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30億だけ持たされた私の異世界生活。  作者: 夢寺ゆう
第3章 王都にお呼ばれ
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5.魔力制御


「ブラボーブラボー」


 ロイドがパチパチと拍手をしながら戦い終えたハル達の所へとやって来る。


 結局ルル・リリィによる回避不可の幻覚魔法でフライベアを空から降ろし、そこをハルの矢とカイのダガーで両目を潰し、シュナがとどめを刺した。


「いやー、容赦なかったねー。普通動きを止めさせるためだけに両目を潰すかね」


「フライベアの表皮は硬いってシュナから聞いたからさ。そこしか思い浮かばなかったんだよ」


 フライベアに刺さった矢を抜き、付着した血を振り払う。


「それにしても、さっきのは幻覚魔法?」


 ロイドがルルとリリィに向けて問いかける。


「ええ。アタシ達は幻覚魔法しか使えないのよ」


「あと、1日に2回しか使えない、っていう制限つき、です」


「1日に2回?」


 リリィの言葉に首を傾げるロイド。言っている意味が分からないという表情だ。


「アタシ達は2人とも魔力が少ないの。1人で幻覚魔法を使えるほどの魔力がない。ただ双子だからか、2人で魔力をリンクさせることで消費する魔力を抑えることができるの」


「…………」


 ルルの説明を訊いて黙り込むロイド。

 顎に手を当て、思案顔になる。


「いや多分それ、魔力の使い方がヘタクソなだけだよ」


「「へ?」」


 ルルとリリィの声が重なる。


「1人だと1回も使えない魔法を2人で協力すると2回使える。それって単純に考えておかしいよね?」


「だから、2人の魔力をリンクさせることで上手い具合に魔力を節約出来てるとかではないの?」


「それはありえない。2人の魔力をリンクさせることで逆に魔力を無駄に多く消費することはあっても、最低限必要な魔力を更に減らすなんてことは不可能だよ。……2人とも、誰かに魔法を習ったことは?」


 問われた2人は一度お互いの顔を見合わせた後、揃って首を横に振る。


「やっぱりね。2人は魔力の使い方を知らずに魔法を使ってるんだよ。幻覚魔法にも規模があるでしょ? 多分2人はどんな規模の幻覚魔法でも同じだけ魔力を消費してるんだと思うよ。心当たり、あるんじゃない?」


「「「「……!」」」」


 それにはルルとリリィだけではなく、ハルとカイにも心当たりがあった。


 確かに、ルルとリリィの幻覚魔法には様々な規模がある。

 

 ハル達と行動し始めてからは、敵の1人を対象として魔法を使うことが多い。

 よく見るのは、敵にカイやハルがそこにいると思わせる幻覚魔法だ。

 

 これは敵だけに幻覚魔法を掛ける、ごく狭い範囲でのピンポイントな幻覚魔法だ。


 逆に初めてルルとリリィに出会ったキサラギの街のオークション会場。そこでハル達が見たのは会場にいる全員を対象とした広範囲の大規模幻覚魔法だ。


 この小規模幻覚魔法と大規模幻覚魔法、どちらの規模でも使った後、その日は残り1回しか幻覚魔法が使えない。


 簡単に言えば大規模だろうと小規模だろうと、もっと言えば大規模2回でも小規模2回でも消費する魔力量は同じということだ。


 だが、確かによく考えればそれはおかしい。


「魔力の使い方を知らないから、無意識にどの規模でも同じだけの量の魔力を使ってるんだよ。大規模が1日に2回使えるなら単純計算で小規模は多分4回は使える」


「「ええ!?」」


 衝撃の事実に滅多に声を荒げないリリィですらルルと一緒に大声を上げる。


「あと、1人じゃ使えないのに2人だと使えるっていうのは、1人じゃ魔力が安定せずに魔法が発現しないってだけで魔力が足りないからじゃないと思う。2人だと魔法が使えるっていうのは無意識に互いに互いの魔力を安定させてるだけだと思うよ」


