第七十二話 油断ですわ!
にゃあ吉は斬りかかってきた相手に殴り掛かるが、相手は一度姿を消して、攻撃を避けた。
そして気がつけば数十歩先まで離れた場所にいた。
「油断しすぎたみたいだな‥」
にゃあ吉は傷を負った腕を押さえながら、そう言った。
私は心配のあまり、にゃあ吉の元に向かおうとするが、今近づくのは邪魔になるだけだと気づき、悔しさを押し殺して立ち止まる。
「そう、本来の貴方ならこんな影を使っただけの小細工に気づかない筈がない。けれどその失敗は油断が原因じゃない」
そう言って、彼女は影の分身を出現させた。
つまりはこの影を使って、倒れている数を10人いる様に錯覚させたのだろう。
そして私たちがそれにまんまと引っかかっている隙に、先程使っていた姿を消す魔法を使い、近づいたということか。
(よし理解出来た。何とか置いてけぼりにならんで済んだ)
にゃあ吉は警戒しながら、相手に真剣な顔を向ける。
「貴方は既に魔力の限界が近い。その焦りから貴方は本来の判断力が鈍ってしまった」
「私の魔力限界が近い?勘違いも甚だしいな。先程特級魔法を使ったのだぞ?余裕がない状態でそんな大魔法使うはずがないだろ」
にゃあ吉は相手の発言に笑って見せた。
けれど相手は気にする様子を見せずに話を続ける。
「そう。本来なら、魔力切れが迫った中で、あの様な魔法を使うのは愚かな行動だ。けれど貴方は後ろにいる彼女を、守りながら戦うという制限がついていた」
淡々と話す相手に私は恐怖を覚えた。
強い上に頭もキレるとか本当にやめてほしい。
「彼女を保護する魔法は持って数分と言ったところだろう。後にも魔法を重ねた様に見えたが、それは既にかけてある魔法の守備力をあげただけだ」
「もういいその通りだ。つまりはリアを守っている魔法が溶けた後、魔力の残量が少ない私はリアを守りながら魔法を使うことが困難になるかもしれない。だから特級魔法で早急に終わらそうとしたんだお見事だ」
にゃあ吉はバレちゃしょうがないと言わんばかりに、全てを話した。
実に不味い状況だ。
にゃあ吉の魔力が少ない今、先程の魔法を避け、にゃあ吉に一撃を喰らわせた相手とやり合うのは部が悪い。
そして、先程感じた感覚。
私を守っている魔法は、既に解けてしまっているみたいだ。
おそらく相手は、まだそのことに気がついていない。
(そのことだけはなんとかバレない様にしないと)
そう思い、私は警戒して、改めて相手を見つめる。
「ん?」
するとあることに気がついた。
「あの、何処かであったことあるですわ?」
「なんだリア覚えていないのか。こいつは学園の校外学習の時に男を襲っていた女だ。リアが初めて関わった組織の人間だな」
「えー!そう言えば!ですわ!」
私はようやく思い出した。
あの時の彼女の、影に溶け込む様な姿を。
そしてその時の発言を思い出した。
「思いだしたで!組織の人!」
私はそう言って、相手に指を突き出す。
「あの時、「私1人では手に余る」って言って逃げてたよなですわ!つまり!貴方がにゃあ吉には勝てない事は証明済みや!ですわ!」
私の発言を聞いて、相手は吹き出した。
くすくすと笑った後、先程の真面目な顔に戻る。
「残念だけど、今とあの時とは状況が違う。あの時の彼は完全な状態だったかもしれないけど、今は残り少ない魔力で悪あがきするだけ、こちら側の勝利は目に見えている」
そうか。言われてみればそうかと納得した。
「リア。もう少し考えて発言してくれ‥。まぁでも、勝つのは私だがな」
にゃあ吉は小馬鹿にする様にして、そう発言した。
「貴方も随分な馬鹿だ」
「今にわかる」
そう言ってにゃあ吉は相手に向かって飛び出した。
相手は自分とそっくりな分身を陰で生成する、その数は本体を合わせて5人。
その内、2人が飛び出したにゃあ吉を向かい撃つべく、突進する。
そして1人はそこに残り、もう2人は私のところへ向かって来た。
そう私のところへ来たのだ。
「魔法解けてるのバレてるやん!」
私はすぐに逃げるべく走り出す。
けれど相手はものすごい勢いでこちらに近づいてくる。
逃げるのに必死で、にゃあ吉の様子もあまり伺えない。
けれどふと視界に映ったにゃあ吉が、相手と戦いながら、私に向かって何やら魔法をかけてきた。
何をかけてくれたのかと身体中を確認するが、何も変化がない。
「走れリア!」
にゃあ吉は私にそう叫んだ。
「もー走ってるわ!ですわ!」
既に走っている私に何を言ってるんだ。
そう思いながら、改めて力を込めて走り出す。
その瞬間違和感に気づいた。
余りにも早い、車など目じゃないほどの速さで今、私は走っている。
「何これ!めっちゃ怖いですわ!」
方向転換だけを繰り返し、ひたすら走り続ける。
「どうしよう!止まらへんやん!ですわ!」




