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電球カレシ  作者: よはる
2/6

東京ってすごい!

「う…やっと寮の前までついたけど…予定の時間よりかなり遅れちゃったなぁ。はぁ…私の第一印象が、『はじめから約束の守れないやつ』というイメージに…」


と、ネットで書かれていた「第一印象で全てが決まる」という記事がさらに私にのしかかる。


私が悪いのではない、東京の地図が悪いのだ。

なんでちゃんと地図があってるんだ!田舎なら、10分と書いてあったら20分はかかるし、すぐそこを右といったら数十メートルも離れてるんだぞ!

まぁ、つまり田舎の地図の感覚で地図を見て歩いていたので、行きすぎたり、行きすぎたりして道に迷ったんだけどね!!もうっ!!



遅刻の言い訳を考えるはずが、極度の疲れと、不安がこみ上げで逆に地図にキレていた。遅れた罪悪感で、寮の前にいるのに寮の玄関の扉に手をかけられず、右往左往していた私に突然左横から話しかけてくる人がいた。


「あら!遅かったじゃない!駅からここまでそんなに複雑な道のりじゃないと思ったのだけれど…?」


てっきり人に話しかけられたと思って、軽くお辞儀をしながらそちらを振り向いたけれど、その先に予想した人影はなく、インターフォンがあった。


インターフォンから声が!!

東京ハイテク!!


私の家には会話できるインターフォンなんてなかったので、『ザ・ハイテクの都市東京!!』を味わった気分。

あ。でも、よく思い出したら新築の友達の家にあったわ。私の田舎にも会話できるインターフォンあったわ。


でも、インターフォン押してないのにどうして分かったんだろう。

まさか…魔法?!



と、いつものように連鎖的に思考がどこかに行ってしまう癖を全力で発揮した私。


挿絵(By みてみん)


そんな、ここでないどこかに行ってる私をよそに、この声の主はなれた様子で


「ああ、扉のカギよね。待ってて今カギあけるから。」

と、どんどん話をすすめていった。

この扉、鍵がかかっていたのか…。そういえば、寮のパンフレットに女子寮なのでパスワード式オートロックだって書いてあったわ。


ガチャッ


厳重な寮の鍵があく音。


おそるおそる、寮の扉を押す。


「牧野はなちゃんよね?」


重い玄関の扉を押しながら、これまた田舎から持ってきた重いキャリーケースを引きずりながら入る私に話しかける、先ほどの声の持ち主。


玄関の横に部屋があるのか、その横の部屋から出てきた人は、穏やかそうな雰囲気をしていた。髪の毛の色は白、ファッションはカジュアルなオリーブ色のしたTシャツを来ている。まるで平和の象徴の白い鳥とオリーブのようだ。ウェーブがかったミディアムヘアーがとっても似合っている長身の…



男性?!




「あ…え?」


「あー。混乱するのも無理はないわよね。大丈夫貴方だけじゃないわ!」


「あの…ここって女子寮でしたよね?あの…男性がいる…ん?女性??」


「自己紹介させてちょうだい。私はこの女子寮の管理人、近藤白鳥こんどう しろうこのおねえ口調はもともとなのよ~。よかったら気軽にシロちゃんって言ってくれたらうれしいわ~。」


そう頬に手をあてて、にこやかに紹介をしてくれた。

何人もの人にこの自己紹介を繰り返してきたのだろう、すらすらと考える様子もなく自己紹介をしてくれた。

「あ…あの、牧野はなと申します。これからよろしくお願いします。近藤さん!」


挿絵(By みてみん)


「…あのね…私シロちゃんってよばれてるの。よかったら、近藤さんとかごつい響じゃなくて、シロちゃん♡って可愛い方で読んでくれるとうれしいわ〜♪」


ものごしが柔らかなのは変わらないが、先ほどと打って変わって笑顔が怖い…ような気がする。

どうやら、シロちゃん呼びは「よかったら」という強制らしい。

その笑顔と周りの空気が体感温度1度さがったのが何よりの証拠だ。


「よ…よろしくお願いします。シロちゃん」


「は〜い」

にっこり人懐っこい笑顔が、まぶしく輝く。


あ…かわいい。

シロちゃんが若い男性なのに女子寮を任されていることがわかった気がする。

シロちゃんは、みんなに信頼されてるんだ!


「よーし。疲れたと思うけど、ちゃっちゃっちゃーと寮の設備について解説しちゃうから、ついてきてー。」


そう言った近藤…シロちゃんは、スリッパを私の足下に並べた後、私の引きずってきた、キャスター付きバックを軽々と持った。









ウイーン ゴゴン。



この寮のエレベーターの止まり方が荒く、振動が膝にくる。その振動を表すなら、ゾンビゲームのエレベーター並みに揺れる。相当古いエレベーターなのだろう。大丈夫かなぁ。


特に気にしていないようなシロちゃん。

さあついたわよ。と「開ける」のボタンを押したまま先をゆずってくれてるシロちゃんの笑顔に押され、私はエレベーターを降りた。


挿絵(By みてみん)


