第四十四話 王都ですわ!
学園で起きた事件の後、3学年全てが『黒薔薇の最後』に攻められていた事がわかった。
そしてそれぞれの学年に、組織に勧誘された人物がいたこと、その数が20人を超えていたことも発覚した。
その殆どの人たちが事情聴取などで国家騎士に連れて行かれたそうなのだが、後から聞いた話、サイカだけが行方をくらませているそうだ。
学園は国に協力して生徒であるサイカの調査、そして組織の確保に力を注ぐことを表明した。
学園長が、集会の時に話をしていたが、いつも温厚なあのお爺さんが、あそこまで感情的になっているところを見るのは初めてのことだった。
「歴史ある我が校を汚した事、そして何より大切な生徒たちに危害を加えたこと。許しはしない落とし前はつける」と話していた。
因みににゃあ吉はあの日、生徒会の皆さんとは話せていない。
事件の後処理に追われた生徒会は、にゃあ吉と話す時間が取れなかったらしく、また後日話の機会を設けるということになった。
暗い話ばかりになってしまったが、そればかりではない。学園の損傷箇所は先生たちの協力もあり、瞬く間に修繕されていき、数週間で元の学園の姿を取り戻た。
1ヶ月もしないうちに学園へはいつも通り登校できるようになり、警備も以前の数倍にまで拡大されたおかげで、あれからまだ1ヶ月しかたっていないのに、不安はあまり感じず、安心して過ごせるようになった。
それからは至って平凡な毎日を過ごした。
ララやにゃあ吉と話をしたり、遊びに出かけたりなどをし、図書館によって勉強をして、ノットさんとお話したり、私たちは元の日々を取り戻していった
そう言った日々が続き、あっという間に2ヶ月と言う月日が流れた。
「遂に始まったで‥夏休み‥」
そう今は8月、日本由来のゲームということもあり、この世界にもしっかり8月の夏休みというものが存在した。
「やから向かうで!王都アーツ!」
私は1ヶ月ほどある夏休みを利用して、遠く離れた地、王都アーツへ行くことにした。
今は馬車に乗って、そこを目指している最中だ。
彼これ数時間以上が経過している。
そして王都アーツについてだが、そこは国王「ナギア」様が納める、私の住む国『ネフスト王国』の首都だ。
そこに向かう理由は、ある目的が存在するからだ。
「リアの記憶が正しければここにいるんだな。お前と同様に前世の記憶を引き継いでいる可能性のある人物が」
「そうやねん。私の前世での友達が推してたキャラクター『ラリヤ・ネスト』さんがいるはず‥」
そう今回王都に向かう目的は、その人物を探すためだ。
ララは私の前世に関係を持たなかったが、もしかしたら他の人は前世の記憶を私のように受け継いでいるかもしれない。
受け継いでいても、思い出していない限りははっきりとした事実確認はできないが、前世の性格は影響する可能性がある。
それを判断材料にして、前世の私の友達か否かを確かめたい。まずは見つけないと話にならないわけだが。
もしも今回も当てが外れてしまえば、友達がこちらに転生していても、推しに転生していると言う線は無くなるだろう。
また新たな可能性を探す他無くなる。
一応学園の時と同様、ゲームで多く使われている場所だから向かうと言う理由もある。
ゲームでは王都も、学園の次に多く訪れることになる場所だからもし記憶を取り戻した前世の友達がいるのなら、訪れている可能性はあると思う。
(まぁ学園ですら確認した限り、おらんかったから難しいやろうけど)
「なぁリア。何故そいつがそこにいるとわかるんだ?そのゲームとやらにそう書かれてあったのか?」
「まぁそんなところやな。そのキャラクターの出身地がそこやねん」
本来はネストさんも、学園へ来るはずのキャラクターだったのだ。
流れとしては、ララに恋したキャラクターたちが、あらゆる所から学園に転校してくる。
そしてそのうちの一人に、ついてくるかのようにして転校してくるのがネストさんだ。
けれど、本来ララに恋するキャラクター、つまりは攻略対象はまだララと出会えていない。
