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30億だけ持たされた私の異世界生活。  作者: 夢寺ゆう
第3章 王都にお呼ばれ
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17.帰還


「とうちゃーく」


 およそ2週間振りのアランカ。

 ロイドが気を使ってくれたらしく、転移魔法で転移した先はハル達の屋敷の目の前だった。


「いやー、なんだか久しぶりだねー」


 たった2週間なのにどこか懐かしく感じ、屋敷の周りを見渡すとそこら中に空いた巨大なクレーターが。


「……忘れてた。こいつをどうにかしないと学校なんて建てられないな」


 1人呟き、巨大クレーターの数々を見ていると、がちゃりと音を立てて屋敷の玄関が開いた。



「ん? ああ! ハルちゃん、みんなも! 帰ってきてたんだね!」



 そこに現れたのはハル達がいない間、屋敷の管理とユニーの世話を任せていたイケメン女研究者のヒーラだった。


「たった今戻りました」


「そっかそっか。おかえり。…………ん? ハルちゃん、その左目どうしたの?」


 やはり、これからは行く先々で訊かれることになるのだろう。

 その辺の人に訊かれたくらいなら適当に誤魔化しながら答えればいいが、流石に親しい間柄の人にはちゃんと説明しておいた方がいいだろう。


 いったん屋敷に入ってハルは王都であったこと、教えられたことをヒーラにも伝える。


「つまり左目を開けてると、魔力が垂れ流し状態になっちゃうわけか……」


「そうなりますね」


「でも常にウインク状態ってキツくない?」


「かなりしんどいです。意識してないと普通に開いちゃいそうで」


「だよね。うーん……あ、そうだ。今ちょうど実験してる魔道具が使えるかも。あ、でも駄目だ。必要な材料がなくて諦めたの忘れてた」


 何でもその魔道具に必要な素材が、かなり危険なモンスターが住み着く場所にあるらしく、凄腕冒険者のパーティが複数集まってようやく進めるような場所なのだとか。


 科学者であるヒーラはもちろんそんな危険な場所にはいけないのでギルドへ行ってクエストを申請しようとしたのだが、報酬のお金が用意できなかったので断念したらしい。


「凄腕冒険者のパーティが複数集まるとなると、報酬の額もかなり必要になって……貧乏科学者の僕には払える訳もなかったよ」


「ふむ、なるほど」


 一度頷いたハルは唐突にソファーから腰を上げ、屋敷を出ていった。





 数日後~


「はい」


「……? ……!!????? は、ハルちゃん? こ、これは……」


「……? ヒーラさんが言ってた必要な素材ですけど?」


 ハルが持ってきたのはヒーラが実験で必要だが報酬のお金が出せなくて諦めたと言っていた魔道具の素材だった。


「あの日いきなり出ていったと思ったら、もしかしてハルちゃんがあんな危険なところまで取りに行ったの!?」


「まさか。この街の凄腕冒険者さん達に依頼しただけですよ」


「え、いやでもなんでハルちゃんが?」


「だって、その素材から作る魔道具は私の目の問題を解決するかもしれないんですよね? なら素材料は私が払ってもなんら不思議じゃないですよ?」


「あ、うん……そういうことか……」


 ヒーラ的にこの魔道具は素材が手に入らないから早々に諦めた魔道具だ。


 つまり、まだ一度も実験もしてないし、どんな形にするだとか、どういう構造にしなければいけないだとか、まだ具体的には何も考えていない。


 ただ何となく、「あ、こういう効果の魔道具とかおもしろいかも。それならあの素材とかいるよね……え、お金が足りない? しょうがない、諦めるか」くらいの軽さで思い付き、そしてあっという間に諦めた、特になんの思い入れもない魔道具なのだ。


 ぶっちゃけ、完成できるとも思っていない。



 しかし――


 自分が依頼したときよりも3倍くらいの量を持ってきた少女を裏切るわけにはいかない。

 自分より年下の少女に大金を払わせといて今さら「やっぱできないかも」なんて言えるわけがない。


 だから彼女はこう言うしかないのだ。




「おっけー! とびっきりイカした魔道具を作って見せるから! 楽しみにしててね!」




 この日からヒーラは、研究所に籠りっぱなしになり、研究に明け暮れる日々を送ることになる。





        ×  ×  ×





 時は数日前に遡る。


 ヒーラの話を聞いて屋敷を出たハルは冒険者ギルドへ来ていた。


「あのー、クエストの依頼がしたいんですけど」


「あ、サクバさん。どのようなクエスト内容でしょう」


 ハルは魔道具発表会の日の事件でアランカの街を守ってから、この街ではシュナと同等かそれ以上に一躍有名人になっていた。


 もともとカイ達獣人といつも一緒にいて変わった武器を持っている少女ということで注目は浴びていたのだが、ロイドとカナタがこの街の警備団と冒険者ギルドに事件の全貌を話し、ハルが街を救ったことを告げたのが一気に広まったらしい。


