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30億だけ持たされた私の異世界生活。  作者: 夢寺ゆう
第2章 魔法科学
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14.久しぶりなモンスターとの再会


「いやマジで何とかしろって! お前らの魔法使えばいいじゃねぇか!」


「はぁ!? この洞窟にはもっと危険なモンスターがいるのよ! こんなコウモリに2回しか使えない魔法を使えるわけないでしょ! 貴方こそ何とかしなさいよ! そのダガーは飾りなの!?」


「アホか! こんなスピードで飛び回ってる敵に当たるわけねぇだろ!」


「ほらー、おいでー、おいでー」


「「呼ぶな!!」」


 リリィが両手を広げてコウモリを呼んでいるのを見てそれまで言い合いをしていた2人が同時にツッコむ。まるでコントである。


「いてっ、いててっ、こいつら体当たりしてくるぞ!」


「コウモリって変な病気とか持ってないでしょうね!」


「この子達は『クリアバット』っていって、綺麗好きなモンスターだから、病気とかはないと、思うよ」


「綺麗好きなモンスターってなんだよ!」


 リリィの言う通りこのコウモリの群れは一切病気などは持っていないのだが、非常に攻撃的な性格をしており、自分達のテリトリーに侵入者が入るとそれがたとえ一角虎であろうといっせいに群れで攻撃する。


「あーもう! 仕方ない……リリィやるわよ!」


「わかった」


 ルルはリリィに合図を送り2人の魔力の波長を合わせる。


 そして自分達に攻撃してきているコウモリ達に向かって幻覚魔法を発動する。

 厳密には発動してようとした時、ルル達の耳によく知る声が届いた。



「はーいそこのお3人さん。飛び散る火の粉にご注意を……っと!」



 そんな声と共にカイ達がいる場所の天井に火のついた矢が突き刺さる。


「どわああ!? 熱い熱い! 火の粉が熱い!」


 天井に突き刺さった炎の矢は全方位に火の粉と呼ぶには大き過ぎる火の玉を撒き散らす。


「あ、クリアバットが……」


 飛び散る火の玉にクリアバットが蜘蛛の子を散らすが如く逃げ出す。


「ほれほれ、今のうちに出口に走って!」


 ハルの声に3人はハッとして出口に向かって走り、ハルもカイ達に続いて駆け出した。



「……ふぅ、疲れた。それで、あんなとこで何してたの?」


 無事洞窟を出て一息つくと、ハルが切り出す。


「……朝起きたらお前がいないから、探しに来たんだろ」


「あ、そうだったんだ。よくここがわかったね」


「ヒーラさんに聞いたのよ」


「なるほど」


 下山しながら何故カイ達がここに来たのかと問うハル。そこにカイが少し拗ねたように言う。


「ていうか、何で1人で行くんだよ。オレ達にも声を掛ければ良かっただろ」


「……ま、朝も早かったしね」


「助けてもらったばかりで言うのもなんだけど、カイの言っていることは正しいわよ。貴女なりの理由があって1人で行ったのかもしれないけど、書置きぐらいは残していくべきでしょ?」


「……心配、しました」


「…………」


 本当に心配したのだと三者三様に口を尖らせる。

 

「そりゃ悪かったね。思いついたのが昨日の夜で、皆が寝た後だったからさ」


「思いついた? 何を……」

「みんな! 何か来るわよ!」


 カイが訊き直そうとしたとき、ルルがいきなり叫んだ。


「あれは……スピードリザードだぞ!」


 視力の良いカイがすぐに敵を見つける。そして見つけたのはハルとカイを初めて苦しめたモンスターであるスピードリザードだった。


「へぇ、なんか久しぶりに見たね」


「言ってる場合か! 早くさっきの火のついた矢とかで追い払わないと……」


「あ、もう魔石に貯まってた魔力は全部使いきっちゃったから無理だわ」


「お前ちょくちょくそういうことあるよな!? ていうかどうすんだ! 群れで真っ直ぐこっちに向かってるぞ!」


「慌てすぎ。私達はもうあのときのただ追いかけられるだけの私達じゃない。心強い仲間も増えたし、私達自身強くなってる。そもそも、私達は一度この山を越えてるんだから大丈夫だよ」


