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30億だけ持たされた私の異世界生活。  作者: 夢寺ゆう
第2章 魔法科学
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16.家宅捜査


「……マジでやるんだな?」


「もちろん。人命には変えられないからね。もし本当に私の勘違いなら弁償だってするし損害賠償だって払う。牢屋にだって入るよ。牢屋なら一度入ったことあるしね」


「はぁ……こうなったらどこまでだって付き合ってやるよ」


「流石カイきゅん。それでこそ私の相棒だよ」


「こんなときだけ調子いいんだよ。……んじゃ、やるか」


「うん。……全部終わったら一緒に謝ろうね」


「ま、オレは怒られ慣れてるからな。問題ない」




「そうだったね……よし。それじゃあ、魔法科学者達による魔道具発表会……私達の手でぶち壊すよ」





         ×  ×  ×





 時は遡り、発表会1週間前。


 ハル達とシュナの5名は警備団の詰所から呼び出しを受けていた。


「普段なら状況証拠のみのこの状況で出ることなどありえないのだが、今回は緊急を要するので特別に令状を出してミラーの研究所に押し入ることになった」


 いつもの警備団の男性の言葉に誰かが息を飲む。


 確かにミラーの発明した魔道具を使えば今回の事件の疑問点は辻褄が合う。


 しかし、ただそれだけだ。


 現場や被害者、目撃者なんかからもミラーに関する証拠は1つも出てきていない。

 本来ならこんな捜査はありえない。

 何1つ彼に関する証拠が出てもいないのに推測だけで家宅捜査などプライバシーの侵害にもほどがある。


 しかし、この世界が地球ほど法整備が厳しいわけではないということと、魔道具発表会が1週間後に控えているという状況ではのんびりもしてられないということで認められたようだ。


 もう既にアランカの街には少しずつ街の外からの訪問客が増えている。


 狸耳の少女の爆発事件以後、事件は1つも起きていない。

 しかし、それでもう起きないとは言えない。

 犯人が捕まっていない以上またいつ事件が起きるかわからないのだ。

 

 訪問客が増えている今、もしくは訪問客が一番増えるであろう発表会当日に事件が起きれば、被害の数は予想もできない。


 そうならないためにも多少強引でも現状一番怪しいミラーの家を捜索するのはやむを得ないという判断の結果なのだろう。


「そこで君達にも協力してほしい」


「私達に?」


「君達は実際に操られた者のことを一度、そっちの2人は二度も見ている。やはり操られている者の特徴は見たことのある者の方が判断しやすいだろう。なに、危険だと判断したらすぐに研究所から離れてくれて大丈夫だ。怪我をしない程度に協力してもらえないだろうか?」