 ハルが魔力を限界まで絞り出して相殺した際に発生した強烈な光と衝撃波は街のどこにいた人でも目撃しており、しかもアインツベルク最強の2人が言うのだからその話を疑うものは誰もいなかった。


 なので冒険者でもないハルはそこまで利用している訳でもないのに、このようにギルド職員にまで顔と名前を覚えられているのだ。



「これを採ってきて欲しいんですけど……」


 そう言って素材の名前が書かれたメモを渡す。


「えっと……え、ヴァンパイアのマントに王族蜂の針!? いや、あの、これほどの高難易度のクエストになりますと、かなりの凄腕冒険者がかなりの数必要となり……」


「報酬のお金が高額になる?」


「はい……」


「えっと、これじゃ足りないですか?」


 ぽんっと取り出したのはお札の束。

 最近忘れがちだが、咲場 春はお金持ちである。


「こ、こここんなに!?」


「足りますか?」


「いや、もう十分過ぎます!」


「それはよかった。じゃあお願いしますね。あ、期限は3日くらいでいけますか?」


「み、3日!?」



 忘れがちだが、咲場 春はお金持ちのドSである。



「さ、流石に3日は……移動時間とかもありますし……」


「そうか、ここからその場所までどのくらいかかるんですか?」


「徒歩だと片道2日はかかりますよ」


「じゃあ5日で」



 忘れがちだが、咲場 春は(以下略)



「わ、わかりました。すぐに手配いたします」


 職員のお姉さんはハルの依頼を羊皮紙に書き込んでいき、細かい部分についてはその都度ハルに確認を取りながらクエスト内容を決めていく。


「あ、個数が多ければ多いほど、報酬も増えるって書いておいてください」


「待ってください。個数を増やすってことは退治するヴァンパイアや王族蜂の数も増えるってことですよ? それを5日でなんて」


「え、でも徒歩で片道2日なら、馬車を使えばもっと早く着きますよね?」


「いえ、冒険者さん達は基本貧乏ですので馬車を借りるお金なんて……」





 ぽんっ。





「…………えと、これは……?」


「……? 馬車代です」



 忘れがちだが、咲場(以下略)



「……かしこまりました。では内容の確認をお願いします」


 


 採取クエスト


○依頼内容

 ヴァンパイアのマントおよび王族蜂の毒針の採取

 モンスターの生死は一切問わない


○報酬

 50,000ゴールド(複数名の場合は分割)

 基本採取数は問わないが、採取の数が多ければ報酬額も増える


○期限

 クエスト承認から5日以内


○補足

 馬車代は依頼者が負担するため請求はしない

 

○依頼者

 サクバ ハル


○仲介

 アランカ冒険者ギルド


 本クエスト中に負傷、死亡しても、依頼者および冒険者ギルドは一切責任を負いません。




 5万(ゴールド)は日本円に直すと約500万円。

 10人でクエストを承けたとしても1人頭50万円の報酬だ。これはかなりの高額クエスト言ってもいいだろう。


「また随分と大盤振る舞いですね、サクバ様」


 職員のお姉さんが書いたクエスト用紙を覗き込み、眼鏡を指で軽く上げながらそう言ったのは、このギルドのギルドマスターであるシルシだった。


「あ、シルシさん。お久しぶりです」


「お久しぶりです。その左目……怪我でもなされたのですか?」


「ちょっと、王都で色々ありまして」


「なるほど、深くは訊きません。では貴女はそれを掲示板の目立つ位置に貼ってきてください。私は少しサクバ様と話がありますので」


「わかりました。失礼します」


 職員のお姉さんが羊皮紙片手にカウンターから離れ、代わりにシルシがそこに座る。


「話というのは?」




「もちろん、以前サクバ様が話されていた″学校″についての話です」





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