「さて!7階だわ!それでは貴方の部屋と、ここの寮の施設紹介するわね」

シロちゃんは寮長さんモードになったようだ。


「ここがトイレね」

そう行って、右の入り口の上が半円になってるとこをくぐる。

その先には可愛らしい、お花の電球カバーがかかった電球のある洗面所があった。


挿絵(By みてみん)


「それで、このトイレの手洗い兼洗面台をまっすぐ行って、そこを右に行くとコイン洗濯機。そしてその横にシャワールームがあるからね。」



「共有スペースはだいたいこの一角にあつまってるわ」


そう言って、廊下にもどるシロちゃん。



「それで、ここの廊下をまっすぐ行って突き当たりの右があなたの部屋ね!行きましょうか」

と先ほどの、かわいい人懐っこい笑顔を向け先導してくれる。


相変わらず、私のキャリーバックを持ってくれているシロちゃん。

女性っぽいと思っていたけど、こうやって、私がボロボロになって引きずって持ってきたキャリーケースを涼しい顔で持ってしまうところ、やっぱり男性なんだなぁなんて、思った。

男性だけど、女性らしい、女性らしいけど男性…。

不思議な魅力のある人だなぁ。


たくさんのことを思っていたが、思考の量にともなわず、共有洗面台から私の部屋のドアへはすぐについた。




ガチャっ。キー。


エレベーターと同じく、古いのであろう鉄製のドアが軋む音とともに、部屋が視界に飛び込んできた。


「ごめんなさいね。狭くて。家具とかもそんなにオシャレじゃないし…。」

と申し訳なさそうに言うシロちゃん。


挿絵(By みてみん)


「うわ〜〜〜〜〜〜〜!!!」

感動だった。



「私!今まで弟と共有の部屋だったので、自分ひとりだけの部屋ってはじめてなんです!!」

と目を輝かせながら言った。

シロちゃんを見たらあっけにとられた表情。

なぜだ!


「そう!気にいったみたいで、よかったわ!!ここでの暮らし、楽しんでね!!」シロちゃんスマイルが炸裂。私、このスマイル大好き!シロちゃんと会ってまもないが、シロちゃんのファンになってしまっていた。


そうやって先ほどの館内説明同様、部屋の中の、見たことない形をしたエアコンの使い方を教えてもらったり、ベットの下は洋服の収納ダンスになっていることなどを教えてもらった。


そうしているうちに、シロちゃんは

「ごめんなさいね。もっとおしゃべりしていたいのだけれど、時間がきちゃったみたい。」

「私は一階の寮長室というところに、だいたいほとんど居るからなにかあったら『たすけてーシロちゃーん』って1階に向って叫ぶのよん☆」

とおどけた。絶対声は届かないよ。だってここ7階だもの。

でも、そんなシロちゃんの笑顔にのせられて、私もつい


「ふふふ…ここ7階だけど、1階にきこえる声でめいいっぱい叫びますね!」

とおどけた。


夕食になったらお知らせの寮内放送があるから、それをききのがさないでね!と言ってシロちゃんは去っていった。




さっそく初めての自分だけの部屋に備え付けられている、ベットの上に寝転がってみた。

挿絵(By みてみん)


蛍光灯の眩しさに少しだけ目がくらむ。


「…今日から私の新しい生活が始まるのね」



なんだか信じられない気持ち…。

蛍光灯のカバーの横から、垂れている電気をつけるためのヒモをぼんやりみながら、ここまでの道のりをふりかえっていた。


ほんと、弟と部屋を共有していた中学時代が懐かしいわ。

地元の高校に進学予定の、友達は今なにしてるのかなぁ…。きっと親の目を盗んで漫画執筆してるな。絶対才能あるって昔から思ってて、小学生の休み時間にもらった漫画絵、今でも大切に全部とってあるんだ。

そうそうあと、電車を乗り継いで、東京まできたんだよなぁ…。私、ビビりの人見知りなのに、よくひとりでここまでやったよ…。

あー大変だったわー。



…ん?あと電車…電車内で、なにかあったような…。


なにか忘れているような…。なんだったかなぁ…。うーん。


「これが、俺の部屋に新しくきた女の子かー」


そうなの、私が新しくきた女の子


って…え?


田舎にいるはずの弟と同じような声質が視界の外から聞こえてくる。


挿絵(By みてみん)


なんと電球が浮いていて喋っていた。


「!!!????豆電球?!」


人は、驚きすぎると声が出なくなるということを知った。

ほんと、東京は新しいことがたくさんだ。


「ーーっ!!!」

そう、驚きのあまり体がこわばり、起き上がることも、声を出すことも、目線を外すこともできず、ただその浮いて、喋る、豆電球を凝視していた。


「ん…?」と豆電球は首をかしげ、(そもそも首はどこなのかわからないが、疑問に思った時に人がする首をかしげるイメージは伝わってきた)

左右に、移動した。

そして、目が釘付けになっている私もそれに追従して左右に動いた。


「え?…もしかしてこの子俺のこと見えてるの!?」

と、間抜けな声を出したのと同時に、ハッとした私は


「ぎ…」

「ぎ?」

「ぎゃあああああああ!!!!!!たすけて!!!!!シロちゃーーーーん!!!!!!」


7階に聞こえるように、人生最大、自分でもこんなに声が出たのかと思うくらいの、大大大ボリュームで叫んだ。


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