 ハル達は互いに顔を合わせるが、一度協力すると言っている以上、断る理由はない。


「もちろん協力します」


「私も当然協力しよう」


 ハルとシュナが頷き、それに続くようにカイ達も首を縦に振る。


 警備団の男性はお礼を言った後、説明を始めた。


 今回の家宅捜査は証拠になると思われる物を押収すること。

 当然本人に危害を加えたり、今回の事件に関係ない物を破損させたりすることは許されない。


 一通り説明を受けたハル達は、警備団の男性と共にミラーの研究所に向かうのだった。





        ×  ×  ×





「ミラーさーん! いらっしゃいますかー! 警備団の者ですが!」


 ミラーの研究所に訪れ、警備団の男性が扉の前でノックしながら中に呼び掛けている。


 ここに向かう途中何度も今回の殺人事件と爆発事件の話が聞こえてきた。

 やはり街の人達もかなり不安なのだろう。


「ミラーさん! いらっしゃいますかー!」


 返事がない研究所の中に何度も呼び掛ける。そして何度目かの呼び掛けに、研究所の扉が開いた。


「……あの、何かご用でしょうか?」


 そこに現れたのはよれよれの白衣を着た痩せ細った男。無精髭を生やし、目の下には隈が出来ている。


「警備団の者です。貴方に裁判所から令状が出ています。研究所の中を調べさせてもらいます」


「は? いや、いきなり何ですか? 令状? 一体どういうことですか?」


 いきなり警備団が自分の研究所にやってきて、令状を見せつけられて中を調べさせてもらうなどと言われたら戸惑って当然だろう。


「それでは失礼します」


 警備団の男性は問答無用で研究所の中に押し入る。


「おい待てよ! いきなり来て説明もなしに家の中を調べるって、おかしいでしょ!」


「最近この街で起きた事件をご存じですか?」


「……? 路地裏で人が殺されたってやつですか? それとも街中の爆発のことですか?」


「その2つのどちらの事件にも貴方に犯人の容疑がかかっています」


「はあ!? ふざけないでください! こっちは大事な発表会を来週に控えてるんです。こんな大事な時に何考えてるんですか!」


「こんな大事な時だからこそ、もう時間がないんです。いいから調べさせてもらいますよ」


 そう言って警備団の男性は研究所の奥へ入っていく。

 ハル達もそれに続く。


「君達は何?」


「私達も手伝いで来ました」


「こんな女子供連れでホントに何考えてんだよ……っ」


(ごもっともで……)


 ミラーからしてみればいきなり子供連れで家捜しされているのだ。考えるだけで堪ったものじゃない。


 ただ、それは本当に事件と関係がなければの話だが。


 それから1時間ほどかけて研究所内を調べた。

 しかし、出てくる魔道具は彼が開発している魔力増幅魔道具ばかりで、例の事件に使われているだろう魔道具は1つも出てこない。


「いい加減にしてくれませんかね? 何を探しているのか知りませんが、言いましたよね? こっちは来週に発表会を控えているんです。これ以上は研究の邪魔です」


 そこまで広くない研究所で1時間も探したのに出てこないとなると、確かにここには無いのかもしれない。


「……ふぅ、そうですね。騒がしくしてしまい申し訳ありませんでした」


 警備団の男性が立ち上がり頭を下げる。

 それに習うようにハル達も一緒に頭を下げる。


「まったく……勝手に犯人扱いして勝手に人の家を漁るなんて……」


 ミラーは不機嫌を隠そうとせずブツブツ呟く。


「ミラーさん。私先月の事前発表会に行ったんですが、あのときの魔道具の欠点は改良できたんですか?」


 ハルが突然そんなことを訊く。


「……まだだよ。だから今は1分1秒も無駄に出来ないのに君達が来たせいで作業をストップさせるしかなかった」


「それはすみませんでした。じゃあ最近はずっと外に出ず籠りっぱなしで作業を?」


「そうだよ。ろくに寝てないし、ちゃんとしたご飯も食べてない」


 ハルはミラーの目の下の隈に視線を向ける。

 

