので「食べる」の尊敬語「召し上がる」を使って「あなたもこのハンバーグ、召し上がってください」と言ってください。


謙譲語は自分を下げる、尊敬語は相手を上げる。


「お~する」「お~なる」もちゃんと使われることが少ない。

「お会いする」のは自分で「お会いになる」のは自分以外の人間だ。

「あなたは○○さんにお会い()()んですか?」 ではなく「あなたは○○さんとお会いに()()()んですか?」と言ってください。気持ちが悪い。


身内を下げて表現することも少なくなった。「愚妻(ぐさい)」などと言うとどっかの団体から苦情がくるのだろう。


しかし、身内に敬語を使う芸能人には閉口している。日本語が気持ち悪い。

「お母さんに作っていただきました。」と公共の電波で言ってのける。気持ちが悪い。


「母」と言って欲しい。5歳には見えない日本人が、公共の電波で他者に対して自分の母親を「お母さん」「ママ」と表現していると、赤ちゃん返りしたのかと日本の未来を憂えてしまう。


敬語を正確に使うには、他所よそと内という境界が、どんな場面でも分かっていないといけない。


社会人になって会社で働くとわかるが、社内では部下は上司を上にして敬語を使用するが、取引先では取引先を上にして敬語を使用し、上司を取引先より下にして敬語を使用しなければならない。


家の中ではラブラブでハニーと呼んでいる妻でも、一歩外に出たら、夫は他者に対して妻を「愚妻」と表現する。それが日本語だった。


若い時に日本語の先生から、今は子供に「あげる」と言うんですね、と言われたことがある。私はどういうことかよくわからなかった。先生が言うには、昔は子供には「やる」を使っていたそうだ。子供に「~してあげる」ではなく「~してやる」だったそうだ。


言葉は時代とともに変容している。私のこの気持ち悪さもいつか当たり前になって、総理大臣が「お父さんがいらっしゃって選挙を応援してくださいました」とか言う日本になるのだろうか。


日本語の変容がこれ以上進む前に、私の寿命がくることを願う。




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