 確かにウサギ科の獣人は幻覚魔法を使う者も多い。


 しかし2人の場合誰かに教わったわけではなく、ある日突然、あることがきっかけで唐突に発現した力だ。

 だから2人は幻覚魔法以外の魔法を使えない。

 幻覚魔法だって使いたいと思って使えるようになった魔法ではないからだ。


「それじゃあ、自分の魔力をちゃんとコントロール出来るようになれば、1人でも幻覚魔法が使えるようになるってこと?」


「そうなるね」


 ルルの問いにロイドは頷く。


「それじゃあ…………! ……リリィ?」


 魔法のプロフェッショナルであるロイドに魔力の扱い方を乞おうとしたルルだが、不意に服の裾をリリィに掴まれ、言葉が詰まる。


「……………………」


「リリィ……?」


 どこか不機嫌な表情をしたリリィが何も言わずにただルルの服の裾を握り込む。


「リリィ、どうしたの? 服に皺が出来てしまうわ」


「ルル」


「え、なにかしら?」


 ハルはルルのウサ耳に顔を寄せて、リリィには聞こえないように小声で話す。


「リリィはルルが魔力をコントロールしちゃったら、もう一緒に魔法が使えないんじゃないかって不安なんだよ」


「……!」


「……っ!?」


 ハルが言い終わった途端、リリィの顔が真っ赤になる。


「あ、あれ?」


「……ハル、ウサギ科の獣人は耳がとても良いの。小声で話してもこの距離じゃ聞こえるわよ」


「マジ?」


「大マジ。……はぁ、リリィ。別に1人で使えるようになったからって、2人で使わなくなるとは言ってないでしょう? ただ魔力がコントロールできれば魔法が使える回数も増えるわけだし、悪いことではないでしょう?」


「うん、わかってるよ……」


 リリィの頭を優しく撫で、姉の顔になるルル。


 それを後ろで見守っていたハルに、カイがそっと近づく。


「相変わらず性格悪いなお前」


「なんのこと?」


「ウサギの耳が良いってことくらい知ってただろ」


「いやー、リリィがうじうじしてたからつい」


「ついって、はぁ……」


 たははーと笑うハルに溜め息を吐くカイ。

 その横ではシュナがルルとリリィを見つめ、瞳を潤めながら、


「うんうん。いい姉妹愛だな……」


 と呟いていた。


「それで、魔力のコントロールはどうすれば出来るようになるのかしら?」


「ん? あー、ハルのその右手首のやつを使えば?」


「え? これ?」


 いきなり自分の手首に装着された魔道具が指され、首を傾げるハル。


「それって魔石に貯めてある魔力を小出しにしながら使ってるんでしょ?」


「いやまあそうだけど」


「今2人に求められるのは魔力を小出しにする感覚。それをその魔道具で身に付ければいけると思うよ。1人で魔法を使おうとすると魔力が安定しないっていうのもその魔道具で補完できるだろうし」


 確かに、今はハルも感覚が掴めてきているが、ヒーラの実験を手伝っていた初めの頃は魔力を小出しにするのにも手こずっていた。


 それに魔法を全く使えないハルがあそこまで魔法を矢に付与される事ができるのだから、この魔道具がハルの足りない部分を補完しているのも確かだろう。


「待った待った。確かにこれなら2人の魔力制御の練習になるかもしれないけど、ここに貯めてある魔力だって限りがあるんだよ?」


「そうよ。魔力が無限じゃないからさっきのフライベアの時だってわざわざ使わなかったのに、それじゃあ意味ないじゃない」


「その魔力ってハルの魔力しか貯められないわけ?」


「いや、そんなことないけど」


 以前魔石で出来た短刀に貯まったシュナの魔力を魔石に移したこともある。それでも問題なく魔法が使えたので誰の魔力かは関係ないだろう。


「んじゃ僕の魔力を使えばいいよ。どうせグリフォン以外は僕は戦う気ないし、グリフォンだってカナタ1人でも十分だし。転移魔法の魔力だけ残っていれば問題ない。それって今どのくらいの魔力が貯まってるわけ?」


「だいたい私の1週間分くらい」


「なんだ、僕の魔力の10分の1も入ってないのか」


「…………」


 相変わらず思ったことを何でも口にするガキである。


「それじゃ、貸してあげなよ。それって放出する魔力が多いと発現する魔法も大きくなるんでしょ? それなら分かりやすいし」


「さっきから思ってたけど、何でそんなにこの魔道具に詳しいの?」


「いや、誰に向かってそんな事言ってんのさ。魔法に関することは一目見れば大体分かるよ」


 アインツベルク最強の魔法使いには、ヒーラの最高傑作も一目で仕組みが解る子供のおもちゃのような物らしい。


(こんなこと言ったらヒーラさん多分泣いちゃうよなー……いや、逆により一層燃えるかも……?)


 だがどちらに転ぶか分からない以上、ヒーラとロイドはできるだけ会わせない方がいいと判断するハルだった。






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