 慌てるカイを落ち着かせようと優しく微笑むハル。


 そんなハルを見てカイも少し落ち着きを取り戻す。以前追いかけられた記憶が蘇ってテンパってしまったが、ハルの言う通りカイ達は以前よりも成長している。今ならスピードリザードの群れを倒すことだって不可能ではないはずだ。


 カイは腰のダガー2本を両手に持って構える。


 それとほぼ同時にスピードリザード達がものすごい勢いで現れ、勢いそのままカイ達の横を通り過ぎる。


「…………うん?」


 通り過ぎたスピードリザードの群れの方へ振り返ると、大きめな岩を群れで囲んで爪や牙で攻撃していた。


「……? もちろん幻覚魔法は既に発動済みよ?」


「今、正面から戦う流れじゃなかったか!?」


 カイがルルの言葉に鋭くツッコミを入れる。


 せっかく格好良くダガーを抜いたのに、肩すかしを食らった気分である。


「自分の力を過信しちゃだめだよ? あんなのに勝てるわけないじゃん」


「さっきと言ってることがまるでちげぇ……」


 まるで「あんなのと正面から戦うとかバカなの?」と言わんばかりの顔をするハルに流石のカイも疲れた表情を見せる。


「それよりも、スピードリザードが魔法に掛かっているうちにここから離れた方がいいわよ」


「いつまでも、魔法を掛けては、いられませんから」


「そだね。じゃあできるだけ音を立てないように山を下りよう」


「…………はぁ」


 とっとこー、と再び歩き始めたマイペース女子3人に、ただただ溜め息しかでないカイだった。





        ×  ×  ×





「号外号外! この街で開催される半年に一度のお祭りがついに2週間後に迫ってきてるよー!」


 街に戻ると、新聞配りの少女が声を荒げて新聞をばらまきながら歩いていた。


「あ、もう2週間後なんだ。色々あったしどうかなって思ったんだけど、やっぱり簡単には中止にならないんだね」


 地面に落ちた新聞を拾いながらハルが呟く。


「でもこの発表会の日って他の街や国の奴もこの街に来るんだろ? 本当に大丈夫なのか? あの事件、まだ何1つ解決してないぞ?」


「……どうだろうね。この日までに犯人を捕まえるよほどの自信があるのか……ただ、もし犯人を捕まえられずに野放しになった状態で発表会なんて祭りを催したら、無差別テロの恰好の餌食になると思うけどなぁ……」


 路地裏で殺されていた2人の男性に共通点を見つかっていないため、現在警備団は無差別テロとして捜査を進めている。


 そんな無差別テロ犯が人が大勢集まる発表会を放っておくとは思えない。


 ハルは難しい顔をしながら新聞に目を向ける。


 そこには魔道具研究発表会に参加する開発者の名前と似顔絵、そして魔道具の名前が似顔絵の下に記されている。


(魔法付与具……もう少し何かあったんじゃないかなヒーラさん……)

 

 開発者というのはあまり魔道具の名前に拘っていないのか、ヒーラ以外にも明らかに魔道具に適当な名前を付けている人もいる。


「参加者は22人、優勝者には賞金1万(ゴールド)か。ふっ、端金だね」


「出た。今日のお前性格悪いな発言」


「にゃんだと~!」


 自分でも今の発言は流石に無いかな~と思ったりしないでもなかったが、基本ツンデレで口が悪いカイに言われると少し腹が立つので、『こめかみグリグリの刑』を執行していると、ハルとカイのお腹から同時にぐぅ~という音が鳴った。


「…………早く帰って朝御飯食べよっか」


「……そうだな」


 後ろで笑いを堪えている双子の方を決して振り返らないように、足早に屋敷に戻るハルとカイだった。







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