34/54
散文詩 34 「機械の精算機」
日々、心に残ったことを文字にしてみた
「機械の精算機」
普段あまり行かないスーパーに行った。
バナナが100円だ。安い。バナナは買うことにしたが、他に欲しい物がない。
それでも何か買うべき物がないか、スーパー中を隈なく見て回った。
欲しい物がない。
私は財布に一万円札しかないことがわかっていた。カードを使うので現金を持ち歩かない。
100円の支払いにカードも一万円札も気が引ける。レジの人に「すみません、一万円札しかなくて」と言い訳をして謝らなければならない。
仕方なくそんなに食べたくないロールケーキを買うことにしてレジに行った。
レジのおばさんはピッとバーコードを読み取る作業だけをした。支払いは機械でするのだった。こういう仕組みのスーパーが多くなった。
私は機械に一万円札を入れて、一度も謝らずに、安かったバナナとそれほど食べたくないロールケーキを手にスーパーを出てきた。
もし子供の時から精算をするのが機械だけだったら、私は「レジのおばさん、ごめんね」っていう気持ちを持たないし、その感情の存在を知らなかっただろう。
人と関わらなくなることで感じられなくなる気持ちや、失われている感情がきっとたくさんあるのだろう。




