第9話 部活をやろう
久しぶりに軽音楽部の事が書けて嬉しいです。
さて、登場人数が多いみたいで、イラストを載せてはいかがだろうかと案があるのですが、私は絵心がないので不可能です。
「で?楽器はどうするんだ?まぁ、ボーカルという手もあるが・・・」
「あ・・・そ、それは・・・」
オレ達軽音楽部のメンバーと潤は、部室にある長イスに座り、今回の相談に乗るのだが・・・潤がオレが所属する軽音楽部に入部する気があるらしい。だが、肝心の楽器がないのだ。
部費では楽器を買えないし、所持金もほとんど持っていないだろうし、どうしたものかと潤とオレは考えるが・・・金がない事に途方に暮れてしまうしかないオレ達。
それに、潤に何をさせるかだ。
すると、オレ達の悩みを解決する事が出来るであろう、軽音楽部顧問の吉村明日香の登場だ。
吉村先生は、オレのクラスの担任兼部活の顧問なので、ほぼ毎日のように会う訳なので、吉村先生とオレは少しばかり仲が良い。
「あら?あなたは・・・そう、この部の見学ね?九重くんが誘ってくれたの?」
吉村先生は潤を見て状況を把握したらしく、潤をこの軽音楽部の見学に誘ったのかという事をオレに尋ねてくるので、オレは頭を頷けさせる。
「へぇ~・・・そうなの。で?入部してくれるの?夕崎さん」
「は、はいっ。で、でも・・・何を演奏したらいいのか・・・」
潤は自分に楽器を買う金がない事と自分は初心者だという事も吉村先生に伝えて、吉村先生は右手を握り拳にして、顎に当てて唇を尖らせて集中していく。ちなみに、これは癖だそうだ。
「う~ん、なるほどね~。皆はこれで悩むんだよね~。あっ、初心者も大歓迎だから心配しないでね?夕崎さん」
「は、はいっ」
「そうね~・・・あ、そうだっ!キーボードは?ちょうどこの部室の物置にあったのよ~」
相変わらずの、のほほんとした声の持ち主の吉村先生は、第三音楽室の奥にある物置部屋へと姿を消し、しばらくすると、ピンク一色のキーボードと一緒に姿を現した吉村先生。
「こんな事もあろうかと、初心者でも上達できるキーボードを私が買ってここに置いていたのよ~」
準備がいい吉村先生に賞賛の拍手。まさかキーボードを用意していたとは考えてもいなかったオレ達。やはり顧問だから、軽音楽部の事を想っているのだろう。
「これはね?鍵盤が光って弾く所を指示してくれる光ナビっていうものが搭載されているの。あと、液晶に弾くのに大切な事も表示されるんですって~」
吉村先生が用意してくれたキーボードは、初心者の為に作られたキーボードであり、ステップアップ機能も搭載。正しい指使いをガイドしてくれる運指音声機能や上達度が分かる採点機能を搭載しているという優れモノ。
そんな値が張りそうなモノを初心者にあげるという懐の深さに、潤は感謝の言葉を言い放つ。
「あ、ありがとうございますっ!せんせっ」「いいのよ~。で、それよりも、九重くん?少しばかり話があるんだけど、いいかな?」
何事なんだろうか?吉村先生はオレに話があるというのだが、今回は何もしていないぞ?何かしたっけか?