「ちなみに今回の事件、魔道具が関わっているみたいなんですが、魔法科学者のミラーさんから見てどう思いますか?」


「魔道具が関わっている? 今回の事件は獣人の犯人が警備団に捕まりそうになったから魔法で自爆したと聞いたけど、それが魔道具によるものってこと?」


「それだけじゃありません。その獣人も魔道具に操られていたんです」


「操られていた? つまり路地裏の事件も操られてやったってこと?」


「…………。そうなりますね」


 ミラーは顎に手を当て、考える素振りを見せる。


「ハル君。流石にこれ以上邪魔するのもあれだから、そろそろ行こう」


 警備団の男性にハルはそうですねと答え、ミラーに向き直る。


「ミラーさん、やっぱり大丈夫です。ありがとうございます。あと作業の邪魔をしてしまいすみませんでした」


「ああ。それは本当に迷惑だったが、僕も犯人が見つかることを願っているよ」


「……どうも」


 ハル達は再度謝りながらミラーの研究所を後にした。


「ふむ、見つからなかったか……」


 警備団の男性が呟きながら歩を進める。

 そんな警備団の男性の後ろをカイ達も無言でついていく。しかしハルとシュナだけは少し険しい顔をしていた。


 そんなとき、街を歩く人の話し声が聞こえてくる。


「2日連続で爆発が起こるなんて怖いわね」

「確か獣人が大通りでいきなり爆発したんでしょう? 本当に恐ろしいわ。その場にいなくて良かった」

「怖いと言えば路地裏で殺人もあったのよね?」

「そうそう、こうも色んな事件が一気に起きるなんて、発表会が近いけど何か関係があるのかしらね?」


 そんな会話をしながらハル達の横を通り過ぎる婦人達。


「最近はやはりこの事件の話題で持ちきりか。仕方ないと言えば仕方ないがな」


 シュナが婦人達の会話を聞き、そう呟く。

 そう、この街は山から下りてくるモンスターが人を襲ったり畑を荒らすなどの事故は多々あるのたが、人や獣人の間で起こる事件あまりない。


 それはモンスターという街の全員に共通の敵がいるからというのが一番の理由なのだろう。


 しかし今回はモンスターが全く関わっていない事件。その話題が持ちきりになっても仕方ないのだろう。


「とにかくまずは詰所に戻ろう」


 警備団の男性の言葉に全員が頷いた。









「犯人は十中八九あのミラーという男だね」


 詰所に着いてすぐ、ハルはそう口にした。


「なに? だが、証拠となるような魔道具は出てこなかったぞ?」


「何処かに隠したか、もしくは元々2つしか持っていなかったのか、それは分かりませんが恐らくあの人が犯人で間違いないかと」


「それは何故?」


「理由は色々ありますけど……まずはあの人は事件のことを知っていたってことですね」


「……? 今回の事件はこの街の者なら誰だって知っているだろう?」


「でもあの人はここ最近ずっと部屋に籠りっぱなしと言っていた」


 ろくに寝ていなく、ちゃんとしたご飯も食べていないと。

 目の下の隈を見る限り寝ていないというのは本当なのだろう。


「それは言葉の綾というか、全く外に出ていないということはないだろう。少し外に出るだけでさっきのように事件があったことは嫌でも耳に入ってくる」


「その通り。外に出るだけで事件があったってことは嫌でも耳に入ってくるんですよ。でも、さっき私達の横を通り過ぎた女性2人の会話を思い出してみてください」


 ハル以外の全員が先程の婦人達の会話を思い出す。


「あの2人は爆発事件と路地裏の殺人事件を完全に別物として話していた。私達は魔道具のことを知っているから一連の事件として見てるけど、事件を詳しく知らない人はこの2つの事件は関係のない別の事件と思っているんです」


「……む、確かに。こういう事件があったということを知っていても、あの2つの事件を結びつける者は少ないだろう。事件の詳しいところまでは表には出回っていないわけだし」


「でもあのミラーという男は爆発事件の話で獣人が魔道具で操られていたと聞いてすぐに路地裏の事件の話も出してきた。人の会話から事件があったということを知っただけでそこまで考えられるものじゃない。それも、寝る間も惜しんで魔道具の改良をしているこの大事な時期に」


「つまり、彼は初めから事件の細部を知っていたと?」


「可能性は高いでしょうね」


 ハルの推理にうーんと頭を悩ませる警備団の男性。

 

 一通り考えを巡らせた後しかし、と切り出す。


「事件に使われた魔道具が見つからない以上、彼を捕まえることはできないぞ? もしあの魔道具が2つしかなくて、もう無いのだとしたらもう彼を捕まえることは不可能だ」


「…………そこなんですよね」



「私が見張ろう」



「うん?」


 シュナの突然の発言に全員の視線がシュナに集まる。


「もしまだ魔道具を持っているのだとしたらまた被害者が出るかもしれない。私なら警備団と違って自由に時間も取れるし、鼻も利く。あと1週間見張っていればの発表会までは安心できるだろう」


 確かに鼻が利くシュナなら夜の見張りも問題なくできるだろう。


「でも、大丈夫?」


「私は冒険者だ。夜間の行動にも慣れている、問題ない」


 シュナの提案で発表会までの1週間、シュナがミラーを研究所の外から見張ることで話は落ち着いた。

 





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