それは本来のシナリオでは、ララは友達ができず学園外ではよく色んな場所にお出かけをしており、その先々でひょんなことから攻略キャラクターたちと関係を結ぶのだが、この世界でのララは私と友達になった。
私はとにかくララと遊びたいがために、遊びに誘い回していた。
恐らくそれが原因で、ララは攻略対象と出会えていないのだ。
これを理解したのは、最近のことだが本来の出会いを私のせいでなかったことにしてしまったのは、本当に申し訳ないと思う。
話がそれたが、つまりは攻略対象がそもそも学園に転校しない時点で、サイカの転校はありえないものとなり、学園に姿を表すことは無くなったと言うわけだ。
それで私は、友達がよくサイカの話をしていたのもあって出身地を思い出し、王都へ向かうことにしたと言うわけである。
「それでその人物はどう言ったやつなんだ?性格の良し悪しで言えばどうだ?」
「うーん‥。正直良くはないと思う。ドジで天然で何かあればすぐ男の子たちに迷惑をかける子やった」
「確かに面倒ではあるが、そう言ったやつはむしろ愛されるキャラクターとして扱われたりする気もするが」
「それが狙いの人やねん。ドジも天然も計算。男の子たちに迷惑をかけるのは学年の男の子達を全員自分の虜にして、自分の下僕にすること」
そして、攻略対象のキャラクターをララから引き剥がそうとする。
いわばリアと同じ、ララのライバルキャラクターだ。
「なるほど‥。それじゃあもしもそいつが前世のお前の友達と無関係なら、リアは単に性格の悪い女と関係を持つことになるのか」
「なんかいやな言い方やな」
にゃあ吉はくすくすと笑っている。
「先程から何を話されているのですか」
にゃあ吉は瞬時に顔を逸らす。
そう今回王都に向かうにあたって、アリアにも同行してもらっているのだ。
私は護衛役ににゃあ吉を推薦した。勿論人の姿でだ。
2度も私を助けてくれているという実績から、両親からの信頼は厚いが、男の人と2人で旅行は許さないとのことで、アリアも同行することになった。
アリアの事は大好きだが、アリアの前で前世のことは話しにくい。
アリアにも前世のことを話してもいいとは考えたが、混乱を避けるため、結局話せていない。
それはララも同様だ。
「それでリア様?先程は何のお話を‥」
「あっえーとやな‥あっ!見えてきたで!」
窓を開けて、指をさす。
指した場所は、王都に建てられた最も大きく、綺麗かつ偉大な場所、ナギア城だ。
その後すぐに馬車は止まる。
今回は果たして前世の友達の手掛かりを得る事ができるのか、私は期待を胸に、王都へと足を踏み入れた。
一方王国内では、このような会話が行われていたそうだ。
「うーん」
1人の男が、双眼鏡を使い窓から何かを覗き込んでいる。
「どうした下僕くん」
その男に話しかける、玉座に座る男。
「その呼び方やめて下さいよナギア王様」
「別にいいだろ。僕様は人の名前を覚えるのが苦手なんだ」
悲しそうにする男に、玉座の男は堂々と言葉を返す。
「まぁそれは今置いといてですね。今日公爵令嬢がこの国に来るとは聞いていたんですけど、あの護衛と思われる人物ものすごく強そうだなって思いまして」
そう言って男は窓の外を指さす。
「ん?ふーんなるほどね。あいつは強いよ」
玉座の男は理解したかのようにして、そう呟く。
「ですよね!ってよくこの距離で双眼鏡も使わずに見えましたね」
恐らく数キロは、対象から距離が離れており、本来肉眼で見ることなど到底不可能な距離だが、玉座の男は平然とそれが見えているようだった。
「僕様は朝目が効くんだ。‥そうかそれにしてもあいつが誰かと共にいるだなんて興味深いな」
徐にニヤつき顔を浮かべる。
「なんの話ですか?」
「下僕くん。彼女らを僕様のところまで案内しろ。抵抗するなら拘束しても構わない」
「えっえー!相手は公爵令嬢ですよ。いくらナギア王でもあまりにも横暴がすぎます!」
無茶な命令を出されて、男は大きく慌てる。
「まぁいいから言う通りにした前下僕くん。その令嬢‥興味がある」
再び玉座の男は、窓の外を見つめるのだった。