「なんですか?先生」
「夕崎さんと知り合いなの?朝から気になったけど、夕崎さんはあなたの事を慕っていたっぽいから」
吉村先生の尋問にギクリとした。しかし、驚いた顔は浮かばせていないオレ。少しも顔を変えるとオレと潤との関係に何かがあると気づかれる可能性が大だからだ。
「いいえ。今日会ったばかりです。な?」
オレは潤に向かって顔を向けて、潤を真剣に見つめてオレの話に合わせろとアイコンタクトを送るのだが・・・潤は頬に朱を浮かばせ、『う、うん』と歯切れの悪い返答をする。
「そうなの?九重くんは嘘は言わないし、信じるわ~」
オレの話と潤の証言を信じ、のほほんとする顧問。人の話は割と信じる方なので安心なのだ。
「じゃあ、とりあえずミーティングね。キーボードが増えたし、いいバンドになるから九重くんを中心に色々と話し合いしましょう~。あ、夕崎さんは、その間キーボードを触っててね?」
部員が一人増えた事で演奏の幅が広くなるので、この先どのような演奏が出来るのかを知恵を振り絞るオレ達軽音楽部は、潤の初心者レベルのキーボードの音色と音が鳴る度に潤の『おおっ!』という興奮している声を聞き流しながら、ミーティング。
「・・・でだ。バラードの曲をだな・・・」
「うんうんっ。やっぱり、九重くんは頼りになるわね~」
吉村先生に褒められつつ、ミーティングをしていくと・・・
「ねぇねぇ~。このオタマジャクシみたいなの何~?優~、教えて~」
潤は甘えた声でオレに頼ってきたのだ。潤の異常を察知した高橋を率いる乙女達は、耳を疑った。いくら慕われているとはいえ、男女がこんなに仲良くなれる筈はない。恋人や家族ならばこんな些細な事を心配しなくていいのだが、学校の中ではオレと潤は恋人でも家族でもないのだ。
「ね、ねぇ、九重くん・・・本当に夕崎さんと知り合いじゃないの?夕崎さんは、あんなに九重くんに頼っているよ?」
橘恵子の質問にオレはどう答えるべきなのだろうか?しかし、その質問は潤に言うべきではないのか?オレが答えられる質問ではないぞ。
「知らねーよ。多分、アイツの前世が人懐っこい犬だったからじゃね?」
答えが見受けられないので、適当に答えてやったのだが、どこか納得したのか全員頷いていた。
「もぉっ!誰が犬なのっ!私は宇宙人なのっ!」
『は?』
潤は口を尖らせ、自分が犬ではなく、またも自分が宇宙人だと豪語し、耳を疑う五人は声を揃えて疑問の声をあげる乙女達・・・アイツの過去がどれだけ悲惨だったかを知っているが、その事情を知らない吉村先生率いる乙女達は首を傾げていた・・・はぁ、仕方がない・・・フォローしてやろう・・・
「そうだな。もし、宇宙人がいるなら、その宇宙人から見てオレ達も宇宙人だからな」
オレのフォローにより、どこか納得している吉村先生達。しかし、オレのフォローが気になったのか、高橋葵は首を傾げ、チェリー色の薄い口を開く。
「なぁ、九重・・・なんで夕崎さんの宇宙人説を信じるんだ?お前はオカルト的な存在は信じない方だっただろう?」
高橋葵の発言に潤以外の人物はうんうんと頷く。確かに、俺はオカルト的な存在は信じないし、そういう話も部活やっている時に、ほのめかすように話した記憶もあったのだ。しかし、今回は信じてしまったのだ。潤の発言をフォローしてしまったがためにな・・・
「ああ・・・だが、居たとしてもオレらの人生に全く影響しないから、別にいいんじゃね?と思ってな・・・」
オレは知恵を振り絞って反論するのだが、オレはアドリブが得意なので、言い訳はすぐに浮かんでくる・・・しかし、これがいつまで保つのか分からないな・・・
「んで、どれよ?分からん所ってよ・・・」
オレは立ち上がり、潤に近寄り、潤が液晶画面に映っている音符を指差して首を傾げる仕草を見せる・・・どうやら潤は楽譜が読めないらしい。オレは出来る限り丁寧且つ優しく教えてやったのだ。
「・・・んで、音符はラインで覚えろ。そうすると・・・」
「・・・あっ。そっか~、そうするとスラスラ読めるよ~」
潤は音符が読めるようになったらしい。だが、オレが潤に指導している時からずっとオレ達を高橋葵や佐藤千枝がニヤニヤして見守っていたのだ。
「ふーん?へぇー・・・ふーん・・・」
「そっかそっか・・・やっぱりね・・・」
オレを嘲笑うかのようにニヤニヤと笑みを浮かべるのだが・・・何なんだ?
すると、高橋葵は長イスから立ち上がり、オレを指差し
「九重!お前、夕崎さんの事好きなんだろ!だからそんなふうに優しくしているんだろ?」
オレに訳分からない事を言ってきやがった・・・佐藤千枝は高橋葵の発言にうんうん頷いているのだが、何の根拠もないぞ。
「まぁ・・・そうなの?九重くん」
頬に朱を浮かばせ、自分の世界にトリップする吉村先生・・・恋に関する話となると絶対に聞きたがる女性軍の気持ちは分からなくもないのだが、オレ達は恋人じゃねぇぞ。
「ちげぇよ・・・コイツが初心者だからだ。それに、部員を減らすなんて事はさせたくねぇよ。部活ってのは、人数が多ければ多い程、楽しいってもんだろ?」
オレは正論を真顔で言ってしまったが、恥ずかしい。しかし、その恥ずかしさを顔には出さないオレ。
「それよりも、練習だ・・・おっと、高橋と佐藤は練習量は皆の五倍な」
「「そっ、そんなぁ~・・・」」
オレを馬鹿にした報いを受けろ高橋、佐藤。そんな二人は、涙ぐみながらも練習をこなしていったのであったーーーー。




