百二十三話 敗因と次策
パープルミストと鮮血の偶像の合同レイドが失敗に終わったというニュースは、たちまち迷宮都市全体に広がった。
迷宮都市に住む住人の八割以上は、探索者かダンジョンと関係する職種で働いている者だ。
探索者養成学校に通う学生なども数に入れれば、その割合はもっと高くなる。
彼らにとって、ワダツミの情報は何を置いても入手しなければならない関心の強い事柄だった。
ただ、とは言っても第四階層への立ち入りを許可されているギルドや探索者は殆ど居らず、今回のニュースは殆どの者にとっては酒のつまみ程度の代物にしかならないが。
Sランクギルドを除けば最大手に位置するその二つのギルドが合同で挑んで敗北した、その原因として多く上げられた意見は酷く単純な物だった。
第四階層のモンスターが異常に強い。
もしくは、二つのギルドが世間が評価している程強くは無かった。
それが世間が寄せる二つのギルドと第四階層への評価だった。
◆
「なんで黒峰さんとセブンさんは負けたと思う?」
スマホでニュースを漁りながら、天空秀は問いかける。
相手は新藤真だった。
神々しい鎧と、光り輝く長剣を持つ彼の装備コンセプトが『勇者』である事は誰から見ても明白だった。
因みに、作成者は峰岸紅蓮だ。
現在彼はアナライズアーツに所属しながら、勇者としての活動を主に行っている。
当然、朔間疑徒としての仕事も行っており、彼は現在二重生活を行っていた。
とても、疲れて居そうな顔をしている。
「知りませんよ。第四階層に行ってみなくちゃ分からないでしょそんな事」
「残念。俺は蘇衣然から教えて貰える。お前もSランクギルドのマスターなんだから、頼めば教えて貰えるんじゃないか?」
「アナライズアーツと聖リント教会じゃ信用が段違いですよ」
「けど、AランクとBランクの人数じゃ世界一のギルドだろ?」
「まぁ、一応そうですが……」
聖リント教会がSランクギルドとして成り立っているのは、詐欺師の権能による『階位昇華』の力による物だ。
効き目に差はあれど、聖リント教会所属の探索者全員は強制的にレベルを向上している状態になっている。
殆どズルの様な物だが、昔の戦争では銃だってチート兵器だったし原子爆弾何てゲーム的に言えば人権武装だ。
今更この世界にズルが一つ増えたからと言って当の本人たちは特に気にしていない。
(まぁ、ギルドの人たちをずっとだまし続けているのは少し心苦しいですが……レベルが高いから幸せというのも探索者的には間違っていない)
という考えの元、変に嘘をばらし彼らの実力を下げるべきではないと言うのが、朔間疑徒の考えだった。
「第四階層に挑むんですか?」
「まぁ、偵察くらいはする予定だな」
第三階層が二年間攻略不可能な程強力だったのは、橘修柵という人類の汚点を取り込まれたからだ。
それが無い第四階層は三階層よりもずっと楽だと、秀は考えていた。
「でも攻略するってなったら、勿論勇者にも協力して貰うつもりだが……」
「その勇者って肩書何とかならないんですか? 街歩いてたら写真とか求められて大変なんですけど」
「アイドルみたいでいいじゃん」
実際、探索者兼芸能人と言うのは良く居る話だ。
戦う人間と言うのは大衆に魅力的に映る物らしい。
「女の人がかなり多いんですけど、凛佳の機嫌が見るからに悪くなるんです……」
「は? 自慢なら俺じゃ無い奴にしてくれ」
「それだけじゃ無くて、男の探索者から何度も絡まれたりもするの面倒で仕方無いんです」
「おぉ、上位探索者に怖い物知らずな連中もいるもんだな」
「笑いごとじゃ無くて、困ってるんですって」
新藤真。
唐突に迷宮都市に現れ、そして一月もしない間にSランク探索者になった通称『勇者』と呼ばれる上位探索者である。
そして、彼は男女別人気ランキング女編でぶっちぎりの一位であり、男女別嫌いなランキング男編でもぶっちぎりの一位である。
「知るかっての」
「貴方も勇者じゃ無いですか」
「関係ないです。あ、じゃあリオンさんも連れてって良いぞ。神気使い三人寄ればパーティー単位での第四階層攻略も簡単そうだ。後、動画撮って来て」
「考え得る最悪のパーティーじゃ無いですか。二人ともから恨まれますよ。それに迷宮都市の男探索者からのヘイトも凄い事になるに決まってる」
「それが、君に課せられた罰なのだ」
「最悪のギルドマスターだ」
まだ、彼らは知らない。
魔王の策謀は攻勢へ移る。
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