第七十三話 光ですわ!
「そのまま走ってくれリア!」
走っている最中、にゃあ吉の声が聞こえた。
にゃあ吉は今影2人を相手しているので、それを仕留めるまでの間残り2人の影を引き付けておいてという事だろう。
ものすごく怖いし、体力よりも精神的にもの凄く疲れるが、私でも役に立てる機会がやっと巡った来た喜びの方が大きく、私は大声で合意した事を伝える。
愛も変わらず後ろから、敵の分身である影2体が追いかけてくる。
けれど今の私に追いつける程の速さはなく、ずっといっていの間隔を空けている。
ジェット機ほどの速さで走る貴族令嬢と、それを真面目な顔をして追いかける敵幹部、何ともシュールな絵が続いていた。
(なんか私頑張ってるけど、めっちゃアホっぽい!)
我儘言ってる場合じゃないが、せっかく役に立てるなら、もっとカッコいいのが良かった。
すると目の前ににゃあ吉が現れる。
「引きつけご苦労だったリア」
そう言ってにゃあ吉は手を伸ばして、私をキャッチしようとしている。
このままではお腹に手がぶつかってしまう。
止まりはするかもしれないが、止まりはするかもしれないが。
「グエッ!」
カエルの様な声が出た。
にゃあ吉はそのまま私の腹に手を回して、持ち上げるかの様にして担ぐ。
いつものお姫様抱っことはえらい違いだ。
「悪いなリア。今両手を塞ぐわけにはいかないのでな」
「それはわかるけど、もっといい止め方あるやろ」
にゃあ吉はニヤついた顔を浮かべた後、追って来ている2人に手を翳して、魔法を仕掛けた。
2人の下に魔法陣が生成され、そこから黒い光が噴出し、その光に飲み込まれた後、次に姿を見せた体は灰のようになっており、風にさらわれ散っていった。
それを確認した後にゃあ吉は私をゆっくりと下す。
「まぁ機嫌を損ねないでくれ、この戦いが終わったら前みたいにお姫様の様に抱き抱えてやる」
「うっさい!別にそんなんしていらんわ!」
私はそう言って顔を背ける。
すると向こうからゆっくりと、組織の女性がこちらに向かって来ていた。
「ふざけた戦い方だが、残り少ない魔力量で、私の影を仕留めたのは流石だと言っていい」
にゃあ吉は満足げな顔を浮かべる。
そんなにゃあ吉の姿を見て、私は何処か違和感を覚えた。
「けれどもう限界みたいだ」
にゃあ吉の体は徐々に縮んでいく。
そしてやがては、少年の姿になった。
これは人の姿が保てていられなくなるほど、魔力が減ってしまっているということになる。
「さて、どうしたものかな」
こんな状況になってしまったが、にゃあ吉は何処か余裕の表情を浮かべている。
「何の強がりだ?もう何も出来ない事はわかりきってる。そんな余裕そうな態度を取られても、こちらは惑わされない」
「別にそんなこと思ってはいない。現に私の方が有利な立場にいるから、勝ちを確信しているから、この様な態度が取れているんだ」
その発言に腹を立てたのか、相手はため息を吐いて身構えた。
「‥もういい。終わらせる」
そう言って、相手はナイフを取り出しこちらに勢いよく向かってくる。
にゃあ吉はそれなのに避けるどころか、動くそぶりを見せない。
「にゃあ吉!早く避けな!」
私は咄嗟にそう叫び、にゃあ吉を退かそうとするが全く動かない。
「大丈夫だリア見ていろ。ただし、私から離れるな」
距離が離れていたのにも関わらず、相手は数秒足らずで手の届きそうなところまで距離を詰めて来た。
するといよいよにゃあ吉は、動きを見せる。
ゆっくりと手を掲げ、指を鳴らした。
それは先ほども見た動作で、けれど今見れるはずのない動作。
突如として、太陽は消え夜に包まれる。
相手は違和感に気がついて立ち止まる。
「‥どういうこと」
相手は動揺を見せる。
動揺するのにも無理はない。
これは先ほども発動していた特級魔法だ。
何故これが今発動しているのか、私も不思議に思いながらそれを見とどける。
やがて夜空には無数の光が出現した。
にゃあ吉は後ろにいた私を守る様にして、覆い被さり抱きしめる。
少年に抱きしめられるとは不思議な感じだ。
光は次第に大きくなっていき、相手に降り注ぐ。
相手は回避を試みたのか遠くに向かおうとしたが、広い空から逃げる事は出来ず、体を撃ち抜かれる。
やがて光の雨は止み、空も明るさを取り戻し太陽が見え始めた。




