第15話 なんでも屋のビトク
潤とビトクは、『ノア』に帰還し、いつもの『ないとめあ』のメンバーがいる会議室に足を運び、思ったより帰りが早いなと驚くボス一同。
その『ないとめあ』のメンバーの目の前に立ち、これまでの報告をする。それから、恋がどういうモノかもだ。
「ミカエルさんっ!それに皆さんっ!聞いてくださいっ!恋が分かりましたっ!」
「「「え、え~?!!」」」
ビトクの報告に『ないとめあ』メンバー全員が驚いてしまう。たった一度、九重優に接触しただけで、自分達が知ろうとしている恋を知ったのだから。
「恋は、病ではありませんっ!」
「「「えーっ?!!」」」
恋が病と思っていた『ないとめあ』は、口を揃えて驚く。では、恋はなんなんだろうか?
「ほら、ミカエルさんがあの・・・その、キスしてくれたでしょ?」
「う、うん・・・あなたに病がかからないように、予防セッチュウというアイテムを使ってね」
「それを使ったのに、胸がきゅんってなって苦しいんです。顔も真っ赤になっちゃってて・・・だから・・・はぅっ」
ビトクは、九重優の姿を思い浮かべつつ、ボスに報告していると、顔が真っ赤になって、ボフンという音と共に顔や耳から湯気が出るという、ベタな恋愛漫画的リアクションをしてしまう。
そんなビトクのリアクションを見たボスは、手をアゴに添えて、いかにも考えていますよアピールをし、口を開く。
「あらら・・・ザドキエルみたいな反応ね。病じゃないとなると・・いったい、恋ってなんなんだろう?興味深いわ」
恋について真剣に考えるボス。だが、考えるだけでは恋を知る事は不可能。なので、潤とビトクに恋とは何なのかを聞かなければならない。しかし、聞いた所で、理解できるのだろうか?
そこで、ボスはある事を思いつく。それは・・・
「こうなったら、九重優にここに来てもらうようにしましょう。これ以上、犠牲を増やす訳にもいかないしね」
九重優を『ノア』へ連行する事であった。
「えっ?!い、いいにょ?!ボス!キケンじゃないにょぉ!?あぅ・・かんだ」
言葉をかんだ事によってウルウルと目に涙を浮かべるガブリエル。そして、他のメンバーも、反論するのだが・・・ラファエルは皆の意見を遮って、口を開く。
「九重優に直接、恋とは何かを聞くの?でも、ここに連れてくる意味はあるの?ボス」
頭脳派のラファエルはボスの真意が分からないでいた。ボスはボスなりに考えがあっての事らしい。
「うん、そうよ。ていうか、皆、九重優に会いたいでしょ?だから、ここに呼んじゃえと思ってね」
いや、あまりよく考えていないらしい。が、ボスの意見は、メンバー全員とビトクの心に届き、全員は賛成の意を表すかのように、笑みを浮かべ、頭を頷けさせる。
「ふふっ、満場一致で、九重優をノアに連れてきて、九重優にいろんな話を聞くわ。それでは、ザドキエルっ!早速、九重優をノアに連れてきてちょうだいっ!」
「うんっ!待っててねっ!ボスっ!」
潤は「どこでも行けるくん」を使い、九重宅の近くへとワープし、そのまま九重宅に帰宅したのであったーー。
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side 九重 優
オレは我が家のリビングにある、ソファーにて、ダラダラと過ごして、今日は変な一日だと、非常に困っていたのである。
何故なら、見知らぬナース服を来た女性が我が家に訪問して、潤がこの家に居候している事を知っていて、ヤツは潤の事が心配でオレに潤の調子を聞いてきた。
そして、心配しているという事を潤に知られたくないと外で話す事になったのはいいのだが・・・自分の事を殺し屋だと豪語したのだ。
見た目はその反対なのにだ。しかし、潤の友達とも言ったので、電波な話で盛り上がっているのだろうか?親がいない潤にとって、友達が欲しいだろうから、あの自称殺し屋はその事を気遣っていたのだろうか?もしそうだとしたら、優しい子なのだろう。
「はぁ・・・」
オレはため息を吐いた。これ以外、何のリアクションを取ればいいのだ?教えてくれ、偉い人よ・・・
「どうしたの?優。元気ないわね」
オレの母親はオレが元気がない様子に気づき、心配してくれる。嬉しい事は嬉しいのだが、オレが体験した話は絶対に信じないだろう。でも、少しぐらい、いいかもしれない・・・
「なぁ・・この近所に宇宙人とか殺し屋とかいると思うか?」
「ほぇ?」
母親は耳を疑ったようだ。それもそうだろう、オレの話は唐突すぎて訳が分からないだろう。ってか、甘えたような声で、ほぇとか言うなよ・・恥ずかしい。
「ほう、面白そうな話じゃないか。詳しく聞かせてくれないか?優」
父親はソファーに座り、新聞紙を広げ、小説のネタを探しているらしい。だが、オレの話に興味津々なご様子でメガネをキランと光らせる。
「・・・見るからに人間そのものなのに、ソイツは自分は宇宙人だって言うんだよ。それから、その宇宙人はオレを殺すだのなんだのと危ない事を言われてな?」
「む?体験談か?しかし、面白い体験してるな!わははっ」
オレの話を面白おかしく聞いている父親に呆れながらも、オレは話を続けた。
「ソイツはいきなり、オレに襲いかかったんだ。まぁ、オレはほぼ無傷で助かって、なんだかんだで殺されなかったけどな」
「ほぅ?続けろ」
父親はメモ帳を手にして、ペンを走らせる。もしかして、この話を小説化にするつもりなのか?
「でも、おかしかったんだ。人間とは違う何かが違ったんだ」
「何が違うんだ?」
「力だ。その自称宇宙人は、素手でコンクリートを粉砕したんだ」
「何っ?!」
オレの体験談に耳を疑う父親。さすがに現実味がない話となった。だから、眉をピクリと動かして、お前何言ってんだ?と言いたそうだ。
「優・・お前、どうかしてるんじゃないのか?熱があるんじゃないのか?」
「そうだわ、有希が聞いたら失望しちゃうわ。ちょうど学校に行っているから、居ないで助かるけど」
母親もオレを真剣に心配してくれる。いつもはこんな現実味がない話はしないので、当たり前な反応だ。
「確かにバカバカしい話だな・・・もう忘れてくれ」
オレはソファーから立ち上がり、リビングを去ろうとしていた。
「ちょっと待った。殺し屋の話は?小説のネタになりそうなんで、聞きたいんだが・・・」
だが、父親に腕を捕まれ、逃亡を防がれた。バカにしているから、ネタだとか何とか言うのだろう。
「自称殺し屋は、ナース服を着ていた。ただそれだけだ」
「ぷっ!何それ?!おもしろっ!」
オレの話に笑い出す母親。完全にバカにしているだろう。
「ほほう、おもしろそうな話だなっ!わははっ!」
父親も母親と同じように笑いだす。もういい加減にしろよお前ら。
「おっ?小説のタイトルが思いついたぞっ!名付けて、ラブトリガー!宇宙人と殺し屋のドタバタラブコメディー!これはいけるぞっ!わははっ!」
父親は豪快に笑いながらリビングから姿を消して、自分の部屋にこもって新作を執筆するという。
「有希には言わないようにしてあげるわ」
母親はオレをなだめるように優しい声で語りかけてくる。だが、何故そこで有希の名前があがるのだろう?
「好きにしろ・・はぁ」
オレは真意が分からず、ため息を吐くしかなかったのであったーー。




