第八十五話 一安心ですわ!
私はあまりの光景に、ただ唖然と立ち尽くす。
ノットさんも事態を理解していない様子で、警戒した態度をとりながらカースと距離をとっている。
それに比べて、にゃあ吉とナギアは何かを知っているみたいで、2人して警戒というよりも何処か覚えがある様な、驚いた顔を浮かべていた。
「それにしても、まさか心臓がない事がバレるまで追い詰められてしまうとは思っても見ませんでした。素直に褒めさせていただきます。貴方は本当にお強い」
ノットさんは不服そうにして、カースを見つめる。
そんなノットさんにカースは態度を変えずに話を続ける。
「出来ればこの事をバラさないまま、いつの日かキャットさんとの対戦を実現させたいと思っていたのですが‥本当に、人生何があるかわかりませんね」
「人生などと言う言葉を口にするな。見たところ、お前はもう人間ではないのだろ?」
にゃあ吉はカースにそう言い放った。
口ぶりを見るに、やはりにゃあ吉は何か知っているみたいだ。
そしてカースはにゃあ吉を見つめながら今日初めて見る表情を見せた。
「覚えていましたかキャットさん」
それは何処か嬉しさを感じている様な、幸せそうな笑顔だった。
「僕様達が忘れる筈ないだろ」
それに対してナギアは腹を立てた様にして、カースに言い返す。
「‥そうですか。ナギアさんまで‥出来ればこのまま思い出話しでも語りたいのですが、どうやら今の私の仲間達が早く迎えに来て欲しそうにしているので、急いでお迎えに行かなければなりません」
そう言いながらカースは窓辺に立つ。
「ですのでお2人とも、またの機会に、」
「逃れると思ってるのかい?」
カースの話しを遮って、ノットさんはカースに飛び掛かり、攻撃を仕掛けた。
「考えもしませんでした。そんなこと」
そう言いながらカースは、霧でノットさんの肩を突き刺した。
ノットさんがそれに怯んでる隙をついて、カースは全身を霧に変え、突如吹いた突風に攫われて消えていった。
ノットさんは肩を抑えながら、風に舞う霧を睨みつけ、後を追いかけようと足を前に出す。
けれど肩を掴んで、それをにゃあ吉が止めに入った。
「よせ。このまま戦っても今のお前に勝機はない」
「‥何でそう言いきれるんだいにゃあ吉君?何か知っているのかな?」
ノットさんはそう言って、にゃあ吉を見つめる。
にゃあ吉は少し悩んだ顔を見せた後、口を開いた。
「‥知っている。‥いずれリアにも話すつもりだった話だ。明日にでも話してやるから今は落ち着け」
ノットさんは納得がいっていない様子だが、にゃあ吉の意見を飲みこんでくれ、カースを追いかけることなくここに止まった。
その場は静寂に包まれる。
にゃあ吉とナギアは考え込んだ顔を浮かべ、ノットさんは何処か不満そうな顔を浮かべている。
皆今回の結果をよく思っていない様子だ。
「みんな、そんな顔せんとこうやですわ!」
けれど私はそんなみんなを見て、口を開いた。
「みんな納得の出来ないことや、理解できないこと、色んな問題があるかも知らへんけど‥ひとまず!今回の戦いは私たちの勝利なんやし、今は素直にそれを喜ぼうや、ですわ!」
私も気になる事だらけで、スッキリしていない部分が多いが、それでもみんなのおかげで誰1人としてかけず、こうして勝利を収めることができたのだ。
今は純粋に、それをみんなで称えたい。
「‥そうだな。元はと言えばナギアを救うのが今回の目的だったのだから、それを成し得た今、暗い顔を浮かべるのはお門違いか」
「本当だな。僕様は生きてること事態奇跡なんだから、悩むのは後にするよ。今は生に対して、喜びを感じる時だな」
「‥まぁそうだね。ごめんリア君。冷静さを欠いていたよ‥。今は素直に喜ぶことにする」
そう言って皆は完全に吹っ切れたわけじゃないまでも、笑顔を浮かべてくれた。
私はそれを見て、ホッと一安心した。




